第59話 天空騎士団と空舞う翼
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
「「「「「に、人間が羽もないのに空から降りて来たーっっっ!?」」」」」
天空人の村へやってきた僕達だったけど、何故かとうの天空人達から驚かれてしまった。
「ええっと、別に空を飛ぶくらい普通でしょう? あなた方も空を飛んで地上に降りるんですし」
「いや、それはそうだがアンタは羽もないのに飛んでたじゃないか」
近くに居た天空人のおじさんが腰の引けた様子で自分の背中を指差しながら指摘する。
「ええ、飛行魔法を使えば空くらい飛べますよ」
「ひ、飛行魔法!? 失われた太古の魔法の事か!?」
飛行魔法と聞いて場が騒然となる。
というか失われた太古の魔法?
おかしいな、天空人は背中の羽で空を飛ぶはずなのに、この人達の背中には羽が生えていないし、飛行魔法を失われた魔法なんて言って驚いている。
自力で空を飛べるなら、飛行魔法なんかに驚く必要もないだろうに。
「もしかして貴方達は飛べないんですか?」
もしかしてだけど、この人達と天空人は別の種族なのかな?
「と、飛べる訳ないよ。俺達は騎士様達とは違うんだ」
やっぱり、どうやら天空人というのは、騎士様という羽の生えた人達の事を言うみたいだ。
でもだとするとこの人達は一体?
「あのー、貴方達は何者なんですか? 天空人とは違うんですか?」
「何者って、俺達は天空人だよ。それよりアンタ等こそ何者なんだ!? この空島でアンタ等みたいな人間は見たことがないぞ!?」
あれ? この人達も天空人? でも羽が生えていないよね?
一体全体どういう事なんだろう?
「飛行魔法を使える人間なんて初めてみたぞ。もしかしてアンタ等は別の空島から来た人間なのか?」
どうやら僕達を別の空島から来た天空人だと思っているみたいだ。
さて、どう答えたものかな。
「いえ、僕達は地上からやって来た冒険者です。天空大陸を探してやってきたんですよ」
別に秘密にする必要も無いので、僕は当初の目的を村の人達に告げる事にした。
「天空……大陸?」
うーん、反応が鈍いしこれは無駄足だったかな?
天空大陸の情報を得られそうもないし、ここはもう一つの疑問である天空人について聞いてみるか。
なんで貴方達には羽が生えていないのか、この村は天空人の村なのに何故こんなに慎ましいのか、そもそも天空人って何とかの疑問をね。
「ところでこの村なんですが……」
と、僕が村の事を聞こうとしたその時、村の人達が空を見上げて声を上げたんだ。
「来たぞ騎士様だ!」
僕達も同じように上空を見ると、先日の地上の町で見た羽を生やした騎士達が空から降りてきた。
「騎士様、あの者達です」
村の住人らしいお爺さんが僕達を指差して騎士に話しかけている。
これってもしかして通報されたのかな?
「そこの二人! 貴様等が我等天空人の国に不法入国した不埒者か! 何の目的でやって来た!」
騎士達の指揮官らしき人が僕達を尋問する。
どうも密入国者扱いされてるっぽいから、ここは素直に答えるとしよう。
「こんにちは、天空人の方。僕の名前はレクス、そしてこちらは旅の仲間のリリエラさんです。僕達は天空大陸を探してこの土地にやってきました。天空大陸はこの辺りにある筈なのですが、ご存知在りませんか?」
けれど騎士の指揮官は僕達の言葉に首をかしげながら言った。
「天空大陸だと? そんなものとうの昔に砕けて滅びたわ!」
「ええ!?」
そんな馬鹿な!? あのバカデカイ天空大陸がそんな簡単に砕ける訳がない。
というか、何をしたらあの大きな大陸が砕けるんだ!?
「この空に浮かぶ天空島がかつての天空大陸の名残であるという伝説は、この空に住む者なら誰でも知っている! つまらん言い訳は通用せんぞ!」
「ええ!? 空島が天空大陸の名残!? どういう事ですか!?」
一体どういう事なんだ!?
けれど騎士達はそれに答えず槍を構えて僕達を囲む。
騎士達が構えた槍の先端には光が宿っており、おそらく光属性の攻撃魔法を放つマジックアイテムなのだろうと推測される。
「本当の事を言わねば聖なる槍より放たれる裁きの光で貴様等は消し炭になるぞ。お前達は他の空島より来たスパイだろう?」
んー? なんでそうなる訳?
「いえ、僕達は地上から来たんですけど」
「嘘はつくなと言った筈だ。羽をもたない下等な地上の人間が空に上がる訳がなかろう。ここに来れるのは我等と同じ力を持った空島の民だけだ!」
ふむ、どうやらこの人達は僕達が飛行魔法を使える事を知らないから信じられないんだな。
だったら実際に空を飛んで証明して見せよう。
「本当に地上から来たんです。証拠もありますよ」
「証拠だと?」
「ええ、ほらこうやって、飛行魔法で空を飛んでやってきたんです」
僕は飛行魔法を発動させて宙に浮かび上がる。
「馬鹿な!? 羽も使わずに空を飛んだだと!?」
「ねっ? 飛んでいるでしょう?」
「さては貴様等、我等のものとは違う羽の力で飛んでいるのだな! 一体何を使っている!」
んんー? 何で飛行魔法って信じて貰えないかな。
っていうか使う? 自前の羽で飛んでいるんじゃないの?
「だから飛行魔法ですって」
「飛行魔法を使える者などとうの昔に滅びたわ! そうだ、そうでなくてはならんのだ!」
そうでなくてはならん? つまり飛行魔法を使える人間が居るのは都合が悪いって事か?
なんだか良く分からないけど、どうにも複雑な事情がありそうだなぁ。
「この者達を捕らえろ! 抵抗するようなら殺しても構わん!」
うわー、やる気満々だね。
「どうするの? 戦う? それともおとなしく捕まる?」
リリエラさんが僕に戦うかどうか方針を聞いてくる。
「うーん、おとなしく捕まってもこちらの話を信じてくれるとは思えませんからねぇ。ここは降りかかる火の粉を振り払うとしましょうか」
逃げても追ってくるだろうしね。
「そうね。明らかに話の通じない連中だものね」
僕達は背中合わせに武器を構えると、目の前の騎士達に向けて突っ込んでいく。
「抵抗するか! 構わん殺せ!」
「頭を下げて!」
「ええ!」
僕の言葉に背後のリリエラさんが応じる。
突然僕等が頭を下げてしゃがみこんだ所為、周囲を囲んで槍を構えていた騎士達は、正面に居た仲間にお互い攻撃を当ててしまう。
仲間の攻撃を受け、その豪奢な鎧が大きく傷つく。
「隊長、味方に当たってしまいます!」
「馬鹿者! 敵に向けて攻撃せんか!」
まぁ全方向から囲めば当然こうなるよね。
っていうか、本当に味方に当てたから驚いたよ。
うすうすそんな気はしていたけれど、この騎士達は実戦経験が少なすぎないかな?
リリエラさんも彼等の包囲を見た事で、僕の意図を即座に理解して騎士達の同士討ちを誘ってくれたくらいだ。
「はぁっ!!」
僕は身体強化魔法で強化した速度で騎士達の懐に飛び込むと、相手の鎧と武器を破壊しついでに剣の柄で殺さない程度の打撃を与えて彼等を無力化する。
「せい!」
リリエラさんは僕と違って容赦なく騎士達に攻撃していく。
相手の槍を自分の槍で払いながら、浅い攻撃を小刻みに繰り返して敵の装備の隙間に攻撃を当てていく。
「ぐわぁぁぁ!」
「馬鹿な! 我等の武具が効かないだと!?」
騎士達は驚いているみたいだけど、これは武器の性能の問題じゃなくて実戦経験の問題だと思うよ。
正直錬度が足りなさ過ぎるって。
こうして僕達は騎士達を次々に切り伏せていく。
「そ、そんな……我等王に選ばれし天空騎士団が……」
「おのれ光の槍さえ当たれば」
騎士の一人が何度も僕達に向かって槍の光を放ってくる。
「光の槍?」
当たればって言われてもなぁ、それどう見てもそんなたいした威力ないし。
僕は試しに騎士の放った槍の光を自分の魔法で迎撃する。
「フォトンランサー!」
騎士の放った槍の光は、僕の魔法によって簡単に破壊され、それどころか碌に相殺される事もなく相手の持っていた槍まで一気に破壊してしまった。
「予想以上に脆かったなぁ」
「ば、馬鹿な!? 光の槍が破壊されただと!?」
「あ、ありえん! これは王より賜った武具だぞ!?」
「うーん、そのマジックアイテムあんまり強くないですね。せいぜい下の上って程度の性能ですよ?」
「な、何だと!?」
「我等が王より賜った武器の力が下の上だと!?」
騎士達が愕然とした顔で自分達の武器を見る。
「キュウ!」
と、そこでモフモフがさっき僕が倒した騎士の一人に飛び乗ると、その羽に噛み付いた。
こらこら、その人達は食べちゃダメだよ。
「ペッ!」
しかし何故かモフモフは騎士の羽を齧るのをやめて唾を吐き捨てた。
「あれ?」
天空人の羽は不味かったのかな?
ともあれ、僕達は拍子抜けするくらいあっさりと騎士達を返り討ちにしてしまった。
ちょっと予想外に弱かったなぁ。
「そ、そんな馬鹿な……」
「これが天空人? なんていうか期待はずれね」
リリエラさんも天空人の騎士が予想以上に弱くて困惑している。
「き、騎士様がやられたぞーっ!」
そして戦いを見守っていた村人達が、騎士がやられた事で慌てて逃げ出していった。
「あらら、皆逃げちゃった」
まぁ別に僕達は村の人達に恨みがある訳でもないから、わざわざ追う必要も無いけどね。
「リリエラさん、大丈夫でしたか?」
「ええ、こっちは終わったわ」
「さすが、お見事です」
僕はリリエラさんの戦いぶりを褒めたんだけど、リリエラさんは微妙そうな顔になる。
「褒めてくれるのは嬉しいけれど、貴方の戦いぶりを見ていたら、とても手放しで喜ぶ気にはなれないわね」
おやおや、相変わらずストイックな考え方だなぁ。
もうちょっと気楽に喜べば良いのに。
「さて、それじゃあ彼等に話を聞くとしましょうか」
あくまで誤解が原因なので、僕は騎士達を殺していなかった。
リリエラさんも命は奪わないように気をつけてくれていたみたいだ。
「ええと、さっきの指揮官はっと」
僕はさっきこちらを一方的にスパイ認定した騎士を探す。
「あれ? 居ない?」
そう、さっきまで命令をしていた指揮官の姿がなかったんだ。
これは逃げたか?
「いや……っ!」
僕は体を半身そらして横方向に回避する。
そしてその直後、光の線が僕の居た場所を通り抜けた。
「やっぱり、不意打ちか!」
僕は反射的に剣に魔力を乗せて斬撃を放った。
魔力によって生まれた斬撃が隠れていた騎士に命中し吹き飛ばす。
「ふっ、峰打ちさ」
魔力で生み出した飛ぶ斬撃は、使い手の調整で威力を調整できる。
反射的に反撃してしまってもうっかり大怪我させる事のない便利な攻撃だ。
……そのはずだった。
「ぐわぁぁぁぁ!?」
だというのに、何故か飛ぶ斬撃は騎士の鎧を簡単に破壊し、更には騎士の背中の羽まで真っ二つに切断してしまった。
「うわわっ!? ごめんなさい!!」
しまったやりすぎた、早く回復魔法をかけないと!
僕の回復魔法なら切断した肉体を回復させるくらい訳ない。
「って、あれ?」
「どうしたのレクスさん?」
慌てた僕は急いで倒れた敵指揮官の羽を治療しようとしたんだけど、その羽からは赤い血がまったく流れていなかった。
それどころか、羽の中身は肉でも骨でもなかった。
「この羽、これマジックアイテムだ」
「ええっ!?」
そう、羽の中身は金属と魔術触媒が詰まっており、生き物の様な翼の部分は作り物の偽物だったんだ。
「一体どういう事なんだ?」
どうやら天空人の正体は、僕達が考えていたような神秘的な存在ではないみたいだ。
(:3 」∠)天空人「らめぇぇぇぇ! 武器破壊と部位破壊しないでぇぇぇ!」
Σ(:3 」∠)哀願動物「うわ、コイツ等クッソ不味ぃ!」
面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、感想や評価、またはブクマなどをしてくださるととても喜びます。




