第109話 影の絶望
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逃げた魔人にマーカーを打ち込んだ僕は、亜空間を脱出して元の世界へと戻ってくる。
亜空間で経過した時間は極々僅かだったみたいで、周囲はさっき倒した魔物達で埋め尽くされている。
後方にいた魔物達は距離が離れていたおかげで、先ほどの攻撃の直撃を避けていたらしい。
ダメージはあるもののまだまだ戦えそうだ。
「よっと!」
身体強化魔法で足を強化した僕は、跳躍して上空から戦場を見回す。
門のあたりは冒険者さん達が追い払ったんだろう、魔物の姿はなかった。
今はこちらに向かってくる魔物達を追撃する形で前進している。
「ん? 何だ? あっちの魔物達が変な動きをしているぞ?」
よく見ると、町を守る防壁の外、丁度門の正反対あたりにいる魔物の群れが、動いたり進んだり戻ったりを繰り返したり、時折突然あらぬ方向に移動したりしていた。
「あれは一体なにを……あっ」
その奇妙な動きに首を傾げた僕だったけれど、魔物達の群れの手前で、白くて丸いモノが動き回ってる事に気づいた。
「モフモフのしわざかぁ」
そう、魔物達が止まった先にはモフモフが居たんだ。
モフモフは魔物達に襲い掛かり、魔物達は慌ててモフモフから離れようとするんだけど、すぐにモフモフが反対側に回り込んでその動きを止める。
どうやら魔物達はモフモフから逃げようとしてあっちへ行ったりこっちへ行ったりしていたみたいだ。
そして逃げ遅れた魔物から順番にモフモフの餌食になっていった。
「うん、あの魔物達はモフモフに任せておけば良さそうだね。良い運動にもなるだろうし」
でも今夜のご飯は少なめにしておこう。
食べ過ぎて太ったら大変だからね。
「でもそれ以外の魔物達は全部こっちに向かってきているな。やっぱりさっきの魔人が魔物達に命じてこっちに集まるよう、指示を出していたみたいだね」
戦いが始まった直後、僕は魔物達の包囲網を分断する為に魔法でいくつもの壁を町の周囲に作った。
その壁に進行を阻まれていた魔物達が、壁を迂回してこちら側に向かってきていたんだ。
「でもなんで包囲を解いたんだろうね?」
うーん、破壊しようとしていた防壁が、魔法で強化されている事に気付いたからかな?
時間がなかったから、そこまで強い防御魔法をかける事は出来なかったけれど、今回集められた魔物達は数ばかりでたいして強くない雑魚ばかりだった。
だから壁を壊すには戦力を集中して、一点突破をした方が良いと考えたんだろう。
一枚板の分厚い壁を壊すよりは、開く為に稼働する門の方が構造的に破壊しやすいもんね。
それに大して強くない魔物でも、犠牲を考えず数を頼りに突っ込んで来たら、迎撃しきれなかった魔物達が門を突き破って町の中に侵入してしまうかもしれない。
それはちょっと良くないね。
「けど、それなら魔人が直接出てこなかったのは何故なんだろう?」
僕なら魔物を囮にしておいて、自分達で確実に門なり壁なりを壊すけどなぁ。
「うーん、それも何かの作戦なのかな?」
まぁそれも後で逃げた魔人を捕まえればわかる事かな。
「今は今出来る事をしようか! ハイエリアマーシュバインド!」
大分近づいてきた魔物の群れの第二陣に向かって、僕は広範囲拘束魔法を放った。
すると突如魔物達の足元が水浸しになり、そのまま底なし沼となって引きずりこんでゆく。
ハイエリアマーシュバインド、これは広範囲に底なし沼を作って対象を足止めする魔法だ。
魔物達は深い泥に足を取られてまともに歩けなくなり、体の半分以上が沈み込んだところで泥は水気を失って再び土の地面へと戻った。
「向こうの魔物達も……っと!」
そして別方向から向かってきた残りの魔物の群れも全て拘束すると、丁度こっちに向かってきていた冒険者さん達が到着する。
「な、なんだこりゃあ⁉︎ 魔物の群れが地面に埋まっちまってるぞ⁉︎」
魔物達と戦う為にやってきた冒険者さん達が、拘束された魔物達を見て驚きの声を上げる。
「お、おい坊主、お前が魔法でやったのか?」
まぁ広範囲拘束魔法なんて、あんまり使う人のいないマイナー魔法だからなぁ。
僕の知り合いも拘束するくらいなら一瞬で全滅させようぜって人達が多かったし。
でも今の僕は英雄ではなく冒険者だ。
なら倒した魔物の素材を高値で売れる様に、なるべく魔物の商品価値をおとさないようにしないとね。
さっきは町を守る事を優先して範囲攻撃魔法を使っちゃったけど、これまでの戦いでそこまで強い魔物は居ないと分かったからね。
「はい、数が多かったので魔法で拘束しました。僕はまだやる事がありますので、トドメを刺すのは皆さんにお任せしてかまいませんか? 」
「そ、そりゃ構わんが……良いのか!? 手柄を取っちまうことになるぞ!?」
僕が拘束した魔物を倒しても良いと言われ、冒険者さん達が色めき立つ。
まぁ何も知らない人から見たらわざわざ魔物を縛って差し出されたようなものだからね。
「ええ、見ての通りたくさん居ますからね。一人で全ての魔物にトドメを刺したうえ、素材の剥ぎ取りまでしていたら時間がいくらあっても足りませんから」
まだ魔人の事もあるしね。
回せる仕事は別の人達に任せるべきだろう。
「な、成程な。確かにこれだけの魔物を一匹ずつ仕留めてたら日が暮れちまうぜ」
「……分かった。この魔物達は俺達が引き受ける。あんたはやる事ってのを済ませると良い」
流石冒険者さん達は話が早くて良いね!
これが前世の騎士団とかだと手柄の奪い合いとかで無駄な時間を取られたんだけど。
「安心しな、お前さんが魔物を拘束してくれた事はちゃんとギルドに報告するし、その分の分け前は貰えるように頼んでおくからよ!」
「え? いや別にそんな事までは……って、あなた達は」
その冒険者さん達の顔を見て僕は思い出した。
彼等は僕の解体教室に参加した冒険者さん達だ。
「アンタのお陰で俺達ゃドラゴンの解体の仕方を覚えられたうえに切れ味のいい武器も譲って貰えた。その分の借りは返すぜ!」
「そういうこった。俺達解体師も手伝うぜ。何せ魔物の解体は俺達の専売特許だからな!」
「「「そういうこった!」」」
見れば冒険者さん達だけでなく、町の防衛の為に参加した解体師さん達の姿もあった。
「皆さん……」
「よーっし! それじゃあ俺はあの魔物にトドメを刺すぜ!」
「あっ、手前っ!そりゃAランクの魔物じゃねぇか!」
「へへっ、相手はろくに動けないんだ、早い者勝……ぐはぁ⁉︎」
あっ、魔物に向かっていった冒険者さんの一人が魔物の尻尾にはじかれて吹き飛んだ。
「馬鹿が欲をかくからだ。足を封じられた状態でも攻撃できる魔物は多い! 気を付けて戦え!」
「「「おうよっ!」」」
やる事を決めた冒険者さん達の動きは早い。
皆一斉に魔物に群がっていった。
「尻尾での反撃に気をつけろ!」
「分かってるよ!だが普通に戦うよりもよっぽど楽だぜ!」
「そうそう、それに俺達にはこのドラゴンの鎧と槍があるからな!」
「もうこれ無しじゃ戦えねぇよ!」
「魔物を狩りまくって絶対この装備買い取るぜ!」
冒険者さん達は楽に勝てる魔物、反撃してくる魔物、足を拘束されても危険な魔物と自分達に合った魔物に向かっていく。中には自分のランクより上の魔物に攻撃をしかけてさっきの人みたいに吹き飛ばされている人もいる。
というか、ドラゴンの装備を買うならこんな間に合わせの品なんかじゃなくて、もっと良いのを買えばいいのに。
「さっきまで命懸けで戦ってたのに、まるでお祭りね」
と、そんな事を考えていたらリリエラさん達がやってきた。
「お疲れ様です。門は大丈夫でしたか?」
「ええ、途中から魔物達が攻めるのをやめてこっちに向かい始めたから、私達は逃げる魔物達の背中を攻撃する形になってだいぶ楽だったわ」
なるほど、魔人の方針転換で、リリエラさん達の戦いも楽になってたみたいだね。
「でも勿体ねぇなぁ。あれ兄貴の魔法だろ? なんでわざわざ他の連中に手柄を譲っちまうんだよ」
とジャイロくんは僕が魔物達の討伐を他の冒険者さん達に任せたのが不満みたいだ。
ちゃんと分け前は用意してくれるみたいなんだけどね。
「数が多かったからね。全部自分で仕留めるよりも、ここは任せて魔人を追う事を優先しようと思ったんだ」
「ああ、魔人なら仕方ないわよ……ね?」
「「「「「「って、魔人っ!?」」」」」
リリエラさん達がギョッとした顔でこちらを見てくる。
「何!? また魔人が出てきたの?」
ええ、またなんですよね。
「町が突然あんな大量の魔物の群れに襲われるなんて、おかしいと思ったのよ。魔人が関わっていたのね」
それなら理解できると皆納得の顔を見せる。
以前と比べると、皆慣れてきたなぁ。
「それで、これからどうするの?」
リリエラさんが僕にこの後の方針を聞いてくる。
「魔人の体に追跡用のマーカーを取り付けることに成功したので、姿を消して追いかけて、仲間と合流した所で纏めて叩き潰そうかなって思ってます」
「魔人を纏めて叩き潰す⋯⋯かぁ」
「普通に考えるととんでもない事言ってるんだけどねぇ⋯⋯レクスが言うと普通に出来る事のように聞こえるから、気をつけないといけないわね」
「「「「分かる」」」」
えっ! 別に魔人を倒す事は普通に出来ると思うよ!?
「でもそういう事なら私達はついていかない方が良いわね。姿を消すって例のアレでしょ? 私達は手を繋いでないといけないヤツ。以前の時の様に外で使うなら良いけど、もし逃げた魔人の隠れ家が狭かったら私達がついて行っても邪魔になるだけだわ。誰かがうっかり魔人とぶつかったら終わりだもの」
確かに、僕の魔法は仲間も一緒に姿を消せるように作った事で、触れた人を仲間認定してお互いを見る事が出来る様になっている。
だから接触してしまうと仲間でない人まで魔法に巻き込んじゃうんだよね。
魔人達の総数を確認する前に追ってきた事がバレたら大変だというリリエラさんの意見は確かに正しい。
「そうですね、まずは僕が魔人の逃げた先がどんな場所なのかを偵察してくるべきですね」
「レクスさんなら偵察がそのまま事件解決になりそうだけどね」
「「「「思う思う」」」」
さっきから何で皆してハモるのかなぁ?
「じゃあちょっと行ってきますね」
「ええ、私達はレクスさんが戻ってくるまで、残った魔物の始末を手伝ってるわ」
「よろしくお願いします!」
よーっし、それじゃあ改めて逃げた魔人の追跡にいこうか!
◆
「き、消えた……い、いや転移魔法……なのか⁉︎」
その光景を俺は見ていた。
人間、いや龍帝が不意に姿を消したのだ。
あれは間違いなく転移魔法だ。
だがありえん、今の人間共は過去の大戦で技術の大半を失った筈だ。
我等魔人ですら知恵の一族が最近になってようやく復活させた技術なのだぞ⁉︎
「これは……大変な事になった」
人間が転移魔法を使えるとなれば、俺達の戦略に大幅な見直しを図らなければならなくなる
そう、俺達魔人の再侵略計画に大幅な修正が必要になるかもしれんのだ。
「これはむしろ、龍帝の暗殺を失敗して正解だったのかもしれんな」
そうだ、龍帝の暗殺に失敗はしたものの、まだまだ龍帝を暗殺するチャンスはある。
それよりも人間共が転移魔法を持っている事を知る事が出来た事の方が重要だ。
もしこの事を知らずに再侵略計画を実行していたら、人間共の有する転移魔法によって手痛い反撃を受けていた事だろう。
「全く、死んだ振りをしていて正解だったな」
そうなのだ。先程の龍帝暗殺で俺が担当した配置は、運悪く魔物共の数が多い場所だった。
これでは龍帝暗殺の手柄を他の連中に取られてしまうと忌々しく思ったのだが、今回に限ってはそれが功を奏した。
おかげで俺は、周囲の魔物共を盾にして龍帝の攻撃から生き残る事が出来たのだからな。
この情報を持ち帰れば、任務失敗の罰を受けずに済むだろう。
それどころか戦略的価値のある情報を持ち帰った功績で知恵の一族の者の代わりに、どこかの作戦指揮を任される事になるやもしれん。
「これは運が回ってきたぞ」
既に龍帝は居ない。
知恵の一族を追うと言っていたのだから、龍帝が向かったのはおそらく隠れ家の方だろう。
ならば俺は本拠地に向かうべきだろうな。
そこで報告を行い、龍帝討伐の為に隠れ家に向かうことになるだろう。
おや? そうなると龍帝は転移魔法の情報を知られただけでなく、隠れ家に一人で向かった事で丸腰同然じゃあないか?
「くくく、龍帝よ。俺達を全滅させたと思って死体の確認をしなかったのが災いしたな」
急ぎ本拠地に戻ろうとした俺だったが、ふと考えを改める。
「このまま帰るのも癪だな。せめて土産が欲しいところか」
そうだ、このまま本拠地に戻ったらまるで逃げ帰ったみたいではないか。
それは面白くない。
幸いにも今は龍帝の姿がない。
そして周囲には浮かれた人間共。
「くくっ」
ならばやるべき事は一つ。
負傷こそしているものの、この程度の人間共が相手ならハンデにもならんわ!
残った人間の戦士共をまとめて血祭りに上げてくれる!
「ふははっぐぁっ⁉︎」
その時だった、高笑いと共に立ち上がろうとした俺の背中に激痛が走ったのだ。
「な、何だ⁉︎ 先ほどの攻撃で翼を負傷したのか⁉︎」
負傷を確認する為に翼を広げ、首を後ろに回しながら視線を向ける。
翼が重い、これは重傷かもしれん。
「……な、何だこれは⁉︎」
その光景に俺は驚いた。
なんと俺の背中、翼の根元近くに白く丸い毛玉がくっついていたのだ。
一体これは……?
「キュウッ」
その時だった。白い毛玉が鳴き声と共に動いたのだ。
「生き物だと⁉︎」
見たこともないその生き物に驚きを感じると共に、俺の心に怒りが湧いてきた。
「このケダモノが! 誇り高き我等魔人の翼を食うつもりか!」
怒りに支配された俺は、人間共の前にこの毛玉を引き裂く事にした。
「毛玉め! その白い体を真っ赤に染めてくれるわ!」
俺は毛玉から生えた二つの角を掴んで左右に広げる様に引き裂いた。
引き裂いた、筈だった……
「ば、馬鹿な⁉︎」
なんと信じられない事に、毛玉の体はビクともしないではないか⁉︎
「くっこの!」
すぐに本気を出して両腕に力を込める。
だが全力を出しているというのに、この毛玉は引き裂かれるどころか苦しむそぶりも見せない。
「キュウ〜? キュキュ?」
何を言っているのか分からん。
だが侮辱されているのは間違いなかった。
「こ、殺してやる!」
許せん! 下等なケダモノ如きが魔人であるこの俺を嘲笑うなど!
「万死に値する!」
俺は魔力を全開して目の前の毛玉に最大級の魔法を放つ。
「人間共とは比べ物にならぬ我等魔人の魔力、至近距離で喰らうがよいわ!」
魔力が物理的な力へと転化され、俺の目の前で爆散する。
愚かな毛玉は哀れ消し炭だ。
「ふん、少々大人気なかったか……なぁぁぁぁっ⁉︎」
今度こそ確実に屠ったと思った。
まともな形など留めていないと確信していた。
だというのに!
「キュウ?」
あの毛玉は目の前で何事もなかったかの様に立っていたのだ。
「な、なな……」
ありえない、そんな事はありえない!
俺は魔人だぞ⁉︎ 人間以上の肉体の強さを誇り、人間以上の魔力を持つ魔人だ!
その俺の攻撃を受けて、傷一つないだと⁉︎
一体この生き物は何者なのだ⁉︎
「キュウ〜ン」
毛玉が嘲りの声をあげる。
まるで「もう終わりか?」とでも言いたげな目をこちらに向けて。
そして俺は見た。
毛玉が血の様に真っ赤な口を大きく開ける光景を。
「ギャァァァァァァァァァァァァァァッ‼︎」
ああ、欲をかかないでさっさと逃げていれば良かった……
魔人(;゛゜'ω゜'):「た、食べないでぇぇぇぇぇっ‼︎」
モフモフΣ(:3)∠)_「美味ぇ美味ぇ、フルコースにデザートまで用意してくれるとか、魔人はもてなしの達人だな」
魔人(;゛゜'ω゜'):「違いますぅぅぅぅぅっ!」
冒険者達(:3)∠)_「あれ?何か聞こえた様な気が?」
魔人(;゛゜'ω゜'):「聞こえて節穴イヤーの皆さんっっ‼︎」
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