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二度転生した少年はSランク冒険者として平穏に過ごす ~前世が賢者で英雄だったボクは来世では地味に生きる~  作者: 十一屋 翠
マジックアイテム編

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332/355

第332話 お祭りツリー

作者_(:3 」∠)_「メリークリスマス!! コロナ治ったぜー!(他の作品も読んでる方は二度目の報告)」

ヘルニー_:(´д`」∠):_「メリクリ、まー治りたてなのと年末なのと他の仕事でごった返してるので、しばらく短編で軽ーく流していきたい感じです」

ヘイフィー_(:3 」∠)_「と思ったらガッツリ書いてしまった。長編の1/10の短編とはいったい……ウィーでウィッシュなメリクリスマス」


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

 それは年末も近づいて来たある日の事だった。


「ツリーをくれー!」


「俺にも売ってくれー!」


 何故か材木問屋に人が殺到していたんだ。


「何かあったのかしら?」


「材木問屋って事は、年越し用の薪でしょうか?」


 年越しは神殿への参拝客目当ての食堂や屋台以外は休みになるからね。

 うっかり年越し用の薪を買い忘れた人達が殺到しているのかもしれない。


「にしても人が多すぎでしょ。年末まではまだ時間があるし、あんなに慌てるのはおかしいわ」


 リリエラさんの言葉になる程と納得する。

 確かにそう言われるとあんなに大勢の人が殺到するのはちょっとおかしい。


「あの、何で皆さん材木問屋に集まっているんですか?」


 僕は材木問屋の列に並んでいたおじさんに事情を尋ねる。


「ん、何だお前さん、知らないのか? エルフツリーの大会があるんだよ」


「「エルフツリーの大会?」」


 聞いたことのない大会の名前にリリエラさんを見ると、リリエラさんも知らないと首を横に振る。


「それってどんな大会なんですか?」


「俺も詳しい事は知らんのだが、なんか最近、遠くの森からエルフ達が商人ギルドに薬草なんかの取引に来るようになったらしいんだ」


 遠くの森と聞いて、僕は世界樹の上で暮らしていたシャラーザさん達を思い出す。

 そう言えば皆元気かなぁ。


「で、そのエルフ達の郷じゃ、数日後に特別な木に飾り付けをして祝う祭りがおこなわれるんだそうな」


 へぇ、特別な木かぁ。ますますシャラーザさん達の所みたいだね。

 まぁあの木は実際には物凄い雑草なんだけど。


「それを聞いた商人ギルドがさ、王都でもその祭りをやろうって声を上げた訳だ」


 材木問屋から、子供ほどの大きさのある木を担いで帰るお客さん達。

 うん、あれ完全に若木だね。

 しかもあれは建材には向かない薪ぐらいにしか使い道のない木だ。


「それは分かったんだけど、正直何で皆木を買ってるの? わざわざ買ってまでしたい祭りとも思えないんだけど」


 うん、正直な話、僕もリリエラさんと同じ意見だ。長年伝わってきた祭りならともかく、人づてに聞いた祭りを行う為にわざわざあんな木を買おうとは思えない。

 って言うかわざわざ買うくらいなら、自分で木を採取した方が安く済むしね。


「賞金が出るんだよ」


 と、おじさんは首をかしげていた僕達の疑問に答える。


「賞金ですか?」


「ああ、エルフツリー大会に優勝したら金貨10枚が貰えるんだとよ」


「「金貨10枚!?」」


 金貨10枚は普通の人間にとっては大金だ。

 そんな金額をこんな大会の賞金として出すなんて、中々に豪儀な話だね。


「ただし大会に参加するには、商人ギルドが指定する材木問屋で木を買って、大会参加券の木札を貰わないといけないのさ」


 そう言っておじさんが指さした先には、若木と一緒に木札を受け取るお客さんの姿が。

 成程、あの木を買う事が大会の参加費になるって訳だ。

 大会の参加費程度の金額程度の値段とはいえ、多くの人があの木を買ってくれれば、材木問屋は結構な儲けが出るだろうね。


「負けても後で薪にしちまえばいい訳だしな。新年前のちょっとした祭りって訳だ」


「成る程、考えたものだなぁ」


 ちょっと面白いと思った僕達だったけど、今の僕達なら金貨10枚はすぐ稼げるし、わざわざ皆の夢を奪う事もないよね。

 まぁ、自分で考えたエルフツリーを作るというのは面白そうだと思ったけどね。


 ◆


「兄貴、兄貴! エルフツリー大会って知ってるか!?」


 大声を上げてリビングに飛び込んできたのはジャイロ君だ。


「うん、聞いたよ」


「そっか、なら話は早ぇな! 俺達も参加しようぜ!」


 そういってドスンと大量の若木を床に置くジャイロ君。


「え?」


「皆の分も買って来たぜ!」


 いや買って来たって、僕達参加するって言ってないんだけど……


「アンタねぇ、何勝手に決めてんのよ」


 呆れた声でジャイロ君を窘めたのはミナさんだ。


「私はそんなの参加する気ないし、ノルブは教会で年末年始の参拝の準備をしなきゃいけないから、忙しいのは聞いてたでしょ」


 そうそう、ノルブさんは司祭だからね。

なんでも冒険者をやってる神官さん達は、この時期になるとよっぽど急ぎの依頼でも無い限り、拠点にしている町の教会の行事を手伝う為に大忙しなんだって。


「ありゃ、そうだっけ?」


「ありゃ、じゃないわよ! まったくもう」


「まぁ良いじゃねぇか。残りの皆で出ようぜ!」


「だーかーらー、私は出ないって」


「ん、私は出る」


 不参加を表明するミナさんとは対照的に、メグリさんが元気よく手を上げる。


「金貨10枚、私が手に入れる!」


 うん、メグリさんはお金が大好きだもんね。


「私も遠慮しておくわ」


 そしてリリエラさんからも不参加が表明される。

 これで参加二人に不参加が三人だね。


「えー、皆付き合い悪過ぎだろー。兄貴は参加するよな! 参加しようぜ!」


「ん、レクスも参加する」


「ええと、僕は……」


 正直言って参加するつもりはなかったんだけど……けど。


「「じー……」」


「うう……」


 こんなにキラキラした目で見られると断りづらい……


「分かったよ。僕も参加するよ」


「「やったー!」」


 はぁ、つい流されちゃったよ。


「もう、レクスは甘いんだから」


 あはは、ついね。


「よーし、それじゃあ三人で勝負だ! 滅茶苦茶スゲーの作ってやるぜ!」


「ん、豪華なの作る。お金をかけない範囲で」


 僕が参加すると決まって、二人は大はしゃぎで若木を担いで自分の部屋に飛び込んでゆく。


「まぁ良いや。興味があったのは事実だしね。せっかく参加するんだから、僕も楽しむかな」


 うん、僕も凄いのを作るぞ!!

 ……とはいえ、一体どんなツリーを作ろう。


「大会まではあまり時間がないし、皆もあんまり遠出は出来ないよね」


となると使用する素材は王都の市場で売っているモノか近隣で手に入る素材がメインになるだろう。


「まずは情報収集かな」


 ◆


「いらっしゃいいらっしゃい! エルフツリー大会用にどうだい!」


 市場は大賑わいだった。

 色んなお店がエルフツリー大会に使えそうな品を売り出していて、それこそ普段目立たないようなものを売ってるお店まで呼び込みに参加しているほどだったんだ。


「見てみなよお客さん、この鉱石凄く綺麗だろう? エルフツリーにどうだい?」


「本当! 素敵ね!」


「おっと、素手で触ると毒があるから飾る時は気を付けてくれよ」


「え!? 毒!?」


 毒があると言われ、鉱石に触れようとしていた女の人がビクリと手を引っ込めて離れる。


「えっと、や、やっぱ止めておこうかな……」


 そしてそのまま後ずさりをすると、走って逃げていってしまった。

 うん、まぁそうなるよね。


 市場の中は他にもいろいろなお店が呼び込みを行っている。

 綺麗な布切れや、宝石の屑石、普段売りものにならないような綺麗なだけの魔物素材と様々だ。

 種類もかなり多くて、この市場だけでもかなりの種類のエルフツリーを作れるんじゃないかな?


「でも逆に考えれば、ここで買える素材だけだと他のツリーに埋もれちゃいそうだね」


 よほど目を引く素材でもない限りは、センスのある人の飾り付けに負けてしまうだろう。


「美的センスとなると、流石に自信がないからなぁ。なんとか素材で勝負したいところだけど……」


 とにかく色々見て回る事にしよう。もしかしたらいいアイデアが浮かぶかもしれないし。


「うーん」


 けれど、どの店に行っても、良さげな素材は他の人達も買っている。


「やっぱり王都で手に入る素材だと他の人と被っちゃうな」


 こうなったら町の外に出て自分で素材を狩ってくるしかないかも。

 でも、素材を取って来るにしても、どんな素材がいいやら……

 思いつくような素材は王都でも売ってるからなぁ。

お祭りで使えそうでかつ売ってない素材かぁ。


僕は前世と前々世のお祭りの記憶から何か良いヒントは無いかと記憶を探る。

 ……うん、あんまり思い出せないなぁ。

 よく考えると、前世も前々世も英雄や賢者として忙しくて、お祭りなんて子供の頃に行ったきりだ。

 だから珍しいお祭りなんて殆ど思いつかず、思い出すのはごくごく普通の……


「あれ? そういえばアレがない」


 ふと、僕はこれまで寄ってきたお店に、あるものがない事を思い出す。


「他の店にはあるかな?」


 そう思って他のお店を巡ってみたけれど、やっぱりアレは見当たらなかったんだ。


「不思議だ、どうしてアレがないんだろう?」


 理由は分からないけれど、王都にはアレやアレの代わりとして使える物は一つも売っていなかったんだ。


「うん、それならいけるかも」


 よし、さっそくアレを獲りに行こう!


 ◆


 そしてエルフツリー大会当日。


「ツリーを展示する方はこちらに並んでくださーい!」


係の人の案内に従って僕達は行列に並ぶ。

参加者達は自分のツリーが人に見られない様、布などで隠して会場内に運び込んでいた。


「では木札を確認します」


 木札を見せると、メモを取った係の人に札と同じ番号が書かれた板が置いてある場所にツリーを置くよう指示される。


「お、兄貴も完成したんだな!」


 札と同じ番号の場所を探していると、ジャイロ君達と出会う。


「うん、何とか完成したよ、二人は?」


 アレを獲るのは大会が開催されるギリギリが良かったから、アレの場所を確認したらすぐに獲らずにずっと近くで待機してたんだよね。


「俺もバッチリだぜ!」


「私もバッチリ」


 どうやら二人のツリーも完成したみたいだね。


「じゃあまた後でな!」


「ん、また後で」


「うん、また後でね」


 それじゃあ僕もツリーを設置したら皆と合流する為に一旦外に出ないとね。


 ◆


『それではこれよりエルフツリー大会を始めます!!』


 ノルブさんを除く全員が集まった僕達は、大会開催の合図と共に会場へと入ってゆく。


「ツリーには触れないでくださーい!」


 会場の中は網目状に通路が通っていて、その間に僕達が飾ったツリーが展示される形だ。

 市場通りで行商人達が商品を売る自由市場の販売スペースを規則正しく並べた感じと言えば伝わるかな?


「へぇー、意外と綺麗なのね」


「凄いわねこの装飾。貴族の家に飾られてもおかしくないわよ」


 会場は思い思いの飾りつけをされたツリーに彩られ、煌びやかな様相を呈していた。

 うん、凄いツリーで一杯だ。

 やっぱりアイデア勝負に挑まなくて正解だよ。

 僕は冒険者らしく素材の質で勝負して正解だったね。


 そんな風に展示されたツリーを見ていくと、幾つも人の集まっているツリーに遭遇する。

 ああやって人が集まるツリーはやっぱり凄い。とにかくアイデアや使われている素材が他のツリーとは一味も二味も違うんだ。


「おっ、あれが俺のツリーだぜ兄貴!!」


 ジャイロ君の指さした先には、人だかりが出来ていた。


「へぇ、意外に盛況じゃない」


「そうね。でもなんていうか客層が……」


 そう確かにジャイロ君のツリーがある場所は人でにぎわっていたんだけど、何ていうかおじさん達ばかりだった。

 それも荒くれ者って感じの人や、恰幅の良い人ばかりで子供や女性の姿は見当たらない。

 ジャイロ君、一体どんなツリーを作ったんだろう?


「兄貴、これが俺のツリーだ!!」


 他の客をかき分けてツリーの前に来た僕達に、ジャイロ君が満面の笑みでツリーを指差す。

 その先にあったのは……


「これが俺の魔物素材ツリーだっ!!」


 その言葉通り、ジャイロ君のツリーには大量の魔物素材が飾られていたんだ。

 牙や爪、鱗、といったような一般に装飾品として使えそうなもので飾られているんだけど、

 面白いのは、爪や鱗も大きさや形状などを揃えて飾っている事だ。

 大きな爪をグルリと飾った下には、小さな爪をぐるりと飾ったり、色違いの鱗を交互に飾ったりしてあって中々にバランスが良い。

 

これなら女の人や子供でも楽しめるんじゃないかな? と思うんだけど、何故か集まっているのは屈強な男性ばかりだ。

一体なんでだろう?


「うーむ、こりゃ凄い。ランドドラゴンとケイブワイバーンの鱗だぞ。よくこんなものが手に入ったな」


「それにこっちはアークウルフの爪だぞ。こりゃあ珍しい」


「へへっ、そうだろそうだろ! なるべく綺麗な魔物を狙って狩ったからよ!」


 おじさん達に感心されて、ジャイロ君が得意げな笑みを浮かべる。


「それにしたってよくもまぁこれだけの数を揃えたもんだ。特にアークウルフの爪はなるべくダメージを与えない様に倒さないとこの艶は出せん。どこで買ったんだ?」


 成程、アークウルフはそこまで強い魔物じゃないけれど、倒し方が悪いと素材の質が悪くなるからね。

 ジャイロ君の腕が上がったからこその成果だね。


「へへ、何処で狩ったかは秘密だぜ。良い冒険者は秘密の狩場を教えないもんだぜ」


「む、確かにそうだな。これだけの腕の冒険者ならそれも納得か。しかし大した伝手を持ってるな坊主。お前はいい商人になれるぞ」


「へへっ、ありがとよ! ん? 商人?」


「あー、間違いなく勘違いされてるわね」


 はて、勘違いってなんだろう?


「ん、次は私のツリー」


 ジャイロ君のツリーを後にした僕達は、メグリさんのツリーにやってきた。

 メグリさんのツリーはジャイロ君のツリーとは打って変わって女性や子供でにぎわっている。


女の人達に紛れて見にいくのはちょっと恥ずかしかったけれど、なんとかツリーが見れる位置にまでたどり着く。

そこにあったのは、キラキラと光を反射して輝くツリーだった。


「きれーい! 素敵ね!」


「良いじゃない! 綺麗よメグリ!」


 リリエラさん達がメグリさんのツリーを絶賛する


「これは、何かの粉末を木にまぶしているんですか?」


 ツリーの表面に何か粉のような物が塗されていると気づいた僕が尋ねると、メグリさんも得意げな顔になる。


「ん、色々綺麗な物をすり潰して粉にした。木や葉に透明な接着剤を塗ってあるからこぼれない」

 成程、接着剤の質感も光を反射させて違う輝きを生んでるんだね。

 塗してあるのは金属かな? でもそれ以外の輝きもあるね。


「魚の鱗とか、キラキラしたものは色々試してみた」

 

 成程、流石メグリさん。お金をかけない為にアイデア勝負だね。


 でもこっちの金色の輝きはなんだろう?


「実は色合いを変える為に金や銀とかも粉々に砕いて使ってる」


 え!? メグリさんが金や銀を!?


「こっちは丸ごと燃やして接着剤を燃いたら、溶かして一塊にして回収する」


 ……成る程、使ったお金は意地でも回収するんだね。


 メグリさんのツリーを後にしたら、最後は僕のツリーだ。


「兄貴のツリーはどんな何だ?」


「ははっ、実物を見るまで内緒だよ」


 うん、せっかくだし、僕のツリーも直接見て驚いてもらいたいからね。


「うわっ、何アレ、凄い人だかり!」


 僕のツリーが近づくにつれ、通路の先がこれまで以上の人だかりになっているのが見えてくる。


「もしかしてあそこにレクスさんのツリーが?」


「流石に僕のツリーを見てる人だけじゃないと思いますけどね」


「すみません! 長時間立ち止まらずに進んでください!」


 ツリーに近づくと、人の進みは完全に止まってしまったのだけれど、係の人達がお客さんに足を止めないでと言って行列を動かす。

 それでも人の足は鈍かったけれど、ようやく僕のツリーの場所までたどり着いた。


「皆、これが僕のツリーだよ」


 そこには、輝くエルフツリーの姿があった。


「何これ……ツリーの飾りの玉が光ってる」


「まるで魔法みたいに光って……、もしかしてマジックアイテム!?」


 いやいや、流石に普通の人達が参加する大会でマジックアイテムは使わないよ。


「いえ、町の外で手に入るごく普通の素材ですよ」


「「これがごく普通!?」」


 そんな驚くようなものじゃないんだけどなぁ。


「これはジュエルドロップという素材ですよ」


「ジュエル……確かに納得の名前だわ」


「そうね……」


 僕のエルフツリーはこれまで見て来たツリーに比べるととてもシンプルな物だった。

ジュエルドロップがメインになるようにして、他の素材はその引き立て役だ。

 でもだからこそジュエルドロップの輝きが引き立つ。


「君、君がこのツリーを作ったのかね!?」


 すると、僕の会話を聞いていたらしい人が会話に割って入って来る。


「ええと、貴方は?」


 僕が訪ねると、その人はハッとした顔で咳ばらいをすると、背筋を正す。


「失礼、私はこの大会の審判の一人でミッキワー・メールと言う」


 なんと、この人は大会の審判だったらしい。


「私は商人ギルドに席を置いている宝石商人でね、自分で言うのもなんだがそれなりに多くの商品を取り扱っている自負がある。それもあって今回の大会の審判の一人に選ばれたのだが……」


 と、そこでミッキワーさんは口ごもる。


「大会では宝石を使う者はそれなりの数が居た。しかしそれらの宝石はどれも普通に手に入るありきたりのクズ石ばかりだった。だが君の宝石は今まで見たことも無い品だ。この独特の色艶、そして何より光り輝く宝石など聞いたことも無い。一体この宝石は何なんだ!? 一体どこで手に入れた物なんだね!?」


「え? ジュエルドロップは宝石じゃないですよ」


 成程、この人は宝石商人だからジュエルドロップを本物の宝石と勘違いしてビックリしちゃったんだね。


「宝石ではない!? では一体なんなんだね!?」


 確かにジュエルドロップは宝石のような見た目から名前にジュエルと付くけれど、本当に宝石という訳じゃない。


「ジュエルドロップは魔物の卵ですよ」


 そう、ジュエルドロップは宝石じゃなく、魔物の卵だ。


「魔物の卵!? なるほど、魔物の卵、それなら私が知らないのも当ぜ……」


「「「「って、魔物の卵ぉーっ!?」」」」」


 


 突然その場にいた人達が揃って大声を上げる。

 

「ま、魔物の卵なんて大丈夫なの!?」


「危険じゃないのか?」


 ああ、成る程、魔物の卵と聞いて皆びっくりしちゃったのか。

 確かに普通の人にとっては魔物は恐ろしいものだものね。


「いやでも卵なんだろ? それだったら安心じゃないか?」


「そ、そうか。卵だもんな」


「卵なら魔物が生まれる前に処分すればいいしな」


 よかった、僕がフォローする前に皆落ち着いてくれたみたいだ。

 うん、孵化したとしても所詮は生まれたてだもんね。そりゃ皆冷静になるか。


「それにしても綺麗。これが魔物の卵だなんて信じられないわ」


「この卵はトゥールナガイという魔物の卵なんですが、ごく稀に存在する頭部の一部が赤いレア個体の卵は孵化直前にキラキラと輝きだすんです」


「ごく稀と言う事は、まさかこれは変異種の魔物の卵なのかね!?」


「いえ、単にアルビノの動物のような特異個体というだけで、変異種ではないですね」


 そうなんだよね、色が違うだけで通常の魔物なんだけど、数が本当に少ないからある意味変異種よりも見つけづらいんだよね。


「そ、そうか。そうだよな。変異種の魔物の卵をこんな大会の為に獲ってくるわけないよな」


「……絶対下手な変異種より危険な魔物だと思うわ」


「「「「全面的に同意」」」」


「キュウ」


 もー、そんな訳ないじゃないか。トゥールナガイは大した魔物じゃないよ。


「成る程な、孵化直前の珍しい魔物の卵か。それならばこの奇跡のような美しさも納得だ……ん? 孵化直前?」


 と、ミッキワーさんが建付けの悪い扉のような動きでこちらを見る。


「……なぁ君」


「はい、何でしょうか?」


「先ほど孵化直前と言っていたが、私の聞き間違いだよね?」


「いえ、孵化直前で合ってますよ」


 うん、孵化直前の卵でないと光ってくれないからね。


「そ、それは安全な魔物なんだよね。た、卵から生まれたばかりなら危険も無いんだよね?」


「そうですねぇ、生まれたばかりだと牛くらいの大きさの生き物をあっという間に骨にする程度の食欲があるくらいですか」


「そ、そうか、その程度か……って、なぁにぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」


 僕の説明を聞いたミッキワーさんは突然取り乱す。


「き、君! すぐにその卵を破壊するんだ! 魔物が生まれる前に!」


「ああ、その心配は……」


 と、その時だった。

 ツリーに飾ってあったジュエルドロップがピカリと輝きを増したんだ。


「なっ!?」


「あっ、もうこんな時間か」


 ジュエルドロップの卵はピカピカ点滅をし始める。


「ま、まさか魔物が生まれるのか!?」


「に、逃げろぉぉぉ! 卵が孵化するぞぉぉぉぉ!」


「う、うわぁぁぁぁぁ!」


「レクスさん、早く卵を潰して!!」


 そう叫んだのはリリエラさんだった。


「え? 何でですか?」


 何故か皆は武器を抜いてこちらに向かって走って来る。

 って、何で皆武器を抜いてるの!?


「何でって、魔物が生まれちゃうでしょ!!」


 ジュエルドロップの卵は次第に点滅を早めてゆく。


「ああ、それなら……」


 そこでジュエルドロップの卵がひと際眩く輝き……


「あ、ああーっ!!」


 ふっと光が消えた。


「……っ!!」


 皆は驚きの表情と共に武器を構える。

 いやだから何でそんな臨戦態勢なの?


「……」


「…………」


「………………?」


 長い沈黙が続く中、メグリさんが困ったような不思議そうな顔で首を傾げる。


「ねぇ、いつ魔物は生まれるの?」


「え? 生まれませんよ」


「「「「え?」」」」


「で、でも孵化直前の卵なんでしょ!?」


「ええ、そうですよ」


「今もの凄くピカピカしてたじゃない! 魔物が生まれる寸前だったんじゃないの!?」


「え? ……ああ! そういう事ですか!」


 成程、皆ジュエルドロップの点滅を魔物が生まれる合図と勘違いしてたんだね。


「違いますよ。今のは逆で、卵が完全に死んだ証ですよ」


「「「「……へ?」」」」


「キュ?」


「ジュエルドロップは深い海の底で暮らす、光で獲物をおびき寄せて襲う魔物の卵なんです」


「そ、そう……なの?」


「で、魚の魔物なので、地上では生きていけません。当然卵も同様です」


「え? それってもしかして」


「はい、水から出した時点でトゥールナガイの卵は孵化できなくなったも同然です。卵が光っていたのは、孵化直前の子供が残ったエネルギーを使って陸の空気から身を守っていたからなんです。点滅していたのはその力が尽きる瞬間だったからなんですよ」


「じゃ、じゃあ光の消えた卵って……」


「はい、完全に死んだので、孵化する事はありません。というか、深海で生息する生き物なので、海上に引き揚げた時点でもう孵化は不可能ですね」


「孵化だけに?」


 そこにメグリさんからの鋭いツッコミが入る。


「その通り!」


「「あははははっ」」


「……ふぅ」


 一通り笑い終えたメグリさんが息を吐くと、すっと笑顔で下がる。


「「「「あははじゃなーい!」」」」


とまぁこんな訳で、エルフツリー大会は中止になってしまったんだ。

 そして僕は紛らわしい事をしたとして、慌ててやって来た衛兵隊に大目玉を喰らってしまったんだよね。

 そして本来なら魔物の卵を町に持ち込んだ事で罰せられるところだったんだけど、陸揚げした時点で孵化する事がない安全なものだったと分かっていて持ち込んだ事で、ギリギリ危険な品ではなかったと判断されて逮捕されずに済んだんだ。

 それでもかなりお説教されたけど……


はぁ、まさかこの国の人達が誰もジュエルドロップの事を知らないとは思わなかったよ。

 前世じゃ普通に珍味として市場で流通してたんだけどなぁ。

 まぁこの国は海に面した国じゃないから、知らない人が居てもおかしくないかぁ。


 とまあ、そんな訳で僕達は優勝を逃してしまったんだ。


 ◆


「みんなー。ご飯できたよー」


 ご飯が出来たのでキッチンから皆を呼ぶ。

 普段はお店で食べるんだけど、僕達は冒険者だからね、冒険先で食料を無くしてその場で採取した食材で食いつながないといけない場合もあるから、定期的に料理をする事にしていたんだ。


 本当はミナさんとジャイロ君の番だったんだけど、エルフツリー大会で迷惑をかけたから、僕がやることになったんだよね。


「おー、メシメシー!」


「レクスのご飯はちゃんと食べれるから安心して食べれるわね」


「その分素材に何が使われてるか分からないのが怖いけどね」


 皆が自分の指定席に座ると、僕は料理を並べてゆく。


「ん、今日も美味しそ……ん?」


 と、並べられた料理を見たメグリさんが首を傾げる。


「「「……」」」


 そして料理を見た皆も何故か無言になる。


「あれ? どうしたの皆?」


「……ねぇレクスさん、この卵? 見覚えがあるんだけど」


 おっ、すぐに気付いてくれたみたいで嬉しいよ。


「ええ、ジュエルドロップですよ。ツリーの材料で余ったのを料理に回したんです」


 そう、ジュエルドロップは見た目の美しさもさることながら、高級食材としても有名だ。

 折角獲ったんだから食べないと勿体ないもんね。


「さぁ、皆召し上がれ!」


「「「……」」」


 けれど何故か誰も動かない。

 真っ先に料理に手を伸ばすジャイロ君もだ。

 おかしいな、もしかして皆お腹が空いてないのかな?


「ただいま戻りました。すみません、教会の手伝いが遅くなってしまいました」


 そんな中にノルブさんが食堂へ入って来る。


「わぁ、綺麗な料理ですね! 何か珍しい食材が手に入ったんですか?」


「ええ、味は保証済みですよ!」


「わぁ、楽しみだなぁ。あれ? 皆さんまだ食べてなかったんですか?」


 と、ノルブさんは皆が料理に手を付けてなかった事に気付く。

 そうか、皆ノルブさんが帰って来るのを待ってたんだね。

 流石の友達思いだね!


「はい、ノルブさんの分です。どうぞ」


「ありがとうございます」


 ノルブさんは料理の前で手を組むと神様への祈りを捧げ、皆はそんなノルブさんの祈りが終わるのを静かに待つ。


「では頂きます」


 そして祈りを終えたノルブさんは、ジュエルドロップが入ったスープに手を伸ばし……

ノルブ_(:3 」∠)_「美味しい! あれ? 皆食べないんですか?」

ジャイロε- (´∀`*)「う、うん食べるぜ。ちゃんと食べるぜ(ほっ)」

ミナε- (´∀`*)「うん、食べる食べる(生きてる)」

メグリε- (´∀`*)「食べよう!(無事だった)」

モフモフ_Σ(:3 」∠)_「友情とは一体……そしてこれが今年最後の更新か」


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― 新着の感想 ―
[一言] 悪い癖というものは、元々どれだけ長い年月をかけても直すのが極めて難しいケースが非常に多い。 本作におけるレクスの場合は、前世と前々世の記憶をほとんど保持しているようだから、尚更その手の失敗が…
[一言] :(;゛゜'ω゜'):毒味は神官のお仕事です?
[良い点] みんなノルブを毒見役にwwwwひでぇ(笑) [一言] 今年も一年お疲れ様でした、良いお年を!
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