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二度転生した少年はSランク冒険者として平穏に過ごす ~前世が賢者で英雄だったボクは来世では地味に生きる~  作者: 十一屋 翠
マジックアイテム編

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第316話 知恵者との再会

作者_(:3 」∠)_「君がこれを読んでいる頃、私は新幹線に乗っているだろう」

ヘルニー_(:3 」∠)_「いや更新時間だとまだ寝てるでしょ」

ヘイフィー_(:3 」∠)_「ソシャゲのログボを貰ってる頃かもしれない」

作者_(┐「ε;)_「いつもと変わんねぇなぁ」

ヘルニーヾ(⌒(_'ω')_「仕事は新幹線の中でしろ」

作者(´ཀ`」∠)_「取材旅行とは」

ヘイフィーヾ(⌒(_'ω')_「休まず働けの意」

作者ε=ヘ( *'з')ノ 「ついでに聖地めぐりすっかー」

ヘルニー三⊂´⌒っ*´ω`)っ「聖地めぐりのついでに取材する作者」

ヘイフィーΣ(๑ °꒳° ๑)「しかも今日は作中キャラの誕生日とかタイミングミラクル過ぎない? 全く狙ってなかったよ」


いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

 ゴーレムにマジックアイテムの魔力を追跡させている間、僕はリリエラさんのマジックアイテムの解析を再度行っていた。


「し、死ぬ、心が……死ぬ」


「は、はは……こんな訓練をしていたのなら、そりゃあ強くもなるってもんよね……」


 馬車の床には、あおむけで転がるミナさんとノルブさんの二人。

 とりあえず二人には自分が何を出来るのか実戦形式で教えておいたから、力の使い方が分からずに不覚を取ることはないだろう。


「スピー」


「くかー」


「すぴょぴょ」


 そしてソファーの上では、リリエラさん達がはしゃぎ疲れて眠っていた。

 ミナさん達の訓練風景を見てたら、皆も興奮してはしゃいじゃったんだよね。

 でも今回作った馬車は、皆が中で暴れても良いように、頑丈さを追求したものだから、中から破壊されるようなことはない。


「皆が大喜びで遊んでいたわねぇ」


 おっとりとした様子でリリエラさんに膝枕をしていたマリエルさんがそんな事を言う。


「まぁ、そうですね」


 ジャイロ君達は皆と遊んでいる気分で魔法を暴走させていたからなぁ。

 性能が低いとは言え、封印具を使ってもあれだけの力を出せるあたり、やっぱりジャイロ君達の能力は大人の時と同じみたいなんだよね。


「ところで体は大丈夫ですか? 問題はありませんでしたか?」


「ええ、これのお陰で全然大丈夫よ」


 と言って、マリエルさんは首からかけたペンダントを指でつまんで見せる。

 これはリリエラさん達の面倒を見るマリエルさんの為に用意したマジックアイテムだ。

 リリエラさんは氷を、ジャイロ君は炎を、そしてメグリさんは風の魔法を無意識に使ってしまう。


 それが原因でマリエルさんが怪我をしない様に、僕は彼女に防御用のマジックアイテムを渡しておいたんだ。

 暴れる皆を止めるのは無理だけど、リリエラさん達が無意識に魔法を発動させて怪我をさせる事は防げるはずだ。


「ちゃんと効果があるようで何よりです」


 といっても、今の素材で作れる程度の物だから、過信は出来ないんだけどね。

 そんな感じで皆が休んでいる間に、僕はリリエラさんのマジックアイテムの解析の続きを行う。

 すると前回は見つからなかったある手がかりを発見したんだ。


「ハシュド? これは……製作者のサインかな?」


 透視魔法でマジックアイテムの中を見た所、回路が組み込まれた基盤に誰かの名前らしきものが刻まれていたんだ。

 魔法式って感じでもないし、文字が完全に独立した場所に刻まれているから、まず名前で間違いないだろう。 


 当時の技術者の名前か。でも僕の知らない人だなぁ。

「前世と前々世の記憶じゃ聞いた事の無い名前だ。名の売れた技術者じゃなかったか、僕がいなかった時代の人かな?」


 困ったな。古代のマジックアイテムに関する書物を漁ってこの名前を調べる?

 でもそれにはかなり時間がかかるよねぇ。

 となると後はハシュドって名前を知っていそうな人に尋ねてみるか……

 一番知ってそうなのは、魔法学園の前学園長だったミナさんのお爺さんだけど……


「お孫さんがこんな姿になったって知らせるのもなぁ」


 物凄く怒られるか、物凄く興味を持たれるかのどっちかだよね。


「他に知ってそうな人は……あっ!」


 そうだ! うってつけの人が居たじゃないか! あの人なら何かを知ってる可能性が高いぞ!


「すみませんマリエルさん。僕はちょっと出かけて来ますので、皆の事よろしくお願いしますね」


「ええ、任せて頂戴」


 ◆


 僕がやってきたのは故郷であるゼンジェの村だった。


「おっ? レクスじゃねぇか! 帰ってきたのか?」


 声をかけて来たのは狩人のカリオおじさんだ。


「あっ、カリオおじさん。ただいま」


 丁度良かった、あの人がどこにいるのか聞いてみよう。


「カリオおじさん、ガンエイさんを知りませんか?」


「ガンエイ? アイツなら村の畑で植物魔物キメラの品種改良をしてるぞ」


 そう、僕が話を聞きに来たのはガンエイさんだ。

 何百年も前からアンデッドとして活動してるガンエイさんなら、ハシュドという人のことを知っている可能性があるから。


「ありがとう、カリオおじさん」


 カリオおじさんと別れると、僕は村の畑に向かう。


「あれ? レクスじゃん、おかえりー」


「レクス兄ちゃんおかえりー!」


 途中村の皆が手を振って挨拶をしてくれる。

 うーん、たまに帰ってくると心が安らぐなぁ。

 王都の屋敷に転移ゲートを設置してるんだし、もっと頻繁に帰って来ても良いかもだね。


「レクス兄ちゃん、俺もうフォレストウルフを素手で倒せるようになったんだぜ! 俺も冒険に連れて行ってくれよ!」


 と、村の子供達の中でも冒険者に憧れる子達が群がって来る。


「私は魔法で高々度を飛んでるニードルホークを狙撃できるようになったわ!」


「僕、体が真っ二つになったブレイズベアーを回復魔法で治すことが出来るようになったよ!」


「おおー、皆凄いねぇ。頑張ってるんだね」


 自分達の修行の成果を誇る子供達に僕はよく頑張ったねと褒めてあげる。

 子供達に修行を続けさせるには、ちゃんと成長を褒めてあげないといけないからね。


「でも冒険者になるなら、最低限ドラゴンを倒せないとね。 僕の仲間達も一人でドラゴンを倒せるよ」


「俺だってドラゴンくらい倒せるって。でもこの辺じゃドラゴンなんて滅多に出ないしさぁ」


 実はこの条件、半分は方便なんだよね。

 確かに皆ブルードラゴン程度なら余裕で倒せる程の実力がある。

 でも皆はまだ子供だし、世の中にはドラゴンよりも怖い悪い大人達がいる。


 皆がそんな悪い大人に騙され利用されない為にも、彼等には騙されないだけの知識と分別を身に着けて貰わないといけない。

 だから大人達は適当に理由をつけて皆が村から出ない様にしてるんだよね。


「そうだね。ドラゴンには隠れるのが上手い種類もいるから、注意深く探ってドラゴンを見つける訓練もしないといけないんだよ」


 まぁ大抵のドラゴンは隠れたりせず、堂々と正面から襲ってくるんだけどね。

 けど注意深く観察する事は他の魔物を狩る時や、発見が困難な素材を見つけるのに役立つ。

 僕も前々世じゃ師匠に騙されてドラゴンが碌にいない土地でドラゴンを探して探査能力を磨いたもんだよ。


「ちぇー、分かったよ」


 不承不承納得した子供達と別れた僕は、村の畑へとやってきた。

 そして畑のアルラウネをベースにしたと思われるキメラの世話をする人物を発見する。


「ガンエイさーん」


「んん? 誰だ……って、小僧ぉーっ!?」


「どうも、ってあれ!? ガンエイさんその姿は!?」


 振り向いたガンエイさんは、なんと普通の姿をしていたんだ。

 それは格好がとかではなく、肌が違ったんだ。

 以前のアンデッド特有の死体の姿じゃなく、目の前のガンエイさんは瑞々しく生気に溢れた肌をしていたんだ。


「ん? ああ、これか? 外の連中対策の偽装だ」


「擬装?」


「この村の連中はおかしなことに儂の姿を見ても驚かんが、取引をしている他の村の連中はそうもいかんからな。流石にアンデッドの姿を見られるのもアレだから、変身用のマジックアイテムを装備して見た目だけでも普通の人間に見える様にしたんだ」


 成程、外から来る人対策に変身したのか。


「それで貴様こそ何の用だ。儂は食材キメラの研究に忙しいんだ」


 ガンエイさんは邪魔だからさっさと帰れとばかりに手をパタパタと振る。


「ええと、ガンエイさんに聞きたい事があって来たんです」


「儂に聞きたい事?」


 ガンエイさんも仕事中みたいだし、邪魔にならない様にさっさと話を聞いちゃおう。


「ええ、ハシュドって名前に心当たりはありませんか?」


「ハシュド? マジックアイテム技師のハシュドの事か?」


 やった! やっぱりガンエイさんに会いに来て正解だったよ!


「多分その人です。実は……」


 僕はマジックアイテムが原因でリリエラさんの身に起きた事を詳しく説明する。


「身に着けた娘が子供になって、それに巻き込まれて他の小僧共も子供になった……か」


 僕の話を聞いたガンエイさんは、うーむと顎に手を当てて唸る。


「儂も直接会って話をしたわけじゃあないが、ハシュドの話は聞いたことがある」


 そう前置きして、ガンエイさんはハシュドという人物について話し始めた。


「ハシュドは若返りのマジックアイテムの研究者だ」


「若返りのマジックアイテム!?」


 やっぱり! リリエラさんの身に起きた出来事と同じだ。


「ただ、ハシュドの研究は芳しくなかったらしい。なにせ若返りだからな。老化を止めたり肉体を活性化して若返ったように見せるのとは訳が違う。若返りは時間遡行の技術だからな」


 時間遡行の技術とは、言葉通り過去に戻る技術と言う事だ。

 けれどそれは川の水を逆流させるに等しい行為。


 僕が生きていた頃も時を戻す研究をする人達はいたけれど、誰一人として成功した人はいなかった。

 そしてそれはガンエイさん達の時代も同じだったみたいだ。


「それもあって家族とはあまり仲が良くなかったとも聞いているな。まぁ成功する見込みのない研究だったからある意味仕方がないが」


「それでも続けていたんですか?」


「ああ、若返りの研究は期待だけはされていたからな。自分達が生きている間に成果が出れば儲けものとある程度予算が集まる分野の研究だったのも運が良かったというべきか」


 確かに、僕が生きていた頃も、若返りの研究は権力者や美を求める人達に支持されていたしね。

 噂じゃかなり問題のある研究もされていたって話だし……


「ガンエイさんはハシュドさんの研究施設がどこにあるか知っていますか?」


「……一応はな。だが儂が生きていた時代は奴が地上を混乱に陥れていた。儂の知っているハシュドが所属していた研究所が今も残っている保証はないぞ」


「え? それって……あっ」


 そうか、ガンエイさんの時代は、白き災厄と呼ばれる危険な魔物が暴れ回っていた時代なんだっけ。

 白き災厄の強さは相当なもので、当時の騎士団や実力者が敵わなかっただけでなく、魔人達ですらこの世界の侵略を諦め、一時撤退を余儀なくされたんだっけ。


「それでも何か手掛かりは残っているかもしれません。教えてください」


「……まぁ良いだろう。もしかしたらハシュドの奴も儂と同じでアンデッドになっているかもしれんしな」


 と、ガンエイさんは冗談めかして笑う。


「良いだろう。案内してやる」


「え? ガンエイさんも来るんですか?」


 僕としては場所さえ教えてもらえば後は自分で行くつもりだったんだけど。


「今は儂の生きていた時代とは国の名前も国境線も違う。ハシュドの研究所がある場所の名前を教えても、それが今はどこになるのか分からんだろう?」


 そっか、確かに当時と今じゃ地図で位置を確認する事ができない。

 そう言う意味では当時を知っているガンエイさんに案内を頼んだ方が良いのは事実だね。


「ありがとうございますガンエイさん」


 ◆


 ガンエイさんを連れて馬車に戻ってきた僕は、マリエルさんとミナさん達にガンエイさんを紹介する。


「まぁまぁ、ウチの娘の為にありがとうございます」


「このオジさんが何百年も前の魔法使いねぇ」


「ア、アンデッドって大丈夫なんですか!?」


 ガンエイさんの事を聞いた三人は、三者三様の反応を示す。

 特に神官のノルブさんは不浄な存在であるアンデッドと言う事から、ガンエイさんを特に警戒しているみたいだ。


「ノルブさん、ガンエイさんは理性的なアンデッドだから大丈夫ですよ」


「理性的……アンデッドが?」


 基本的にアンデッドは理性を無くして生者に襲い掛かるから、仕方ないと言えば仕方ない反応だ。

 でも高位アンデッドは逆に理性を持った者の方が多いんだけどね。


 まぁこの辺りはガンエイさんとコミュニケーションをとっていけば、納得してくれるだろう。


「それで、ハシュドさんの研究所にはどうやって行くんですか?」


「ある地下遺跡に、世界各地に転移する為のグランドゲートがある。それを起動させて向かう」


「世界各地に転移する為のゲート!? そんなものが現存するの!?」


 村から碌に出た事のない若い頃のミナさんがグランドゲートという言葉に強く反応する。


「うむ。魔人との戦乱、白き災厄の蹂躙で多くのゲートが破壊されたが、我等が地下に移り住んだ後に開発された地下遺跡のゲートならば現存している筈だ」


 成程、白き災厄から逃れるために当時の人達は地下に移り住んだ。

 当然ゲートも地下に新しく作ったって事か。


「ならここからは馬車で魔力の残り香を追跡するチームと、ガンエイさんと共にグランドゲートに向かうチームに分かれた方がいいかな」


「はいはーい! 私はグランドゲートのある方に行きたいでーす!」


「ぼ、僕は安全に馬車で追跡する方がいい……かな」


 元気よく手を上げたミナさんと、おずおずと手を上げたノルブさんで見事に希望が分かれる。


「ならミナさんとガンエイさん、僕とノルブさんとマリエルさんとリリエラさん達のチームって感じかな?」


「この小娘も連れて行くのか?」


「何よ、文句あるの!?」


 ガンエイさんはミナさんが付いてくると聞いて、面倒くさそうな顔になる。


「足手まといになるでないぞ。数百年も放置されておるなら、防衛用のゴーレムが侵入者である儂等を敵と判断して襲ってくる可能性は高いからな」


「の、望むところよ! 修行の成果を見せてやるわ!」


 ガンエイさんの脅しにミナさんがちょっぴり怯みつつも気合を見せる。


「ぼ、僕達は安全に行きましょうね」


 力を使いこなす為の訓練を受けたノルブさんだったけれど、残念な事にあまりその成果は無かったみたいだ。

 何でこんなに不安げなんだろう?


「じゃあ一旦パーティを分け……」


 その時だった。

 馬車を引いていたゴーレム馬が嘶きを上げて馬車を止めたんだ。


「ど、どうしたんですか?」


「どうやら終点に到着したみたいです」


 馬車を降りると、そこは見知らぬ森の傍だった。


「どうやらここで魔力が途切れてゴーレムが追跡出来なくなったみたいですね」


「ええ!? それじゃあ馬車で追跡は!?」


「無理みたいですね」


「そんなぁ……」


 まぁ、元々魔力の残り香は少なかったからね。

手がかりが見つかる前に途切れる可能性も十分あった。


「ねぇ、おかしくないかしら?」


 けれど、そこでマリエルさんが不思議そうに首を傾げた。


「何がですか?」


「リリエラのマジックアイテムは旅の商人から買ったのよね?」


「ええ、そう聞いています」


 ガラクタ通りの店主さんはそう言っていたね。


「なら、レクスさんが追いかけたのはその商人の歩いた跡よね? でも商人がこんな森にやって来る理由って何かしら? 見たところ、街道も近くに見当たらないみたいだから、旅の途中で食料や薪を求めてやってきたって感じでもないわよね」


「「「あっ」」」


 言われてみれば確かにそうだ。

 僕はすぐに飛行魔法で上空に上がって周囲を見回してみると、街道はかなり遠い位置で見つかる。

 更に周囲を見回して、周辺の立地も確認すると、一旦地上に戻って皆報告する。


「街道はかなり離れた所にありました。それとショートカットの為に森を抜けた可能性も考えて周囲を確認したんですが、森を抜ける利点のある方向には町も村も見つかりませんでした」


 寧ろ位置的には素直に街道に沿って移動した方が早いくらいだ。


「ならこの森の中にマジックアイテムを見つけた遺跡があったという事でしょうか?」


「いえ、上空から見た限りでは、遺跡らしきものはありませんでしたし、地下にもそれらしい反応はありませんでした」


 ノルブさんの意見に対し、僕は地中へ放った探知魔法の結果を伝える。


「じゃあ何でこんな所に……?」


 うん、これはおかしいね。

 最初は諦めてガンエイさんと共にグランドゲートに向かうべきかと思ったけど、この謎はちゃんと調べた方がいい気がする。


 それにしても流石はリリエラさんのお母さんだ。目の付け所が違う。

 いや、寧ろ僕達冒険者が仕事柄森に入るのが当たり前だったからこそ、抜け落ちていた視点なのかもしれないね。


「だがどうする? 魔力の残り香は無くなってしまったのだろう? 流石に儂も魔力の残り香が無くなったら追跡は無理だと思うぞ」


 ガンエイさんの言う通り、魔力の残り香が無くなったら魔力を辿って追跡するのはもう無理だ。なら……


「魔力以外の変化を調べましょう」


「何? 魔力以外? それはどういう……」


「オーディナリーディファレントトレーサー」


僕の魔法が発動した瞬間、魔力の波が森とその周囲に波打つ。


「なっ!?」


「え? 何!?」


「これは!?」


「ふえ?」


「ん~?」


「ムニャ?」


「キュッ!?」


魔力の波が体を通り抜けた感覚に、皆が一斉に反応する。


「あら? 皆どうしたの?」


 唯一、魔法を使えないマリエルさんだけがそれを感じ取れずに首をかしげていた。


「……ありました。これですね」


 僕が発動させた魔法によって、かつてここで起きた異変が視認できるようになる。

 それは、ちょうど僕達と同じくらいの大きさの、縦に広がった波紋だった。


「何だこれは……?」


 浮き上がった波紋を見て、ガンエイさんが首を傾げる。


「これはここ最近に発生した空間の揺らぎですね」


「空間の揺らぎ!? どういう事だ!?」


 ガンエイさんの、いや皆から疑問の視線が僕に集まる。


「今使った魔法はオーディナリーディファレントトレーサーといって、日常との違いを浮き上がらせる魔法です」


「日常との違い……ってどういう事?」


「この魔法は術が発動した空間の日常を平均値として測定し、日常とは違う異常な状態が起きた時の反応をこんな風に目に見える形で見せてくれる魔法なんです」


「な、成る程……?」


「いや待て、どういう事だ!? 空間の日常を平均値として測定!? お主はこの場所を常に観測していたという事か!?」


「いえ、初めて来た場所ですよ。単純にここ最近のこの空間の記憶を読み取っただけです。どうやらここ最近、空間のこの部分に変化が起きたみたいです。恐らくは転移魔法でしょう」


 つまりどこからか転移魔法でここにやってきて、それから町へ向かったって事かな。

 それなら追跡していた魔力がここで途切れた理由も納得できるよ。

 正確にはここから魔力が動き出したって事だからね。


「空間の記憶を読み取った……? つまり過去を見たという事か? だがそれは事象の逆算、時間遡行と同じではないか!?」


「いえいえ、時間の流れに直接介入なんて出来ませんって。あくまで起きた出来事を覗き見てるだけですよ」


「その時点で時間の秘密に手をかけているという事ではないかぁーっ!!」


 見るだけだから、そんな大した魔法じゃないんだけどなぁ。


「ええと、空間の記憶? 時間? つまりどういう事?」


「ミ、ミナさん、あまり深く突っ込むのは止めた方が良いと思いますよ。難解過ぎて僕達じゃとても理解なんて出来ませんよ」


 いやいや、そんな事ないよ。ちゃんと理論を学べば誰にでも分かる事だから。


「という訳で、この空間の歪みを足掛かりに、どこから転移してきたのかを探りますね……うん、転移痕を発見しました。じゃあ空間を開いて逆転移しますね。ゲートリオープン!!」


 空間に波打つ転移痕に干渉し、僕は逆転移を行うべく転移魔法を発動させる。

 そして目の前に浮かんでいた空間の転移痕が広がると、僕達は森の前から真っ暗な空間へと移動した。


「な、なになになにっ!?」


一瞬転移に失敗して亜空間に出てしまったのかと思ったけど、足元に堅い感触があるから、亜空間じゃないな。と言う事は……


「ワイドライト!」


 広域照明魔法を頭上に発動させると、魔法の灯りに照らされて周囲の景色が色を帯びる。


「やっぱり屋内だったみたいだね」


 どうやら僕達は外からの光の届かない密室に転移してきたみたいだ。

 周囲を見ると壁に窓が見当たらない。外からの光が届かないのはそのためだろう。


「逆転移……だと!? まさかそんな事が…………」


「ねぇ、何が起きたのよオジさん?」


 ミナさんがガンエイさんに何が起きたのかを尋ねている。


「ぎ、逆転移だ。転移魔法の痕跡から、転移元を割り出して辿って来た……らしい」


「へぇ、転移魔法ってそんな事も出来るんだ」


「出来る訳が無い! 発動した転移魔法から転移元を読み取るなど、理論的に不可能……あ」


 そこで何かを思い出したのか、ガンエイさんが言葉を切る。


「急に黙ってどうしたのよ?」


「いや、昔それやられたわ」


「え?」


「のう、普通転移魔法って、発動したら追跡とか無理なんじゃよ。ましてや術が完全に発動して空間が閉じた状態を、無理やりこじ開けて引きずり出すとか絶対無理なんじゃよ?」


「そ、そうなの……?」


「そうなんじゃよ」


 いや、ちょっと難しいけど、無理って事はないよ。

 そもそも空間を開いて転移するんだから、開き直す事が出来るのは当然の事だからね。


「で、誰にやられたの?」


「……」


 二人の視線が僕に集まる。


「……あの人、一体何者なの?」


「儂が知りたい」


 それにしてもここはどこだろう?

 周囲の光が見えない密室、いやかなり広い空間だ。


 そして遠くの壁に見えるのは、巨大な扉。

 この広さと扉の大きさから、普通の部屋と言うよりは、城のホールか、教会の礼拝堂みたいな多くの人が集まる空間なんじゃないかな?


「あの、あれって何でしょう? 祭壇みたいなのがいっぱいありますけど……」


 そう呟いたノルブさんの指さした方向を見れば。そこには四方に柱の立った祭壇のような物があった。

 しかもその祭壇は一つじゃなく、無数に、法則性のある並び方で存在していた。


「あれってもしかして……」


 あれは見覚えがある。 僕の知ってるそれと多少形式は違うみたいだけど、その用途は一目瞭然だ。あれは……


「転移ゲートだ」


 その言葉を口にしたのは僕ではなくガンエイさんだった。


「転移ゲート? アレが全部?」


「ああ、間違いない、転移ゲートだ。と言う事はここは……」


 ガンエイさんが周囲を見回して確信を深めた表情になる。


「ここは儂等が向かう筈だったグランドゲートだ!」


 なんと、転移痕を辿ってやって来た場所は、僕達のもう一つの目的地、グランドゲートだったんだ。

ニュー馬車( ;゜д゜)「な、何とか耐えきれた……」

旧馬車((((;´゜Д゜)))「俺だったら内側から破裂して死んでいた……(ガクブル)」

ガンエイ(・ω・;)「ねぇ儂(グランドゲートを探す為に)ついて来た意味あった?」

モフモフ_Σ(:3 」∠)_「無かったね」


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魔法世界の幼女に転生した僕は拗らせ百合少女達に溺愛されています!?
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― 新着の感想 ―
[気になる点] もしレクスの正体が三次元人ではなく四次元以上の高次元空間の住人なら、話は早いと思うけどな…
[気になる点] 途中、何ヶ所かハシュドとハシェドが混ざってますね。 ハシェドは3カ所くらいだったから多分ハシュドが合ってるのかな?
[一言] ガンエイさんの仕事は、あっさりやらかすレクスのトンデモの解説役(周りの誰も凄い事だとも理解しないからね(笑)) 先は長いしまだまだ案内役としてガンエイさんは役立つよwww
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