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やり直し王女テューラ・ア・ダンマークの生存戦略  作者: シャチ


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前世との変化

 ポーランドに向かうTH−6、四発ジェット旅客機の機長席にクリスティーナ・ア・ダンマークが座る。

 素早くチェックリストを確認する中、操縦室のドアが3回叩かれる。

「ドアロックが終わったようです」

「管制塔、こちらダンマーク501、トーイングを頼む」

『こちら管制塔、周囲に問題なし、すぐにL33へ向かってください」

「了解」

 無線通信の後、飛行機はトーイングトラックによって後ろに押される。

「D501、こちら管制塔。現在D491がタキシング中、後を追ってください。D491離陸後に滑走路に侵入してください」

「管制塔、こちらD501了解」

 私は肩の力を抜いてエンジン出力を上げる。

 今までのレシプロ機と違って、このTH−6はエンジンの反応が鈍い。

 タイムラグがあると言う方がいいだろうか

 そして、クリスの乗るD501便が滑走路内に入る。

「こちら機長のクリスティーナ・ア・ダンマークです。これより離陸します」

 わぁ!っと客室の方から声がする。

「やっぱり人気者ですね機長」

 航空機関士が茶化すように声をかける。

「慣れたものよ。やっぱり王族の血を引く人間が飛行機に乗っているのは珍しく、今は逆に心の支えになるのでしょう」

 そう、これはワルシャワ発コペンハーゲン行きの最終便。

 1939年9月17日、本来であればソ連が参戦する日であった。


 *****

「無事に、ポーランドの民間人脱出用の最終便はコペンハーゲンに到着したそうです」

「皆が無事でよかったわ」

 マリーナ付きの秘書の一人が私の屋敷まで連絡に来てくれた。


 ウウウウゥゥゥー!!!!!


 そんな中空襲警報が発令される。

「すぐ屋敷の地下へ」

「ありがとうございます。今日も何もなければいいのですが」

 そう言って我が家のメイドやマリーナの秘書の方と共に地下室へ向かう。

 戦争が始まって5日目から、ここコペンハーゲンでは連日空襲警報がなるようになった。

 ただ、実害はほとんどなくすんでいる。

 全てはコペンハーゲン空港で待機しているTF−6のおかげだ。

 レーダー網にひっかかかったドイツ爆撃機の編隊を次々返り討ちにしている。

 とはいえ、完全に安心はできないためこうして地下に逃れている。

 現時点でドイツの爆弾はコペンハーゲンに一発も落ちていない。

 ただ、空港近くにはドイツ軍機の破片が降り注いだことはあり、騒ぎとはなった。

「マリーナ首相からもう一つ伝言です。TB−6を使うとのことです」

「狙いは?」

 TB-6、TH−6がいる時点でお分かりと思うが、戦術爆撃機型の飛行機だ。

 とはいえマリーナがゲルニカ事件のような無差別爆撃をするとは思えない。

「ドイツ国内の各空港に対する空爆を行うと、護衛にTF−6も複数同伴するようです」

「早々に思い切ったわね…」

「フランス側からの要請です。大動員令を出したものの、まだ動員に時間がかかる中、ドイツ側はフランスに対しても空爆を実行しており少なくない被害が出ているらしく、手を貸してくれと」

「陸軍大国フランスからのご指名とはね…とはいえ陸戦が起こっていないからうちに頼ってきたわけね」

「はい、作戦開始は早朝から始まるとのことです」

「なるべく市民に被害が及ばないことを祈るわ」

 *****

 1939年9月18日に行われたドイツの飛行場空爆はある程度の成果を出した。

 ドイツ各地にある空軍基地の滑走路を穴だらけにし、格納庫を吹き飛ばしたのだ。

 総勢200機を超えるTB−6に加え、護衛として500機ものTF−6を導入した本作戦は、TB−6が24機銃撃を喰らって中破した以外のこちらの被害はなく、マリーナ自ら戦果を発表するに至った。

 これにより勢いを増したのはポーランド陸軍である。

 同日、反抗作戦によりドイツ陸軍を従来の国境線まで押し戻したのである。

 前世においてポーランドはすでに蹂躙され尽くしたような状態であったはずだが、今世では違う。

 ドイツ陸軍強固なれど、倒せない相手ではない。

 この反撃によって防がれたのはソ連の参戦。

 ドイツとの密約はご破産となった。

「ドイツ側は焦っているでしょうね」

 私は新聞を見ながらポツリと呟く。

 まだ、ユラン半島の戦線に動きはない。

 だが、ポーランド戦がうまくいかなくなった今、あのちょび髭が何をするか、それは他の地域への八つ当たり的に進軍するだろうと私は予測した。

 その予測はある意味で正解であったのだった。

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