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やり直し王女テューラ・ア・ダンマークの生存戦略  作者: シャチ


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禁術と終戦

「我が国において核開発は平和利用以外、許しませんよテューラ様!!」

「とはいえ米英仏共に開発が進んでいるそうではないですか!」

「あれは悪魔の囁き以外の何物でもありません。使用すればすべてが終わる技術です。技術として確保することは容認しますが、保有することは許されません。それに!あれは!捨てることすらままならなくなる技術なんですから!!」

 1944年春、米艦隊が日本へ向けて出港したとの情報があり、いよいよ日米戦争は最終局面を迎えつつある最中、情報局よりもたらされた情報、核爆弾の製造についてマリーナに相談したところ、速攻で拒否され今に至っています。

「それほどまでのものなのですか」

「私も専門家ではありません。ですが放射性廃棄物はその半減期という能力が半分になるまでの期間が数百万年から数億年のものばかりと聞いています。人体への影響は計りしれず、爆発力よりもその際発生する放射線により目に見えない害を永続的に及ぼすのです。ソドムとゴモラを焼いた火よりも凶悪な非人道兵器なのですよ。生物、化学、原子力はNBC兵器といって未来において禁断の兵器群の一つです。なにより平和利用するにしても原子力によって発生した熱によってお湯を沸かしその蒸気圧でタービンを回す原子力発電は、火力発電と比較して安定した発電方式ではあるものの、使い終わったゴミはすべて放射線を浴び、自ら発するようになります。それをどこに捨てるのです?人が近寄ることもできず、さらなる汚染を引き起こす可能性があるものをそこら辺に埋めるわけにはいかないのですよ」

 マリーナの必死の形相はそれが真実であると物語っています。

 私は前世において日本を撃滅せしめた原子爆弾が戦争を終わらせたというアメリカの言い分しか聞けずに死んでます。

 その後で日本に何が起こったのか、そして唯一の戦争被爆国となった日本の立ち振舞がどういう状況であったのかを知りません。

 それに、当時原子力といえば夢のエネルギーとまで言われていたのです。

 デメリットが有るなんて知りもしませんでした。

「ですが、基礎研究は必要です。実験炉までは許しますし、やるとしても地下核実験までです。技術を保有しておくことは今後絶対に必要となります。ですが、それが安易に使われる世界にしてはなりませんしダンマークとしてエネルギー問題を考えるのであれば、豊富な風の力を使った風力発電と、水力発電などの自然発電を発展させるべきです」

「それは、未来のダンマークもそうなのですか?」

「はい、今現在は問題となっていませんが、二酸化炭素は地球環境を今後劇的に変えてしまいます。そのとき、我が国が二酸化炭素を排出しない国家体制を取っておくことが、この先100年の国の安定につながるはずなのです」

 マリーナが言うには、未来におけるダンマークは自然エネルギーを豊富に使い、脱炭素社会に先駆けとなっているということらしく、今後の経済成長による電力需要を今のうちから自然エネルギーで賄えればそれだけでアドバンテージになると考えているようです。

「すでにレーナに新型の風力発電について研究させています。原子力発電はグリーンランドでウランが取れるようですから自国開発可能です。ですが、それに頼ることはしません。使い終わった燃料をどこに捨てるにしても現地住民は政府に反感を持つでしょう。わざわざ国を揺るがすような火種を自ら作る必要はありませんので」

「…わかったわ、お兄様にもそのようにお伝えします」

「後で資料をお持ちしますので国王を絶対に止めてくださいね」

 この話、もともとはお兄様から湧いて出た話なのです。

 大国で始まっている原子力開発について、ダンマークも取り組むべきではないかという話です。

 ですが、お兄様もメリットしか聞いていなかったのでしょう。

 これほどのデメリットが有るのであれば、技術だけ保有するというマリーナの発言もよくわかります。

 活用は危険、そのとおりでしょうね。


 *****

 1945年1月、アメリカから出撃したアメリカ太平洋艦隊は第二次ミッドウェイ海戦において日本軍を撃破しました。

 日本海軍は空母大和と信濃にカタパルトを搭載し、それぞれ搭載数200機を超えるジェット戦闘機にて当初アメリカ側を圧倒するも、艦載機とするための無理な設計から継戦能力が低かったらしく、物量で押したアメリカに徐々に削られ、米空母艦隊の別働隊として上空待機していたジェットエンジン8発を搭載するB-36戦略爆撃機による”原子爆弾の投下”によって日本艦隊は壊滅。

 日本は本土決戦の構えを見せているという状態になりました。

「私は止めました。ですがアメリカはやはり原子爆弾を使ってしまった。目標が市民でなかっただけマシかも知れません…彼らは使ってはならない兵器を使ってしまった。これで、世界は核による統制なくして成り立たなくなってしまったのです」

 マリーナは悲痛な顔で私のもとにこの報告を持ってきました。

 彼女も忙しいでしょうに、わざわざ私のもとに来てくれたのです。

「日本にはクリスチャン10世国王陛下から天皇陛下に対して降伏するよう書簡も送っています。これ以上無益な戦いをするべきではないと、市民に原爆を使われる前に降伏してほしいと…アメリカ大統領ルーズベルトにも私と連名で話をしています。これ以上の原爆使用は容認できないと…なんとか聞き入れてもらえることを祈るだけです」

 この度のアメリカの原爆使用について日本からの正式な回答はまだありません。

 ですが、世界は見たはずです。

 巨大な艦隊を一撃で葬り去る爆弾。

 それが自分たちの都市に使われたらどうなるのか想像ができない国家元首などいないはずです。

 事実、爆弾を落とした米B-36のパイロットたちも被爆し、放射線障害が起こっているといいます。

 このような無差別兵器が続けて使用されることは絶対に避けなければならないはずなのです…。

 もう停戦してほしい…そう思っております。

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