第304話 最大の敵
作者つД`)・゜・「はぅーん! 取材期間中に買った電子機器がまた不良品だったー!」
ヘルニーヾ(⌒(ノ-ω-)ノ「取材前(前回)と取材帰り(今回)に買った品が不良品だったと言う事は、次は取材中に買う品の番か……」
ヘイフィー_(:3 」∠)_「割と本気で怖いよぅ、っていうか買い替えたばっかのスマホの過熱がもう……なお、お店までの往復の交通費で足が出るので返品しにいくだけ無駄という……メーカーに返品手続きをするのもめんどい」
作者_(┐「ε;)_「高額商品でないのだけが不幸中の幸いか……」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
準々決勝に勝利したカロックさん達は、準決勝に挑んでいた。
「キャーッ!」
「おおーっと! 食材のデミッドシケイダがリレッタ選手に襲い掛かったぁーっ!?」
準決勝ではまたしても運営が用意した食材を使う試合だったのだけれど、なんと死んだと思っていた食材が生きていたんだ。
「はぁっ!!」
「しかしカロック選手、これを難なく撃退&解体! これは危ない所でした」
進行役の人の言う通り、カロックさんは慌てることなく飛んできた蝉の魔物からリレッタちゃんを守りつつ返り討ちにする。
「ありがとうお兄ちゃん!」
「気にするな。それよりも急ぐぞリレッタ!」
「うん!」
カロックさんは調理を再開しつつも、再びリレッタちゃんが死んだふりをしていた食材に襲われない様に注意を払っている。
その懸念は正しく、リレッタちゃんだけじゃなく対戦相手の助手の人達も死んだふりをしていた食材の不意打ちを避け損なって怪我をしていた。
「デミッドシケイダの死んだふりはプロの冒険者でも騙される事があります。しかし会場に来るまで誰も気づかなかったとは……」
解説役を兼ねている審査員の人達も今度はどの食材が動き出すかとヒヤヒヤしている。
「危ない所でしたな。幼い少女は世界の宝ですから無事でよかった」
「警備員、そこの審査員を連行してください」
「放せーっ!!」
幼いリレッタちゃんが危ない目に遭った事でヒートアップしていた審査員の一人が医務室に連行される一幕があったけれど、試合は順調に進んでいく。
「おーっと、またしてもマクロゴー亭の助手が死んだふりをしていた食材に吹っ飛ばされたーっ!」
「彼の安否が気になりますねぇ」
「これ、本当に料理大会なのかしら……」
吹き飛んだ助手の人を心配そうに見ながらリリエラさんが困惑した表情を浮かべている。
「そうですか? 生きた魔物食材と戦う事から始める料理大会よりは安全だと思いますけど?」
「もう料理大会じゃないと思うけどそれ!?」
いやいや、前世の時代には生きた食材魔物が試合会場に放たれるような料理大会はザラだったからね。
あの時は『食材は新鮮なのが一番、だったら生きている食材をその場でシメて調理するのが最高に新鮮な料理だ!』って大会主催者が真顔で言うんだもん。
しかも料理人達も『全く以ってその通り』って頷いていたんだからこの人達正気!? って思ったもんだよ。
そんな大会に人手が足りないからと助手役として無理やり連れて行かれた時は、本当に死ぬかと思ったなぁ。
しかも調理中にも狩られなかった食材が襲ってきたし。
それに比べればこの大会は本当に安全な大会だよね。
お客が巻き添えを喰らって魔物に食べられたりしないんだもん。
「おおーっと! なんとカロック選手、魔法で魔物の体を絞って脂を採取しています!」
「本来ならもっと小さくカットしてから道具で絞り出すのですが、まさか魔法で脂を抽出するとは驚きです」
カロックさんはビチビチと跳ねる食材魔物から油を搾り、植物魔物の葉を叩いて薄くすると、それを漏斗にして脂を流し込む事で濾した脂が染み出てくる。
更に濾すスピードを上げる為に、上から風魔法を使って空気の球を押し付けているね。
あの葉っぱ漏斗を使う事で、生物脂特有の生臭さを取る事が出来るんだよね。
◆
「調理終了! それでは試食タイムに入ります!」
どちらの選手も危なげなく調理を終了し、試食タイムに入った。
「カロック選手は揚げ物メインの調理ですか」
「サヴァーサワーは体に良く爽やかな味わいの脂が多く採取出来ますからね。ただ欠点としては生臭さがある事が難点なのですが、漂ってくる香りからはそれもありません。上手く臭みを消したのでしょう」
「対するマクロゴー亭の料理長ザイゼン選手は煮込み料理ですね」
「マクロゴー亭はじっくりと時間をかけて味を染み込ませた料理が売りの料亭だ。今回の食材も準々決勝同様運営の用意した食材を会場で調理するルール故、本来の実力が出せるか興味深いな」
試食前から絶賛されているカロックさんに対し、マクロゴー亭は厳しめの評価だった。
成程、お店の調理スタイルによって有利不利があるんだね。
熟成を加速させる大型の時間加速魔法は店舗用の大型なんだろうな。
それに一流料亭が使う装置ともなれば、刹那の時間すら調節できる特注品だろうし。
だから大会会場には持ってこれず、本領を発揮できないって訳か。
有名店だからといって、必ずしも大会で有利とは限らないんだね。
「勝者、カロック&リレッタ選手!」
「「「おおおぉぉぉぉぉっ!!」」」
カロックさんの勝利宣言に会場が沸きたつ。
「これは両者の得手不得手がはっきり出た形ですね。カロック選手の揚げ物はサクサクとした食感が素晴らしく、それでいて脂のベタつきがまったくありませんでした。揚げ物は揚げた瞬間から劣化が始まり、秒単位で衣の触感が悪くなっていくので、高級な店では料理人が客のすぐ傍で一品ずつ揚げ、揚がっては食べると言ったスタイルが基本です。ですがカロック選手の揚げ物は大会のルールもあって全て揚げ終えてからの試食開始でした。にもかかわらず、一つ一つの味を堪能しながら全品を食べ終えるまで食感が維持されていました。これは素晴らしい技術ですよ」
審査員の人は興奮気味に早口でカロックさんの揚げ物を絶賛している。
「対してザイゼン選手の料理は短期間で食材に味を染み込ませる工夫が凝らされていて流石は老舗料亭と唸る出来栄えだった。ただ惜しむらくはその工夫の所為で食材がほどけ易くなってしまい、マクロゴー亭本来の味わいを損なってしまったと言う事か」
「つまり準決勝の試合ルールによって敗北を喫してしまったと?」
進行役の人の言葉に審査員の人が頷く。
「特別ルールは大会を盛り上げる為のものであり、また地元故に色々と有利な店が勝利を独占出来ない様にする為のハンデでもある。現に準々決勝ではカロック選手が使い慣れた包丁を折ってしまい、複数の包丁を扱いが必須となる試合ではやや不利だったと言えるだろう」
「成る程、トラブルに対処する事も含めて一流の料理人と言う事ですね」
二人の会話に観客席から成る程、ただ美味い店ってだけじゃ試合には勝てないんだなと感心する声が聞こえてくる。
「さぁ次はとうとう決勝戦! 一体どんな素晴らしい料理が飛び出す事か! 今から楽しみですね!」
◆大会運営委員◆
「何であんなルールにしたんだ! お陰でウチの強みを活かせなかったじゃないか!」
試合に敗北したザイゼンが、会議室に入って来るなり怒鳴り込んできた。
「じ、事故に見せかけてあの男を離脱させる予定だとあらかじめ言っただろう!」
そう、準決勝ではわざと殺さず気絶させた魔物食材を使う事で、事故に見せかけてあの小僧を負傷させ、リタイアさせるつもりだったのだ。
「その割には全く役に立たなかったじゃないか! お陰でウチの従業員が何人も大怪我して治るまで店の運営が滞るじゃないか! この件は正式に訴えて従業員の治療費に当てさせてもらうぞ!」
「ふざけるな! 妨害の件はお前も納得しただろうが! 大体怪我なんてポーション回復魔法で治るだろ!」
まったく自分も同罪の癖になんて図々しい奴だ。
「なぁ、もう余計な事はせずにまともに戦った方が良いんじゃないか?」
すると運営委員の一人がため息を吐きながらそんな事を呟いた。
「もう次は準決勝だ。寧ろここまで来たら余計な手出しをせずに戦うべきだろう。いっそ一回くらいは優勝させた方が大会の公平性をアピールできて、我々が談合をして上位を独占しているという疑いを晴らす役に立つんじゃないか?」
「そうだそうだ! 危うくリレッタちゃんが怪我をするところだったんだぞ! 卑怯な真似は止めにするべきだ!」
「し、仕方ないだろう。まさかあの男があそこまで強いとは予想外だったんだ。あとソイツはつまみ出せ!」
まったく忌々しい。あの小僧の試合を見続けた所為で、我々の中にまであの小僧に肩入れするような奴らが現れて来た。
お前達だって我々に味方する事で利を得ていただろうに。
あとなんか変なのも交じっていたがお前の場合は違う理由だろ。
「確かに、あれは予想外だった。魔物料理人にはある程度戦える者も居るが、それでも本業の冒険者と比べれば見劣りする。だがあの小僧の腕は一流の冒険者に匹敵する強さだ」
「どういう事だ? 道中に襲わせた部下達の報告では為す術もなく襲撃を受けたと聞いたぞ? 護衛頼りじゃなかったのか?」
確かに道中を襲撃した部下の話では大した事のない相手で容易に食材を奪う事が出来たと言っていた。
明らかに大会での姿と異なり過ぎる。いや、正しくは途中から別人のようになったと言うべきか……
「もしかしたら実力を隠していたのかもしれんな。わざと襲われたフリをして、我々に他愛なしと油断させるつもりだったのやもしれん」
「宿に預けた食材を容易に盗ませたのも、いつでも食材を用意できるという余裕の証という事だったのでは?」
まさかあの小僧にそんな知恵があったと言うのか!?
「おのれ忌々しい! 何とかならんのか!」
ままならぬ事態が続き、委員達は苛立ちを隠しもしなくなっていた。
「安心しろ皆の衆、既に対策は練ってある」
だが、その中で私だけは冷静さを失わずにいた。
「ほう? これだけ失敗してもまだそんな事が言えるのか? 認めたくないが、あの小僧は料理人としても食材狩りとしても一流だぞ?」
「ふん、ならばその力を発揮できなくしてやればいい」
「食材の再奪取も妹の誘拐も失敗したぞ?」
確かにな。力づくでの妨害はどれも失敗した。
なら、力づくでなければよいのだ。
「そうではない。もっと単純に、奴が勝てない者を呼べばよいのだ!」
「「「奴が勝てない相手?」」」
そう、あの小僧がどれだけあがいても勝てない相手を宛がえばよいだけの話よ!
◆
「それにしても準決勝は偽死や仮死を行う食材が多かったですね」
試合が終わった僕達は、試合の感想を話し合いながら宿への帰り道を歩いていた。
「しかも殆どの食材が生きてたわよ。相手の選手達が被害を受けてたくらいだし」
うん、凄く活きが良かったよね。
まるで直前まで眠っていたかのようだったよ。
「マクロゴー亭は大会を牛耳っている店の一つという話だったが、あれだけ巻き込まれていた様子を見るに、食材が生きていたのは偶然だったのかな?」
「うーん、何とも言えないわね。私達の疑いから逃れる為とも考えられるけど」
「だが、今回の試合ルールで相手は自分達の店の強みを活かせなかった。そう言う意味では正々堂々と勝負してきたと俺は思うぜ」
カロックさんはマクロゴー亭が不利な状況にも関わらず工夫を凝らして試合に挑んできた事を高く評価していた。
「そうですね。本当に卑怯な手段を使うつもりなら、自分達の得意な調理法を捨てるような戦い方をしたりはしないでしょうしね」
僕もカロックさんに同意だ。
多分だけど、魔物に吹き飛ばされていた助手達はお店の新人だったんじゃないかな?
経験の少ない新人を、治療体制が万全で安全な試合会場に連れて行くことで大舞台の立つ経験と今回のように不意を打って来る魔物食材の危険さを教えるのが目的だったんだろう。
料亭ともなると常連が味の確かさを知っているだろうから、試合での敗退を気にすることなく大胆に新人教育に利用出来たんだろうね。
料理人と言うだけじゃなく、経営者としても優秀な人だと思うよ。
「うーん、そうなのかなぁ……?」
「ともあれ次はとうとう決勝戦だ!」
終わった準決勝よりも、次の試合の方が重要だとカロックさんは、拳を握りしめる。
「確か次はリストランテプルーメね」
「あれ? 大会を牛耳ってるとかいう旅館スタッカートはどうなったんですか?」
確か町の有力料理店は3つか4つだったよね?
「そっちはプルーメに負けたみたいよ」
ああそっか。大会なんだからお互いに喰い合う事もあるよね。
ドラゴニアで参加した龍帝の儀でも僕とノルブさんが対決する羽目になったもんなぁ。
「相手は大会優勝候補。卑怯な手段を使わなくても店の実力は確かだ。相手にとって不足はないぜ!」
「ほほう、それは頼もしいな」
「「「「え?」」」」
「キュ?」
突然の聞き覚えの無い声に、思わず僕達は素っ頓狂な声を上げてしまう。
声のしてきた方を見れば、そこにはフードを目深にかぶった人物の姿があった。
「誰だアンタは?」
怪しげなフードの人物にカロックさんはリレッタちゃんを庇う。
「ふふっ、誰だと来たか。暫く会わない間に随分と恩知らずになったじゃないか」
「何だと!?」
どういう事だろう? カロックさんに覚えはないみたいだけど、フードの人物はカロックさんを知っているみたいだ。
「何が恩知らずよ! それを言ったらそっちは顔も見せない礼儀知らずじゃないの!」
「ふっ、ははっ、妹の方は口ばかり達者になったようだな。だが良いだろう」
リレッタちゃんが噛みつくと、フードの人物は笑いながらフードを外す。
「なっ!? アンタは……っ!?」
「えっ!?」
そして、その姿を見たカロックさん達が凍り付いた。
「師匠……!!」
「久しぶりだなカロック」
なんと、その正体はカロックさんの師匠だったんだ。
モフモフ_Σ(:3 」∠)_「師匠!?(今更)」
デミッドシケイダΣ(゜ω゜ノ)「勝てるのか!?(師匠が)」
モフモフ_Σ(:3 」∠)_「なお、前世の大会で魔物に食われた観客はスタッフが救出蘇生したので無事です」
デミッドシケイダ(ノ∀`)「ただ観戦するだけなのに過酷過ぎる……どんな修羅の時代なの?」
モフモフ_Σ(:3 」∠)_「ご主人が自称普通の時代なので……」
デミッドシケイダ(;^ω^)「(絶対自称だ……)」
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