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やり直し王女テューラ・ア・ダンマークの生存戦略  作者: シャチ


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破滅へ進む世界

戦間期、だいぶ飛ばしております。

 1933年、お隣ドイツでついにヒトラーがヒンデンブルク大統領より首相に任命されたとのニュースが入ってきた。

 この3年間、世界各国はそれぞれの経済対策によってようやく景気が上向いてきたという感じ。

 ダンマークも景気は確かに悪くなりはしたものの、政府による早期の対応によって前世における悲劇的な労働者の流出などは起こらずに済んだと言える。

 酪農製品の輸出は持ち直しの傾向が強く、航空機についてもようやく輸出が伸び始めたという感じ。

 その間に、護衛戦闘機は実に1000機、近接迎撃機に至っては1200機もの大増産が行われ、パイロットより飛行機が多いという状態が出来上がってしまった。

 一部は同盟国でもあるスウェーデンやノルウェーに格安で売却し、北欧地域の空の防衛力強化につながることになるでしょう。

 さらには、イギリスとの共同開発を続けていたレーダー機器に関しても進歩があり、ダンマーク王国全空域をカバーできるレーダー網とバックアップ設備の建設が完了したりしました。

 これも防衛能力強化を掲げたマリーナ政権の政策の一つですわね。


 30歳になった娘のクリスは、また旅客機のパイロットにもどりました。

 国際線の便数も徐々に回復しており、人の往来が活発になってきました。

 その代わり入国審査は厳しくなっています。

 マリーナ曰くテロ、というそうですが、国内に入り込んで思想犯罪に手を染める過激な人間を入国させないためだそうです。

 確かに、前世においてダンマークはナチスドイツによって内部から腐らされた過去がありますから、その防衛は重要ですわね。


 *****

 1935年、ドイツは前世と同じく再軍備宣言をおこないました。

 とはいえ、それよりも前からダンマークによる航空偵察によって再軍備が進んでいることはつかんでいました。

 史実での三号戦車がすでに量産を開始している状況であり、わが軍も電撃戦への対応について本格的な軍議が始まりました。

 何よりドイツが欲しいのは北海への自由な出口です。

 キール運河はありますが、それによる艦艇のサイズ制限はレーダーがすでに存在している現在において非常にネックポイントになります。

 ダンマーク陸軍はベルギーからそこそこな性能の戦車を購入し、塹壕とトーチカ、これら戦車による機動防御を主軸とし、制空権を常に確保することで、1937年初飛行する予定のマルチロール機による地上攻撃を考慮に入れるとのことです。

 そう、初飛行予定のマルチロール機、世界初のジェット戦闘機となるべく開発中の機体です。


「ようやくエンジンの開発にめどが立ちました。ですが稼働時間はまだ短いです。10時間でオーバーホール…実用性に欠けます」

 レーナが久しぶりに愚痴りに来ました。

 開発はなかなか難しい状態のようです。

「量産効果でより悪化する可能性もあるわね」

「その通りです。1回の飛行で壊れるのではとてもではないけれど使えません。数を用意してエンジンを丸ごと交換すると言っても限界があります。そんな大量消費ができるほどの数作れません」

「あと2年、なんとしても耐久性で100時間以上を確保なさい」

「指示は出しています。日々調整です…加工精度の問題なのか、材質なのか、国の流体力学、材料力学の専門家が総出ですよ」

「機体のほうは大丈夫なのよね?」

「この10時間で壊れる可能性のあるエンジンで指定のスペックは出ています。レーダーを標準搭載、夜間飛行も可能、最高速度は時速850km、最高高度は12,000m、最高高度までは2分です。最大積載量は2t、20㎜機関銃を4門搭載、全長は15m、全幅10m、全高5mってところです」

「前世でも見たこともない形状よ?」

「そらそうですよ。本来なら1970年代に飛ぶはずだった形状ですから」

「地上攻撃もできるって聞いたけれど?」

「できますよ。こいつは本当の意味でのマルチロール機です。制空戦闘、護衛任務、近接支援、あとは誘導ミサイルが開発できればほぼ無敵ですね」

「無誘導のミサイルは開発中と聞いたけれど?」

「えぇ形になってます。打ちっぱなしで誘導しませんが、当たればTC-524だって一撃で落とせますよ」

 4発輸送機は実は防弾性能を強化した版の生産を自国ではしています。

 エンジン性能の更なる向上から最大積載量が10t近くになり、翼形状の見直しなども行ったTC-5の後継機です。

 その性能は絶大。

 グライダー状態で飛行させたTC-524に向けて20㎜機関砲を放っても飛び続ける空の要塞です。

 プロペラやコックピットに弾が直撃しても冗長性があるので落ちないとまで軍から言われる輸送機を落とせるとなると、炸薬の量が尋常ではないことがわかりますね。

「当たれば戦車もやれますよ」

 レーナは自信たっぷりだけど”当たれば”なのよね。

 そう簡単に当たるとは思っていないわ。

「レシプロ機にも搭載可能なのよね?」

「えぇ無誘導ロケットなら積めます。イギリスの中古戦車を撃破できてますよ」

 その結果は聞いているわ。30発撃ってようやく1発当たったそうじゃない…

 それでもないよりはましかしらね。

 他国への脅しにはなるでしょう。

 ダンマークに手を出すと痛い目を見るぞと。

 ですが、我が国は”他国を侵略する兵器”は持っていないと宣言しています。

 まず、戦略爆撃機は持っていません。

 護衛戦闘機や近接迎撃機は爆装できません。

 自国での戦車開発もしていないという状況(ライセンス生産はしている)

 中立国としての防衛戦力だとして国連でも認められています。


 少なくともこちらからドイツに牙をむくことはありません。

 牙をむかれたら噛みつき返す自信はありますが。


 そんなさなか、1936年、いよいよ世界が動き出したのです。

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