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やり直し王女テューラ・ア・ダンマークの生存戦略  作者: シャチ


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戦線動く時

 1942年春、当初予定された夏季攻勢はバクーを抑え、スターリングラード攻防戦という泥沼の戦いをもって停滞。

 TB−7戦略爆撃機、総数500機により瓦礫とかしたスターリングラードでの戦いは前世どうよう過酷なものとなりました。

 そして、冬に追撃することもできずに迎えた春、ようやく連合軍はモスクワまで50kmと言うところまで進軍することができたといいます。


「ソ連戦については終わりが見えてきたけれど、日米戦は終わりが見えませんね」

「アメリカは改エセックス級の数がそろってきましたが兵が練度不足、日本帝国側はそんなアメリカの長距離爆撃をことごとく迎撃、どちらも決定力に欠けている状態ですね」

 レーナが我が家に来ています。

 ドイツ戦が終わって以降ある程度落ち着いたTH Iでの仕事を全て後任へ引き継ぎ、悠々自適な生活に入っているせいか、よく我が家に遊びにきます。

「日本の迎撃機は優秀なようですね」

「ジェットエンジンの開発に失敗して、ロケットエンジンで迎撃機を作ったようです。5分で高度12000mへ到達、40mm機銃1門でアメリカのB−29ターボジェット爆撃機を落としまくるというゲテモノですね」

「恐ろしい底力ね…」

「日本兵は竹槍でB-17を落とせると言われるぐらいですから」

「どういうことよ」

 日本兵は超能力者かなにかなのでしょうか?

 まぁそれは置いておいて。

「噂話ですが、亡命ドイツ人が日本にいるという噂があります」

「情報局からも聞いているわ。ありえないとも言い切れないのよね」

 この1年、日本の軍事技術が急激に進んでいるという情報があります。

 それが亡命したドイツ人による技術の流入と言われているのです。

「ジェットエンジンの量産開始も間近と言われています」

「ますます日本が強くなるのはこまるわね」

「現在、ジェット艦載機は実現できていませんが、その開発が日米戦のキモになると思いますよ」

 レーナからも教えてもらっていますが、ジェット艦載機の開発には戦闘機そのものだけではない難しさがあると言います。

 空母はどんなに大型のものでも滑走距離は200mほど、船の速度をプラスしたとしても離陸速度を稼ぐのが難しいジェット機は積んでも使えないという可能性が高いわけです。

「残念ながら、ダンマークもカタパルトの開発に成功していません。これが無い限りジェット機を艦載機とはできないと言うのが現状です。ターボプロップ機なら可能かもしれませんし、性能を落として低速性能のみを優先するなら可能ですが」

「万能機にはならないわね」

「えぇ、下手をすればレシプロ機より性能が低くなりますからね」

 レーナの言うように、空母からジェット機を発艦させるのは難しいのだろう。

「そういえばアメリカが、全長300mの滑走路を持つ空母を作り始めているそうね」

「まぁデカければ飛び立つ可能性は高まりますからね。多分使うことはないでしょう。下手をすると日本の方が先に実用化するかもしれませんよ…」

 レーナは何を持ってそのようなものが完成するかもと言っているのでしょう。

「カタパルトと言います。日本は海軍国家ですので、戦艦に火薬式のカタパルトにて飛行艇を飛ばしています。これを応用されるとジェット機を中型空母に搭載できるのです。大和型空母なら余裕でしょう…それにドイツの油圧技術が加わると油圧式カタパルトが製造可能になっている可能性があります」

「海の上でもジェット機が飛び交うことになるのね」

「ダンマークも負けていませんよ、次期主力戦闘機の開発を始めていますから」

「もうなの?」

「ま、エンジン載せ替えるだけなんですがね

 最高速度はマッハ1.2、音速を超えてみせますよ」

 うちの国も技術進歩しているのね。


 *****

 1942年夏、モスクワ進攻によりスターリンの拘束に成功し、世界中にニュースとして流れました。

 これで、ヨーロッパの戦争は終わりです。

 残るはイギリス・フランス・アメリカと日本の戦いとなっています。

 ダンマークは連合国ですが遠く日本に対して宣戦布告はしておりませんからね。

 これは低地諸国も同じで、私達の戦争としてはここで終わりです。

 ソ連は解体され、ソビエト連邦を形作っていた国々はそれぞれ独立の機運が高まっている状態になります。

「まさか、ここまで我が国の利益を失うことなく戦争が終結するとはな」

「お兄様の活躍も耳にしておりますよ」

「私は所詮兵士たちに激励をしただけだ。働いてくれたのは軍人と政治家たちだよ。王族の価値というものが相対的に下がったことがよく分かる戦争だった」

「そうですわね。血族による停戦要求は前大戦でも同様でしたが、王の言葉を聞くような国はもうどこにもないようですから」

「それでも象徴としての役割はわかる。兵たちの士気をあげることはできた。国の顔という役割がなくなったわけではないな」

「それでも、ベルギーとの貿易についてはお兄様の尽力ですから、まったく価値がなくなったわけではありません。彼の国で作られたユーディーと言う名の戦車は此度の大戦で重要な役目を果たしましたから」

「私は彼の国であのような強力な戦車が開発されていたことに驚きを隠せない」

「ダンマークが飛行機を開発したのをお忘れですの?」

「…そういえばそうであったな」

 きっと彼の国でも私のようなものがいたのですよ。

 前世において低地諸国は中立を宣言していたにも関わらずフランスを攻めるドイツによって蹂躙されたのですから。

 それを回避するために強力無比な陸戦兵器を開発した。

 ダンマークが中立たるために飛行機を開発したようにです。

「ともかく、我が国はここに来て旧領土の回復もできた。北欧四カ国との結束も強いままだ。テューラのおかげだと言っていい」

「過分なお言葉ありがとうございますお兄様」

 そうよ、このために私は今まで駆け抜けてきたのだから。

 ようやく報われたと言っていいわね。

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