第292話 魔物食材採取
作者_(:3 」∠)_「商人勇者は異世界を牛耳るコミック7巻と二度転生9巻が発売ですよー!」
ヘルニー(○´∀`)ノ「発売を待ってくれていた皆ありがとー!」
ヘイフィー ٩(ˊᗜˋ*)و 「10巻もよろしくねー!」
いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!
皆さんの声援が作者の励みとなっております!
「やはり野菜が欲しいな」
昼食を食べ終わり、後片付けをしていたカロックさんがぽつりとつぶやいた。
「野菜ですか? 手持ちにありますけど」
「あ、いや、普通の野菜じゃなく魔物野菜の事なんだ」
「魔物野菜?」
聞き覚えのない名称だったのかリリエラさんが首を傾げる。
「野菜の魔物の事さ」
「野菜の魔物!? そんなの居るの!?」
「マンドラゴラとかの事ですよ」
「えっ!? あれって野菜だったの!?」
マンドラゴラも野菜魔物だったと知ってリリエラさんが目を丸くする。
「薬草も野菜も人が口にして大丈夫なモノという意味では同じだな」
「魔物野菜は独特の癖があるけど、ちゃんと調理するとすっごく美味しくなるんですよ!」
「へぇ、初めて聞いたわ」
うん、魔物野菜は普通の野菜に比べると滋養も高く、旨味も段違いなんだよね。
魔物野菜のフルコースは普通の肉料理よりも満足度が高いと言われる程だしね。
「まぁ魔物野菜を捕らえて調理するよりも普通の野菜の方が手っ取り早いからな。普通の人間は滅多に食べる機会が無いだろうさ」
そうなんだよね。美味と言われる魔物野菜なんだけど、アク抜きなんかの手順が普通の野菜と違うから、ちゃんと調理手順を知ってる人が作ったモノじゃないととても食べられたものじゃないって欠点もあるんだ。
「でも大会のルールは魔物食材を使う事だから、やっぱり野菜魔物が欲しいの」
そっか、料理大会なんだから肉以外の食材も重要だよね。
確か塩以外の調味料も魔物食材が必要なんだっけ?
「幸い目的地までの途中に野菜魔物が多く生息する森がある……んだが」
と、そこでカロックさんが申し訳なさそう目でこちらを見つめてくる。
「僕達は別に構いませんよ」
「いや、それがだな……」
「私達を襲ったアイツ等が森で待ち構えているかもしれないのよね」
言いよどむカロックさんの言葉を繋げたのはリレッタちゃんだった。
そう言えばカロックさんの治療を優先してあの賊は逃しちゃったっけ。
「連中の目的は俺達に大会を諦めさせることだからな。俺達が諦めていないと知ったら当然食材を補充する為に森に入る事は予測しているだろう」
「つまり魔物だけでなく邪魔をしてくる連中にも気をつけないといけないって訳ね」
なら自分達は採取よりも護衛に専念した方がいいとリリエラさんが頷く。
「それだけじゃない。魔物野菜自体も捕らえるのはかなり困難で、あまり時間をかけると大会の参加申し込みに間に合わなくなるかもしれないんだ」
と、カロックさんが魔物野菜の採取の困難さを語る。
「すまない、聞かなかったことにしてくれ。命を助けて貰った上にこれ以上迷惑をかける訳にはいかない。罠も用意せずに魔物野菜を捕らえるなんてやはり無茶だ。提供して貰った肉だけで何とかやってみるさ」
ふむ、どうやらカロックさん達の欲しがっている魔物野菜は採取が大変なものばかりみたいだね。
でもそれなら……
「いえ、森に行きましょう」
食材の採取を撤回したカロックさんに対し、僕は採取に行こうと告げる。
だって僕達は冒険者だからね。
たまには普通のお宝以外の物を求めて冒険をするのも良いだろう。
「え? いや、だから森に行くのは危険なんだぞ!?」
「僕達は冒険者ですから、期限内に魔物を討伐したり素材の採取をする仕事は何度も経験があります。それに護衛依頼を受けたことがありますから、お二人を守る事も出来ますよ。リリエラさんはどう思いますか?」
僕はリリエラさんの意見も聞いてみる事にする。
でもきっとリリエラさんなら反対したりはしないだろう。だって彼女も筋金入りの冒険者なんだから。
「レクスさんが居るなら何も問題ないと思うわ。それにウチにはモフモフも居るから、森の中で魔物の気配を察知する事も出来ると思うわよ」
予想通りリリエラさんも僕の意見に賛同してくれた。
だよね、折角美味しい魔物食材料理にあり付けるんだ。カロックさんの腕前を知ったなら、ぜひ味わってみたいと思うよね。
「「……」」
カロックさんとリレッタちゃんはお互いに不安そうな眼差しで顔を見合わせていたけれれど、すぐに気を取り直したのか決意を込めた目で僕達に視線を戻す。
「すまない、迷惑をかける」
「ありがとうございます!」
カロックさんとリレッタちゃんが深々と頭を下げて僕達に感謝の言葉を告げる。
「気にしないでください。僕達は美味しいご飯が食べたいだけですから。食材が増えればおかずの数が増えるでしょ?」
「ははっ、そうだな。なら沢山食材を確保して豪勢な夕飯にしようか!」
「「「おおー!」」」
「キューッ!!」
こうして僕達は魔物野菜を採取する為に森へ向かう事にしたのだった。
◆
森にやって来た僕達は、刺客の襲撃を警戒しつつも森の奥へと足を進める。
そしてしばらく進むと、何か小さな生き物の姿を見つけた。
「おっ! 走りドラゴラだ!」
「走りドラゴラ?」
それは細い大根に手足が生えたような植物で、森の中を綺麗なフォームで手足を動かして疾走していたんだ。
「マンドラゴラの亜種だ。普通のマンドラゴラは地面に埋まっているが、アイツは常に走っているんだ。その為に体内の魔力を消費して魔術的な価値はないが、その分体が引き締まっているから食材としては最高なんだ」
「野菜なのに体が引き締まってるの!?」
「よし捕まえるぞリレッタ!」
「うん!」
リリエラさんのツッコミをスルーして走りドラゴラの捕獲に向かうカロックさん達。
けれど走りドラゴラは二人の包囲を華麗に回避してその脇をすり抜ける。
「うわ早っ!?」
「お兄ちゃん、やっぱり罠を仕掛けないと無理だよ!」
「くっ、やはり森の中は小回りの利く奴の天下か!」
二人の手を軽々と逃れてかけ去る走りドラゴラが森の奥に消える瞬間にこちらを振り向く。
気のせいか何も書かれていないその顔には「フッ」という勝利の笑みが浮かんでいたように見えた……次の瞬間。
「キュウ!」
「ッ!?」
木の上から降って来たモフモフによって走りドラゴラはあえなく捕まったのだった。
「キュッキュッ」
逃げ回る走りドラゴラに狩猟本能を刺激されたのか、モフモフはご満悦だ。
「よくやったねモフモフ」
「やるじゃない」
「走りドラゴラを捕まえるなんて大したもんだ」
「凄いよモフモフちゃん!」
「キュッキュッ!」
皆が褒めると、モフモフは満面の笑みを浮かべ……走りドラゴラに齧りついた。
「「「「あーっ!」」」」
ちょっ!? 駄目じゃないか食べちゃ!!
「……ウグギュウッッッ!?」
けれど次の瞬間、モフモフが物凄い顔になる。
「キューッ! ペッペッペッ!!」
あれ? いつもなら大喜びで獲物を食べるのに……もしかしてモフモフって野菜が苦手なのかな?
走りドラゴラを放り出したモフモフは口に残った走りドラゴラの果汁? を吐き出すべく唾を吐き続けている。
「勝手に食べるからだよ。すみませんカロックさん。せっかく捕まえたのに」
「いや、この程度なら齧った部分を取り除けば大丈夫だ。寧ろこれだけ活きの良い走りドラゴラを採取出来た事の方がありがたい」
良かった。怒ってないみたいだ。
「よーし、それじゃあ他の食材も捕まえましょう!」
「「「おおー!!」」」
次に現れたのは葉っぱをクルクルと回転させて空を飛ぶ魔物だった。
「気をつけろ、アイツはソーサースピニッチ、全身の葉を広げて刃のように獲物を切り裂いて血を吸う青葉野菜魔物だ!」
「何か物騒過ぎない!?」
ソーサースピニッチの物騒な性質を聞いたリリエラさんが悲鳴をあげる。
「キュウ!!」
そこにモフモフが駆け出し、宙を舞っていたソーサースピニッチに噛みつくと空中で体を横に振り回す。
勢いよく振り回されたソーサースピニッチの本体はちぎれ飛び、地面に強く叩きつけられると動かなくなった。
「よーし、よくやったぞモフモフ。コイツを捕まえる時はポーションが必須だから助かったよ」
「モグモ……ペッペッ!!」
カロックさんに褒められて得意満面なモフモフは口の中に残った葉っぱの一部を咀嚼するんだけど、すぐにペッペッと吐き出す。
「ほうれん草はアク抜きしないとキツイからなぁ」
モフモフが涙目で野菜を吐きだしていると、今度は黄銅の様な光沢の球体がゴロゴロと転がりながらやってきた。
「あっ、メタルオニオンだよお兄ちゃん!」
「アイツの表皮は鉄並みに堅いから気を付けてくれ! それと……」
「ガブギュウ!!」
カロックさんの説明が終わる前にモフモフが口直しとばかりにメタルオニオンに飛びかかる。
そして鉄並みに硬いと言われた表皮を易々と牙で貫く。けれど……
「キュウ~ン!?」
突然モフモフが涙を流しながら転げまわりだしたんだ。
「中身まで傷つけてしまうと物凄い刺激物が放出されてああやって涙が止まらなくなるんだ。まぁ味に問題はないんだが」
あー、タマネギを切ると目に染みるもんね。
モフモフが涙を流して転げまわってくると、今度は森の奥からオレンジ色の小さなものがバシュッという音と共に飛んできた。
「ちょっ!? 何かオレンジ色のモノが飛んで来たわよ!?」
「アレはキャロケットだよ! 葉っぱがタコみたいな足になってて、物凄い勢いで横に跳躍する事で矢のような勢いで襲ってくるの!」
「ねぇ、本当に野菜なの!? 殺意高すぎない!?」
キャロケットと呼ばれた魔物は葉を鳥の翼や矢の羽根のように調整して射線から外れようと回避する僕達に照準を合わせてくる。
なかなか器用な魔物だなぁ。
「葉っぱを切り取って跳べないようにしてくれ!」
「ギュウ!!」
飛んでいる姿に再び狩猟本能を刺激されたのか、モフモフが空中でキャロケットを咥えて噛み砕く。
「ギュウン!?」
するとモフモフはペッペッとキャロケットを吐きだした。
「あ~、そのままだと子供は苦手かもしれん」
普通の人参も子供は苦手だもんねー。
「リリリリリリリッ!!」
「何か物凄くやかましいのが来たんだけどー!?」
次にやって来たのは緑色をした林檎を細く歪ませたような野菜、つまりピーマンだった。
「アレはヘルベルペパーです! 中の種を鈴のように鳴らせて物凄い騒音を出すんです。近づくと耳がやられるから気を付けて! 遠くから弓か魔法で……」
「キューッ!!」
「あっ、逃げた」
再び野菜魔物に向かうかと思ったモフモフだったけど、今度は一目散に逃げ出したんだ。
「まぁアイツはかなり苦いからな。なんとなく察したんだろう」
まぁピーマンだしね。僕達は魔法で遠距離から壊し過ぎないようにダメージを与えてヘルベルペパーを倒す。
「ふぅ、だいぶ食材を確保しましたね」
そうこうしている間にも野菜魔物は結構な種類が集まっていた。
「ああ、これだけあれば大会に使うには十分だ」
よかった。これで食材集めは完了だね。
「ギュルゥ……」
そんな中、一人モフモフだけは不満そうにふてくされていた。
まぁ倒した魔物が全部キツい味の野菜ばかりだったからね。
「あー、お前には色々と助けられたし、夕飯は美味い肉料理をご馳走してやるよ」
「ギュウ!」
カロックさんの言葉にえ? ホント? とキラキラした顔になるモフモフ。
「ああ、美味い野菜料理も作ってやるからな」
「シッ」
けれど野菜料理という言葉を聞いた瞬間、モフモフが顔をしかめて後ろ足でカロックさんの足を蹴る。
モフモフ、そんなに野菜魔物達が苦かったんだ。
と、その時だった。
森の奥から木々が倒れる音が響いてきたんだ。
「何だ!?」
音と共に木々を倒す振動がどんどん近づいて来る。
そして森の奥から姿を現したのは、家ほどもある巨大な大トカゲだったんだ。
「あれはテイルドラゴン!」
「ドラゴン!? あれもドラゴンなの!?」
カロックさんの言葉にリリエラさんが声をあげる。
「いや、ドラゴンの名は付いているが、オオトカゲの一種だ。アイツは素材としての価値も食材としての価値がほとんどないが、尻尾の肉と骨だけは絶品の食材なんだ」
と、カロックさんはテイルドラゴンも食材になる事を説明する。
「ただかなり獰猛な魔物だから倒すのは困難……」
「ギュウゥゥゥゥゥゥゥ!!」
その時だった。モフモフがそれはもう猛烈な勢いでテイルドラゴンに突撃したんだ。
「グワォッ!?」
あまりの勢いにテイルドラゴンが動揺する。
「キュシャァーッ!!」
その隙を逃さず、モフモフがテイルドラゴンの首元に噛みつき、魔力を宿した鋭い爪で首を一刀両断に切断したんだ。
「グワァォーンッッ!?」
哀れテイルドラゴンは何もする事無くモフモフに狩られてしまったんだ。
「一瞬だったわね」
「よっぽど肉に飢えてたんですねぇ」
ずっと野菜狩りばかりだったからなぁ。
「キュフフゥ。ア~……」
「あっ」
止めようとする間もなくモフモフが口を大きく開き……
「ン、カプッ!」
テイルドラゴンの尻尾に噛みついた。
「…………」
ただ、それっきりモフモフは咀嚼するわけでもなく動きを止める。
そして真ん丸な目がゆらゆらと揺れ、顔がドンドン赤く染まってゆくと。
「ギャキュゥゥゥゥゥゥゥゥンッッッ!?」
尋常でない様子の森の中にモフモフの悲鳴が響き渡ったんだ。
「モフモフっ!?」
「どうしたの一体!?」
モフモフは真っ赤に腫れた舌をつき出しながらゴロゴロと地面を転げまわる。
「……テイルドラゴンは通称で、正式にはスパイスドラゴンというんだ。肉も骨も殆どが使い物にならないが、唯一尻尾と尻尾の骨だけが極上の香辛料になる調味料魔物なんだ」
「「それってもしかして……」」
「ああ、とても辛い」
「「ああ~」」
僕達は悲鳴を上げてのた打ち回るモフモフに視線を向ける。
「キュウンキュウンッッッ!?」
そりゃ香辛料を齧ったら口の中が大変なことになっちゃうよね。
モフモフ_:(´д`」∠):_「踏んだり蹴ったり」
食材魔物_(:3 」∠)_「イエーイ一矢報いたぜー」
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