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やり直し王女テューラ・ア・ダンマークの生存戦略  作者: シャチ


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対ソ、対日戦の停滞

 1941年春、連合軍はついにベルリンを占領し、ドイツと連合国の戦争は終わりを迎えます。

 ですが、ソ連、日本との戦争はこれからという状況です。

 ソ連はありえない数のT-34の改良型を投入してきており、ポーランド軍はモスクワ手前で戦線が膠着。

 これ以上の進軍は不可能という状況に陥り、イギリス・フランス軍の再編、配置転換が終わるまでは進軍不可能という状態となりました。


 また、日米の太平洋決戦は双方ともに大規模な損害を出すこととなりました。

 船舶に対する航空機の有用性は早い段階から理解されており、日本が保有する空母大和、空母武蔵、空母信濃をはじめとする超大型空母軍と旧型空母合わせて12隻と、アメリカが保有する大量建造を目的としたエセックス級空母16隻がミッドウェイ沖で激突、双方大量の轟沈をだし共に撤退という状況となりました。

 日本側は空母武蔵が轟沈しており、その他にも旧型空母である赤城、加賀、その他小型空母3隻が轟沈しており、多数の未帰還機を出したようで、これはアメリカ側も同様、エセックス級空母5隻に多数の護衛艦が海に沈んだとのことです。

 お陰で、双方しばらく軍事行動が取れる状態ではないということだそうです。


 *****

「ドイツとの停戦交渉は順調そうだね」

「ニールス、お兄様から聞いた話だけれど、ヒトラーは行方不明だそうね…見つかればいいのだけれど」

「戦争責任を問えるものがいなくなるのは困るね…」

 現在ドイツとの戦闘は終わっており、ダンマークは次の戦いを見据えて動き始めている。

 マリーナは停戦交渉の矢面に立たされているようで、しばらく連絡は取れていません。

「自国の被害が少なく済んだのが幸いだわ」

 私の言葉にニールスが頷く。

 幾ばくかの空爆をドイツから受けることとはなったが、ソ連からの空爆は今のところ発生していない。

 東部戦線の軍再編は順調に進んでいるらしいが、ダンマークがこれ以上侵攻することは不可能だろう。

 どちらかといえば連合軍に対する支援に力を入れるべきとの軍部の判断もあり、ドイツ国内の治安維持をサポートする人員以外は徐々に本国に撤退を開始している。

 前世では4年後にならないと決着しなかったドイツ戦はわずか1年ちょっとで終結したことになったのです。

 ただ、前世と違い戦争はよくわからない状況となってきています。

 ソ連は連合国とことを構え、今はウクライナ国境で睨み合いを続けている状態。

 日本とアメリカは太平洋を挟み、尚且つ中国国内で小競り合いを続けているような状態です。

 問題はどちらも攻勢をかけるには時間が必要そうだと言うことでしょうね。

 ヨーロッパ戦線は次の進軍のためにも再編と補給が必要であり、日米戦争についても双方立て直しが必要と言う状況に変わりはありませんから。

 そして、この年はこれ以上の戦闘が起こらぬまま過ぎ去っていくことになったのです。


 *****

「久しぶりねマリーナにレーナ」

「ようやくドイツとの停戦合意ができましたがね、連合国での話し合いによってソ連とどこで折り合いをつけるかという話と、それに伴う軍事作戦についての取り決めが話し合われましたよ」

「こっちは各国の工場ライン構築の手伝いでてんてこ舞いでした。もうすぐ60歳だと言うのにこき使われましたよ」

 1940年冬、珍しく3人でお茶をする機会が得られました。

 それぞれの近況報告とともに、今後についても話し合います。

「なんとか日本を戦争に巻き込みたくなかったんですがね…国民の暴走というんですか…あの国は結局軍もマスコミも増長していたんですかね、一度痛い目を見ないと性質は治らなそうです」

 マリーナがため息をつきながらいう。

 彼女はなんとか外交交渉で日中の争いも止めようとしていたようですけど、無駄でしたわね。

「とはいえ米国だって大して変わらないでしょう。何がモンロー主義ですか」

「あの国がモンロー主義だなんて言ってるのはそれこそ国民だけでしたよ。第一次大戦の後からでかい顔してコケた癖にこれですから」

 そうですね、ですが良かったこともあります。

 イギリスもフランスも、そして我が国も此度の戦争によって国力を失っていません。

 アメリカとソ連が二大超大国となるような自体は避けられたわけです。

「此度の戦争が終われば、待っているのは思想戦争、直接的な武器を使わない戦いになります。そう考えるとソ連を今のうちに滅ぼしておいたほうが良いのですがね」

「旧ロシア帝国貴族たちは我が国にも残っています。直系はいませんが叔母様とともに逃げてきたのはロシア皇帝の血ですから」

 私の発言にマリーナが頷く。

 レーナは蚊帳の外状態ですね。

「えぇ、それをうまく使うことになると思います。ベルリンでの会議でもその話となりましたよ。その意味でもモスクワを落とす必要があると言うのが答えです」

「そのための準備は進んでいますよ。どれだけの外貨がダンマークに入っていることかわかりませんが、TB-7は各工場で日産1機の勢いで生産中です。イギリス・フランスでも同様の状態。すでに連合国側での保有数は1000機に迫ります」

「戦略爆撃ですか…」

 私の発言にマリーナとレーナが頷く。

「えぇその代わり通常爆弾によるものです。モスクワは更地になりますよ。なによりスターリンが行った大虐殺、大粛清は人としてやってはいけない過ちです。打倒する大義名分になります」

 それに私は頷き返します。

 わかっていたことではありました。ソ連国内における大粛清の件。

 噂は流れてきていましたからね。

「あと、戦後問題となりそうなこととしてはユダヤ人問題でしょう。ダンマークではそれほど大きな問題となっていませんが、実は前世においてはイギリスが無茶苦茶したせいで中東方面、エルサレムのある地にユダヤ人の国を周辺国に了解なく勝手に作ったせいで戦後70年以上揉めています」

「なんと言うことを…いくらキリスト教、ユダヤ教の聖地とはいえ、あそこはイスラム教でも聖地でしょう!今イギリスの領地といえ、勝手にそんなことをしては!」

「えぇ本来はもっと長引くドイツととの戦いにおいて義勇兵欲しさにイギリス得意の二枚舌外交をした結果のゴタゴタですが、今世でこれは阻止されています」

 それは安心です。

 どう考えても揉め事しか起こらない勝手な取り決めなどあってはなりません。

「問題は、国ができなかったことで各国にユダヤ人が残っていることです。ドイツでもそうでしたがイギリスやフランスでもユダヤ人に対する差別は根強いものですから」

「つまり、我が国になだれ込んでくる可能性もあると?」

「そうです、国境を閉めよとは言いませんが、過剰な難民受け入れは国力の疲弊、国家の希薄化に繋がります。かといって難民キャンプにいつまでも止めおくことは人道に反すること。治安の悪化も避けられません」

「難しい問題ですね…」

「しっかりダンマーク人となるような教育を受けてもらう必要もあるでしょう…そろそろその辺りも考えないといけません」

「マリーナ、それこそ亡命ユダヤ人はアメリカにでも押し付ければいいのではなくて?」

「レーナ、そんな単純な話じゃ無いわよ…」

 宗教問題に民族問題ですか…戦争が終わっても平和な時代が来るとは限らなそうですね…

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