飛行機関連技術特許を抑える
「つまり、申請した各国において特許が取得できたということですね?」
「はい、そうなります」
宮殿の応接室、私はお父様と共に外務大臣から各国での特許の取得状況を聞いた。
1888年8月、英、独、仏、伊、米、露、日など特許権を主張できる各国に対してグライダーに使われた関連技術の特許がすべての国で認められたとのこと。
それなりにお金を積みまして、最優先で承認をさせたわけですよ。
私自身は詳しい原理を説明できるわけではありませんが、私、マリーナ、レーナの三人に王太子であるお父様の署名も入りダンマーク王国として特許を取得したわけです。
4月に行われたグライダーによる私の飛行は、約11分の飛行となり記録を作った。
まぁそのあとにどうしても乗りたいと言い出したインゲボーお姉様に記録が抜かれたのですけれどね…
お姉様はどうも”乗り物”の操縦にたけてらっしゃるようすです。
今では私も含めて世界各国から「空飛ぶお姫様」なんて呼ばれはじめております。
「イギリス、ドイツから特許使用に関する協議の打診を受けております」
「交渉は長引かせてください。どこの国よりも先にダンマークが動力飛行をせねばなりません」
「心得ております。それと、第四回パリ万博ですが…」
「もちろんグライダーの実物の展示をお願いいたします。動力飛行機が間に合えばいいですが、まだ難しいかもしれないとレーナから言われておりますので」
「可能な限り早期に達成いただきたいところです」
「同意いたしますが、事故が起きては問題となりますので…私自身ケガをしたくはありません」
「またお乗りになるのですか?」
「もちろんです。そのために私が開発を進めているのですから」
私と大臣の会話を聞きながら父が微妙な顔をしているが気にしてはいけないわね。
今レーナには飛行速度が遅くてもよいから動力飛行機の製造を急ぐように依頼している。
エンジンは車から降ろして減速機を取り付け改造中、さらにはプロペラを木材から削り出しで製造中という状態。
グライダーにそのままエンジンを載せられれば良かったのでしょうが、エンジンのサイズ的にそういうわけにはいかないとのこと。
さらにイギリスからゴムタイヤを輸入してちゃんと滑走して飛行するものになる予定です。
現在は各種部品が出来上がってきており徐々に組み立て始めているとのこと。
来年にはパリ万博がありますからそこで実演飛行できるのが最善ですわね。
「それにしても動力飛行ですか…すでにドイツでは飛行船の開発が進んでいるとのことですが、姫様は何故”飛行機”にこだわるのですか?」
何故こだわるのかと言われれば飛行船に将来性が無いことが最大の理由なのだけれど、向こうの方が大きいしすでに試験器とは言え実用的に飛んでいるので近い将来人を乗せて飛べるだろう。
熱気球などは既に空を飛んでいるし。
ただ、飛行船の浮遊に使うための気体は安全性を考慮すればヘリウムだけれどそのためには機体は軽量化せねばならず、搭載できる重量も限られる。
例えばドイツは後に商用飛行船として世界を一周することにもなるグラーフ・ツェッペリン級の硬式飛行船を開発するけれど、その中身の気体はより浮力の高い水素。
爆発性のある危険な気体で、それが原因で事故も起こしている。
何よりも最高速度が飛行船では形状の問題から限界がある。
その点飛行機は翼で揚力を発生させるためのエンジン出力さえ何とかなればどんなデカいものでも飛ばせるので将来性はこちらの方がはるかに良いはずなのだ。
第二次大戦で空を飛びまわるのは飛行船ではなく飛行機であることが事実の全てである。
「将来性の問題です。
現時点では飛行船に飛行機は勝てないでしょうが、飛行船に先はありません。
飛行機は将来的に世界の空を制すはずです。
詳しくはレーナに聞いていただくのが一番ですが…」
「わかりました。
後ほど孫娘と話そうと思います。
しかし弱冠8歳の少女たちがこれほど国のことを考えて活動されるとは」
「まったくだ。私が王太子だなど恥ずかしくなる思いだ」
お父様がようやっと口を開いたがなんだか随分とご自分を卑下されておりますね。
そんなことありませんわよ。
お父様がいないとこの話は進まなかったのですから。
そう思い私はお父様に手を重ねて微笑む。
伝われこの思い。
「そうでした!外務大臣私イギリスに行きたいのです」
「イギリスでか?」
「はい。すでに叔母様へは手紙で了解を得ているのですが」
「まってください。アレクサンドラ様から了解を得ていると?」
「そうです。
ホワイト準男爵に会いたいのです」
「なぜです?」
「飛行機開発製造の為ですわ。
独力で設計開発できればそれが一番ですが、我が国の技術力だけでそれを成すのは限界があります。
人的資源も物的資源もありませんから。
なのでイギリスに助力を求めるのです。
この二人は必ず飛行機開発に乗ってくるはずです」
「たまに姫様の自信がどこから来るのか分からない時がありますが…殿下、よろしいのですか?」
「テューラは言い出したら聞かん。一人で行かせるわけにはいかないからクリスを同行させることで許可しよう。大臣頼む」
「ありがとうございますお父様!」
こうして私のイギリス行はあっさりと決まったのだった。




