第41話 再会とお披露目
(ノ'ω')ノ皆ー、久々に彼の出番だよー!
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私達はレクスの故郷に滞在していた。
最初はミナがレクスの教科書を読み終えるまで滞在するつもりだったんだけど、たまたま魔法以外に剣技や回復魔法の教科書がある事が分かったのが原因だった。
レクスの村の人達の常識外れの実力を経験した私達は、自分達がレクスにちょっと鍛えられた程度で調子に乗っていたのだと思い知った。
だから、せっかく他の教科書も見つけたことだし、本格的に修行しようと村に長期滞在する事を選んだ。
とはいえ、いつまでもレクスの両親の厚意に甘える訳にはいかない。
だから私達は村で働く事にした。
ジャイロは狩りの手伝いを、ミナはアストレアさんの畑作業、ノルブは村のお爺さん達を相手に各種雑用と回復魔法を使った腰痛治療、そして私はジュエルアップルの手入れの手伝い。
どれも一見雑用に見えるけれど、それらの手伝いは文字通り命懸けだった。
「うう、何でこの畑こんなに広いのよ……普通の魔法じゃさっぱり燃えないおかしな雑草ばかりだし、水撒きも魔法でも使わないととてもやってらんないくらい広いし……あと、アルラウネの肥料作るの大変すぎぃ……」
今日もミナが魔力切れで倒れている。
「今日の石材運び終わりました……し、身体強化魔法を使わないとまともに出来ない位の雑用しかないんですけど……ね、寝る前に回復……魔法を……」
村中の雑用を手伝ってきたノルブが力尽きた。
「きょ、今日も一匹も狩れなかった。アイツ等速すぎだろーが……」
一緒に狩りに行った子供達にことごとく獲物を狩り尽され、ただ付いて行くだけで精いっぱいのジャイロのプライドはもうボロボロだった。
そして私はと言うと……
「ジュエルアップルに群がって来る害虫がヤバイ。デカくて強くて硬くて速くて数も多かった」
うん、ジュエルアップルに群がる害虫駆除の仕事は想像を超えていた。
明らかに魔物にしか見えない虫がわんさかやって来る。
木の周囲には結界魔法がかけてあるらしいんだけど、それでも匂いに釣られて虫がひっきりなしにやって来るから、駆除しないといけなかった。
「ほらほら、虫はどんどんくるよー」
リンゴ農家のオバサンがナタでスパスパと巨大な虫の魔物を駆除する光景は、この世のものとは思えなかった。
「「「「キツい」」」」
ここは、本当に人間の住む土地なのかな?
◆
などとへこたれていた僕達でしたが、レクスさんの作った教科書で学びながら日々を過ごしていたら、何とか少しは手伝いができる様になっていました。
「ひたすら魔法を使っていたおかげで、最近は魔力効率や魔法の精度も上がって魔力切れを起こさなくなって来たわ」
「やったぜ! とうとう自分で獲物を狩る事ができたぜぇ! もうアイツ等に獲物を独り占めなんてさせねぇ! これで俺も親父さん任せじゃなく自分の狩った獲物を食卓に置けるぜ!」
「最近は害虫達を駆除するコツがつかめる様になってきた。固い殻のどこを切れば良いのか、速い相手がどう動くのかの先読みの仕方とか」
皆さんすっかり逞しくなって、村に来る前の僕達とは見違える程に成長していました。
「僕も常時身体強化魔法を使いながら仕事をして、毎日自分に回復魔法を掛け続けていたので、かなり回復に自信がついて来ましたよ。最近はお爺さん達からも回復魔法が効くようになったと評判ですしね」
「はははっ! これならレクスの兄貴に胸を張って会いに行けるぜ! 強くなったぜってな!」
「そうですね!」
そう、僕達がこんなに強くなれたのも、全てレクスさんと出会えたおかげです。
次に会った時には、心を込めてお礼をしないと。
ようやく仕事ができる様になってきた僕達は、気分良くお世話になっているレクスさんの実家へと帰っていきます。
「「「「ただいまー」」」」
「おかえりー」
と、いつもの様にレクスさんが迎え入れてくれました。
「「「「……え?」」」」
何故か、レクスさんの姿が見えます。
あと横に見知らぬ女の人の姿も見えます。
「やぁ皆、久しぶり」
ふたたびレクスさんが話しかけてきました。
と、いうか……
「「「「何で居るのーーーーっっ!?」」」」
◆
「ただいま父さん母さん」
久しぶりに実家に帰ってきた僕は、両親からジャイロ君達が滞在していると聞いて待つ事にしたんだ。
本当はちょっと顔を見せて帰るつもりだったんだけどね。
でもその間に両親にリリエラさんを紹介したら、何故か恋人と勘違いされて大変だった。
「あらあらまぁまぁ、お母さん早とちりしちゃったかしら? リリエラさん、うちの子をよろしくお願いしますね」
「は、はい! お任せくださいお母様!!」
リリエラさんも緊張し過ぎだよ。
そうこうしていたら、ジャイロ君達が戻って来た。
「おかえりー」
「「「「な、何で居るのーーーーっっ!?」」」」
いやいや驚きすぎでしょ。
実家に帰って来ただけだよ?
「王都に家を建てたから、ちょっとウチのゲートと繋いで里帰りをしたんだよ」
「王都に家!?」
「ウチのゲート!?」
「っていうかその人誰?」
「ええと、お久しぶりです」
ジャイロ君達が矢継ぎ早に質問をしてくる。
「ちょっとお金が貯まってね。貯めるばかりでもよくないから、家を建てたんだ。上位ランクの冒険者は拠点を持つものだってギルドの人にも勧められたからさ」
「あら、Bランクってそんなに凄いの?」
冒険者の事を良く知らない母さんが聞いて来るけど、その情報はちょっと古いよ。
「ううん、今はBランクじゃなくてSランクになったんだ」
「おお! さすが兄貴! もうS……S?」
と、珍しくジャイロ君が言葉を止める。
「「「「Sランクゥゥゥゥゥゥッッッ!?」」」」
ジャイロ君達が声をそろえて叫ぶ。
あはは、驚きすぎだよ。
「うん、Sランク。つい先日昇格したんだ」
「な、何があったらそんな早さでSランクになれるのよ!?」
それについては僕も疑問なんだけどね。
「ちょっとSランクの魔物を何体か倒したから、かな」
「Sランクの魔物を何体かって……」
いやー、Sランクって言ってもそんな大した事ないのばかりだったし。
「で、その人は誰?」
おっといけない。
「この人はリリエラさん。僕のパーティ仲間だよ」
「「「「パーティ仲間っっっ!?」」」」
皆の視線が一斉にリリエラさんに向く。
「ええと、私は普通のBランクだから、変な期待はしないでね」
あはは、謙虚だなぁ。
「リリエラさんは優秀なBランク冒険者だよ。実力的にもそろそろAランクに昇格するんじゃないかな?」
「Aランク昇格なんてまだまだ先よ。私がBランクに昇格したのもつい最近なんだから」
「……俺達とそう変わらない年に見えるのにBランク」
ジャイロ君は歳の近いリリエラさんの存在に刺激を受けたみたいだね。
「王都に家を建てるとか、とんでもない優良物件じゃない……」
あー、結構良い所に家を建てたから、そうかもしれないね。
「レクスとチームを組めるとかいろいろ凄い」
さすが、メグリさんはリリエラさんの素質に気付いたみたいだ。
「ええと、Sランク昇格おめでとうございます」
うん、ありがとうノルブさん。
「ところでさっきゲートを繋いだって言っていたけど、どういう事?」
おっと、さすがは魔法使いだけあって、ミナさんはゲートの事が気になったみたいだ。
「うん、せっかく拠点を作ったからね。ゲートを作って色んな所に行けるようにしたんだ。で、最初のリンク先として、何かあった時の為に用意しておいた実家のゲートに繋いだって訳。これでいつでも実家まで帰ってこれるようになったよ」
「あら便利ねぇ。お母さん達も好きな時に王都に行けるの?」
母さんがゲートに興味を持ったみたいで聞いてくる。
「一応防犯対策で僕が一緒じゃないと動かないようになっているけど、僕と一緒なら王都まであっという間だよ」
「まぁまぁ、それは素敵だわ。今度王都でデートしましょうねお父さん」
「え? あ、ああ。そうだな。うん、それも良いかな」
二人共、相変わらず仲良しだなぁ。
「ミナさん、ゲートってそんな簡単に作れるものなんでしょうか?」
僧侶だから専門的な知識の無いノルブさんが、ゲートについて魔法使いのミナさんに質問する。
「そんな訳ないでしょ! 要は転移魔法なのよ! 伝説の転移魔法! これが実在する事が知られたら世界が変わるわよ!」
えー、転移装置なんて作るの簡単ですよー。
入口と出口を作って空間を歪めて繋げるだけなんだから。
「ああそうだ、せっかくだし皆を王都の家に招待しようかな?」
「え!? アニキの家に!?」
「うん、せっかく作ったからね、お客さんを招待するのもいいかなって。父さん達もどう?」
僕は父さん達も王都の家へ誘う……というか、もともとそのつもりだったんだけどね。
「いや、私達は畑の作業や狩りもあるからね。また次の機会にさせてもらおう」
「あら残念ねぇ」
「母さん、あまり息子の一人、いや二人暮らしに干渉するもんじゃない」
ええと、今二人暮らしって言いなおしたけど、それはリリエラさんとパーティを組んでるからって意味だよね?
「それで、ジャイロ君達はどうする?」
「「「「……もしょもしょ」」」」
ジャイロ君達に向き直ると、彼等は4人でなにやら話し合っていた。
そして相談が終わったらしく、こちらを向く。
「おう! 勿論行くぜ! 俺達も修行の成果を試したいと思っていたからな!」
「という訳でライドさん、アストレアさん、長々とお世話になりましたが、そろそろ僕達も冒険者の仕事に戻りたいと思います」
ノルブさんが母さん達に深々と頭を下げてお礼を言う。
さすが僧侶だけあって礼儀正しいなぁ。
「あらあら、残念ねぇ。レクスが居なくなって久しぶりに賑やかになったと思ったのに」
「仕方ないよ母さん。彼等はまだ若いんだ、一つ所に留まっていられないんだ」
父さんが寂しがる母さんを宥める。
「すぐに出ていくとお仕事を手伝わせていただいた皆さんのご迷惑になりますので、一度帰る事を伝えてからキリの良い所までお手伝いを続けさせて貰いたいと考えています」
「そっか、じゃあその日が決まったらまた迎えに来るよ」
「うん、それでよろしくね」
それじゃあジャイロ君達を迎える為の準備をする為に、買い出しに戻るかな。
と、立ち上がった僕の手を母さんが掴んだ。
「せっかく帰って来たんだから、今夜は泊っていきなさい」
「……はい」
母さんのその微笑みには、えも言われぬ力が籠っていました。
◆
ジャイロ君達の戻る日が決まったら、僕とリリエラさんは一旦王都に戻り彼等を迎え入れる準備を進めた。
そして、数日後、手伝いを終えて気持ちよく村を出たジャイロ君達を、僕は王都へと連れて来たのだった。
「ようこそ皆。ここが王都に建てた僕の家だよ!」
と言っても、ゲートは家の中にあるから、ぱっと見じゃ王都に来た気はしないだろうけどね。
「へぇー、ここが兄貴の家かー」
「新築の木の匂いがする」
「改めて思いますけど、自分の家を建てるって凄い事ですよねぇ」
「んー?」
驚く皆の中で、ミナさんだけが首を傾げていた。
「どうしたんですかミナさん?」
「この家、なんだか変な感じがする」
へぇ、ミナさんは魔力の流れに気付いたんだ。
どうやら僕と別れてからかなりの修行を積んでいたみたいだね。
よく見ると、ジャイロ君達の実力はかなり上がっているみたいだ。
これは一緒に冒険するのが楽しみだね。
「それは防犯魔法の所為ですよ」
「防犯魔法?」
「はい、留守の時などに泥棒から家を守る為に建築段階から仕込んでおいた防犯装置です」
「さらりと凄い事言ったけど、まさか自分で家を建てたなんて言うんじゃないわよね?」
「はい、自分で建てましたよ」
「マジで!? 凄ぇなアニキ!」
「レクスさん家の設計なんて出来るんですか!?」
「まぁ田舎に住んでいれば、家くらい自分で建てられないといけませんからね」
「それ絶対建てる家の基準がおかしいと思う」
いやいやごくごく普通の家ですよ?
「じゃあまずは一旦外に出て、入り口から紹介しましょう」
僕はジャイロ君達を家の外まで案内する。
「……貴方達、色々と覚悟はしておきなさい」
ボソリとリリエラさんが呟く。
それはどういう意味ですかリリエラさん?
「「「「大丈夫、もう出来てるから」」」」
皆もどういう意味かな?
◆
「おおー! これが王都か! めっちゃくちゃ人が居るな!」
「うん、人が沢山」
「ア、アンタ達、あんまりキョロキョロするんじゃないわよ! お上りさんと間違われるでしょ!」
「いやー、実際そうなんですけどね。けど本当に凄い人の流れと建物ですねぇ」
初めて見た王都の街並みに興奮しているジャイロ君達は、ちょっと前のリリエラさんみたいだ。
もう少し王都の光景を楽しんでもらいたいけど、このままだと日が暮れるまで王都の光景に夢中になっちゃいそうだね。
「皆、そろそろ良いかい?」
僕が声をかけると。ジャイロ君達が本来の目的を思い出して、慌ててこちらを向いた。
「「「「っ!?」」」」
そして何故か全員そろってビシッと動きが止まった。
「あれ? どうしたの?」
もしかして、僕の家が思ったよりしょぼくてガッカリしたのかな?
「まぁそんな大した家じゃないから、期待外れだった?」
「「「「逆、逆ぅぅぅぅぅっ!!」」」」
突然ジャイロ君達が大きな声を張り上げたから、通行人の人達がビックリしてこちらを見る。
「何だよこのバカデケェ家は!?」
「家って言うより屋敷じゃないの!?」
「凄い豪邸」
「家を建てたとは聞いていましたが、これほどの屋敷とは……」
あれ? 予想外に高評価だよ?
おかしいな、前々世じゃ集めた研究資料や論文が収納しきれない程度の家だったんだけど。
だから前々世の家は地下にどんどん増築していったんだよねー。
「見た目だけだよ。実際はそんな大した家じゃないから。じゃあまずは入り口の説明からするね。この家は上位の結界魔法で保護されているから、僕に許可された人間以外は入る事が出来ないんだ。だから皆はウチを出る時はこれを身につけるようにしてね」
そう言って僕は皆に指輪を渡す。
「これは家の結界魔法を通り抜けるカギだから、無くさないように気を付けてね」
「こんな物を貰って良いの!?」
ミナさんが驚いて声を上げる。
「気にしないで。皆とは同期の仲間だからね」
「うおぉぉぉ!嬉しいぜ兄貴―!」
ジャイロ君が大興奮で指輪を装着すると、すこしだけ大きかった指輪がジャイロ君の指にぴったりのサイズに縮む。
ちなみにこの指輪だけど、魔法でサイズ調整が可能なサイズフリーなシロモノなんだ。
あと今現在の素材と機材でどこまで作れるかの実験を兼ねて、色々と機能を仕込んでみたりもしてある。
「一度装着すると指輪が持ち主を覚えるから、後で誰かに盗まれても使う事は出来なくなるんだ」
ふふふ、カギの盗難対策もバッチリだよ。
「さらりとロストアイテムを用意してきたわね」
「じゃあ中に入ろうか」
家の中に入った僕達は庭を案内する。
「まずこの庭だけれど、庭園ゴーレムを用意してあるから常に綺麗な庭を維持してくれるんだ」
僕が合図すると、庭の隅にひっそりと配置されていた庭石が偽装を解いて人型ゴーレムの姿に戻る。
「ゴーレム!? 貴方ゴーレムを作れるの!?」
ミナさんが目を丸くしてゴーレムを見つめる。
「ゴーレムは素材と術式さえ覚えれば誰にでも簡単に作れるよ」
「きっとその素材と術式は全然簡単じゃない」
「ですね」
何故かメグリさんとノルブさんが頷き合っているけど、簡単な計算式と同じで覚えればすぐに使いこなせるようになるよ。
「ゴーレム、ゴーレムを作れる様になれば……」
ミナさんの興味はゴーレムに釘付けみたいだ。
となると、こっちも興味の対象になるかな?
「そしてそこにある池は釣った魚を入れておける生け簀になっているだけじゃなく、水自体が警備用のゴーレムになっているんだ」
「水がゴーレム!? どうやって!?」
「ほらさっそく前言を撤回した」
「水をゴーレムにするとか、もうどうやって作っているのか想像もつきませんねぇ」
いやいや、だからこの程度は大したものじゃありませんって。
複雑な命令も理解できない単純なシロモノなんだから。
「こちらは小さいけど畑も用意してあるんだ。あっちは魔法で強化したガラスの温室もありますから、寒さに弱い薬草などを育てるのに向いてるよ」
「温室ですって!?」
と、ここでノルブさんが物凄い食いつきを見せた。
「知っているのノルブ?」
メグリさんが聞くと、ノルブさんはブルブルと震えながら頷き、説明を行う。
「聞いた事があります。聖地にある教団本部で門外不出の貴重な薬草を育てる為に作られた施設らしいのですが、建設費だけでなく、維持費も相当なものなのだとか。とても個人の資産で維持できるものではないと聞いています」
「な、何それ」
メグリさんが驚愕しているけど、そんなことないですからね。
魔法を併用して温室は常に一定の温度を維持させているし、温室自体が強化魔法や状態維持魔法で劣化しないようにしてあるから、ちゃんと作れば個人でも十分維持できる代物だよ。
それにこの温室はあくまで個人が使う程度の大きさでしかないからね。
そんな大きな組織が作る温室とは比べ物にならないよ。
「じゃあ次は家の中を案内するね」
僕は皆を家の中にへと案内する。
「まず玄関のドアはエルダープラントを素材に使っていて、耐火、耐腐食、耐衝撃、耐斬撃、耐魔法耐性を持っていて、衝撃反射効果も持たせてあるから、ドアを破壊しようとした人間は自分が与えたダメージをそのまま跳ね返される様になっているんだ」
「え? 何? 今さらりと超技術が使われてなかった?」
「あとドアはカギである指輪を持っていない人間が開けようとすると、眠りの魔法と麻痺の魔法が発動して眠らせるから、盗賊の鍵開け対策もバッチリだよ!」
「そもそも普通の盗賊はここまで入れないと思う」
「で、中に入ると小さいけどホール。ここにお客さんを招いてパーティが出来るんだ」
「あら、意外と普通の用途ね」
ミナさんが意外そうな顔で驚く。
「あと絨毯には人を寝かせると回復魔法が発動する様にしてあるから、王都が襲撃されたりクーデターが起きて大量の怪我人が出ても迅速に治療が出来るよ」
「「「「いきなり物騒になった!?」」」」
「こっちはリビング、6人くらいなら普通に過ごせる程度の広さを確保してあるよ」
「その時点でスゲェ広いよ兄貴」
「あとテーブルや椅子は防御魔法が掛かっているから、戦闘になったら遠慮なく盾にしてね」
「だから何で家の中で戦闘する前提なんだよ!?」
いやだって、侵入者相手に戦うのは良くある事だし、奇襲部隊との都市戦闘は基本じゃないか。あとうっかり実験に失敗……ゲフンゲフン。
「今何か言いかけなかった?」
なんの事ですかメグリさん?
「で、こちらは台所。調理器具は全部マジックアイテムだから、火も水も全部自動で用意できるよ。煙が出たら風のマジックアイテムを使って換気してね。ああそうそう、こっちの冷蔵庫は温度調整の魔法と氷の魔法を使って食べ物を長持ちさせる事が出来るから、気軽に食材を入れていいよ」
「……ヤバいわー、ロストアイテムしかないんですけどー」
「凄い便利! 私も欲しい!」
「これ、お客さんを中に入れちゃ駄目な部屋ですよね?」
「うおおー! なんだか分かんねぇけど兄貴スゲェんだな!」
「あと床の収納棚の中には各種ポーションが入っているから、戦闘になったら遠慮なく使ってね」
「「「「うん知ってた」」」」
「二階の部屋は個室で、家具は一通り揃えてあるよ。灯りはマジックアイテムで灯るから、ランタンとかは必要ないよ。それに窓も強化魔法で硬くしてあるから、侵入者対策は万全だよ。いざとなったら机の下の隠し通路から逃げてね」
「隠し通路って、そんなものまであるの!?」
逃走経路の確保は必須だよ。
「なんというか、徹底的に戦闘が起きる事を想定した造りですねぇ」
「あと家の中においてある動物の彫刻は侵入者対策のマジックアイテムだから、いざとなったら彼等が守ってくれるよ」
「「「「それ絶対侵入者を殲滅すると思う」」」」
やだなぁ、あくまでも護身用だよ。
◆
「うわー、ありえないわーありえないわー」
ミナさんがさっきから同じセリフしか口にしていない。
「お風呂が入り放題、しかも暖かいお湯で! おトイレも掃除しなくて良い! まるで貴族になった気分!」
メグリさんは新しい家が相当気に入ったらしく目をキラキラさせている。
「いやいや、この屋敷に慣れたら絶対人として堕落してしまいますね」
ノルブさんは僧侶らしく、便利な生活に流されないようにと自分を戒めている。
真面目な人だなぁ。
「スゲェよ兄貴の家! もう何がスゲェのか分かんなくなるくらいスゲェ!! 面白いモンがいっぱいだし、家なのに工房や鍛冶場はあるしでまるで店みたいだぜ! まぁ何でどの部屋も戦う事を考えてるのかはマジ分かんねぇけど」
本当はもっと色々あるんだけどねー、さすがに全部説明したら日が暮れちゃうから、今日はこのくらいかな。
「はぁ……まぁレクスの家なんだから、こういう家だって受け入れた方が精神衛生上良さそうね」
「ですね、いざとなったらここに逃げ込めば良いくらいに思っておきましょう」
「多分この屋敷だけで王都の軍隊を制圧できる」
うん? なんだか妙な納得のされ方をしているぞー?
「「「「ホント、予めゼンジェ村に行っておいて良かったー」」」」
え? それどういう納得の仕方?
_(:3 」∠)_ リリエラ「なっ? ヤバイ家やろ?」
_(:3 」∠)_ ドラスレs「めっちゃヤバイ。オーバーキルすぐる」
_(:3 」∠)_ 王都「助けて」
面白い、もっと読みたいと思ってくださった方は、感想や評価、またはブクマなどをしてくださるととても喜びます。




