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やり直し王女テューラ・ア・ダンマークの生存戦略  作者: シャチ


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アンシュルスと密約

墓参りやコミケで更新がストップしておりました。

再開いたします

 1938年、南側の周辺国においてナチ化が進んでいる。

 それにこの年、前世ではオーストリア併合が起こった。

「というわけでマリーナ、オーストリアのシュシュニックに国民投票をなんとしても実行させたいのよ」

「お気持ちはわかりますがねテューラ様。あの国民投票が実現していれば、オーストリアは独立維持ができたかもしれません。ですがね、オーストリア人にも大ドイツ主義者はいますし、我が国ではうまいこと抑制できていますが、オーストリア社会労働者党は思った以上に強力な政党です。下手をすると国民投票が決定打になりかねません。悪い方向の」

 私は考え込んでしまいました。

 のちの歴史を知っていればナチなどに傾倒することは愚かであるとわかるでしょう。

 ですが彼らは侵略者の前に政治家としての手腕が優れていたと言わざるを得ません。

 事実、不満を持つものがいるとはいえドイツ国内においてナチ党は十分過ぎる支持を得ています。

「未来の話ですが、今のナチスドイツは日本の政党支持率なんて敵わない支持率をもっていますからね」

「…そんなに国民に信任されていない政治家しかいなかったの?」

「WW2以降、市民が政治に深く関わることを良しとしない風潮ができてしまったのですよ、あの国では」

「それはそれで問題では?」

「私が生きていた時期は民主主義の危機といわれています。お互いが主張を曲げず、互いに偏った情報だけで無意味な"議論という名の殴り合い"をする世界です」

「…そんなもの民主主義でもなんでもないわね」

「全くその通りです。ただの多数決。情報を握り込み、有権者をどう洗脳するかの世界ですよ。それにくらべ今のダンマークはとても理想的です。サムフンズ(コミュニティー)は理想的な市民の政治参加に役立っていますしね」

 そうね、だからこそ世界初の女性首相が誕生したと言えるわ。

 でも今はその話はいいの。

「そうね、それでオーストリアの件だけれど」

「テューラ様、こればかりは諦めてことの成り行きを見守るしかないと思います。それとは別に我が国としてやることがあります」

「…上手く行ってる?」

「えぇ、英国との協議は進んでいます。今はまだ中立国ですが、1939年9月には自動的に発動するでしょう」

「そうならないのが一番なのだけれどね…」

「私もそう望みます」


 イギリスとの協議、それは連合国入りするかどうかの話となります。

 このままいけば、ドイツ系住民のいる国は"自国だ"と言い始めかねないドイツに対する牽制とともに、自国を護るために連合国側について戦うという状態です。

 前世では苦渋を舐めました。

 宣戦布告の通達後わずか6時間でダンマークは降伏しました。

 その後の生活はまともとは言えません。

 私たち王族は軟禁状態。

 形ばかりの選挙によって選ばれたのはナチ党員ばかり、反発する市民は表向き平静を装いながらも地下組織の活動に参加する。

 国家としての体はなく、ただの占領地扱い。

 戦争が後半に差し掛かる頃にはドイツ自体が我が国を構うこともなく只々疲弊した歴史。

 絶対にそんな運命を受け入れることはできません。

「そういえばテューラ様。TF/A−6の生産は順調なそうですね」

「おかげでTHIの内部留保がなくなるわ」

「枢軸側とソ連には絶対に渡せませんもんね」

「えぇ、だけどフィンランドには枢軸入りして欲しくないの。だから旧型機は全て北欧3カ国へ輸出している。3カ国からは新型機を格安でもらったと言う感覚みたいだけれど」

「ドイツにまで売ってましたが…大丈夫ですか?」

「おかげでいい外貨獲得になったでしょう?」

「ま、そうですがね。金を搾り取れるなら搾り取ることにしましょうか」

 もはやジェット戦闘機が就役したのでレシプロ機は一部を除いて不要と判断し、周辺各国へばら撒いていたりします。

 北欧各国は純粋に戦力を整えて欲しく、中古品は全部売り払う予定。

 ドイツに売ったのはこちらを舐めてもらうため。

 この程度の機体だと思ってもらえれば御の字というレーナの判断ね。

 なにより、TF/A−6は今までの飛行機の技術では非常識とされた形状をしているから、これまでの最新鋭飛行機を他国へ渡したところで技術流出の心配は少ないと判断したためね。

 いまTHIではとにかくこのジェット機の生産を急いでいるところ。

 目標は月産50機、現状は20機組み立てるのがやっととのこと。

 エンジンが安定したとはいえ、そのほかの電子部品などの製造に苦戦しているという。

 今回はなるべく自国だけで生産できるように設備も組んでいる。

 原材料だけはいくつか輸入が必要だけれど、なんとか連合国側からの輸入で事足りる。

 アイスランドとグリーンランド、さらにはフェロー諸島のおかげで意外と資源に困らないのが我が国なのだ。

「フェローからの石油の輸送航路、その護衛用の駆逐艦隊は残念ながら1940年まで更新が終わらないそうですよ」

「船は時間がかかるわね…」

「それでもなんとか、護衛空母は用意できました。すでに就航しています」

「搭載機は護衛戦闘機の改修版ときいたけれど?」

「えぇ、流石にジェット機は飛べないそうです。滑走距離が200mもないですからね」

「それでも対潜、対空の護衛がいればある程度安心できるわよね」

「えぇ、すでにフェローからの輸送で実践訓練中ですよ。駆逐艦は旧型ですが、連携状態は良好です」

「何も起こらないのが最適とはいえ、しばらくはそういったことで細々と防衛力を整えるしかないわね」

「そうですねテューラ様」

 そして翌年、いよいよドイツからポーランドに向けて最後通告が出されたのでした。

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