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やり直し王女テューラ・ア・ダンマークの生存戦略  作者: シャチ


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娘の結婚と新型戦闘機

 1925年、ダンマーク株式市場は史上最高値を更新し続けていた。

 これに対してマリーナは市場の過熱とインフレを抑えるため、マリーナから金利の引き上げを行ったという話を聞きました。

「このままいくとどうなるかはテューラ様もご存じかと思います」

 この言葉は言うまでもなく1929年のアメリカに端を発する大恐慌のことです。


 とはいえ、この株価上昇の背景にはアメリカからの投資の影響が多分にみられるものの為、なかなか難しい調整だと聞いています。

 一個人であればこの情報を元に株式投資をして売り抜けることで巨万の富を築くこともできるでしょうが、国家としてそれをなすことはできません。

 国として、この現実と乖離した過熱している投資により発生した資金をどのように実体経済に合わせるかが課題だということです。

 とはいえ、その調整は今のところうまくいっているようで、インフレ気味ではあるものの国民生活に影を落とすような状態にはなっていません。


 そんなある日のこと。

「お母さま、お父様、紹介したい方がいます」

 久しぶりに帰ってきたクリスから、突然こんなことを言われた私は、少々うろたえてしまいました。

 まぁ何のことはない、ようやく彼氏ができたという話です。

 相手は平民男性で同じく旅客機パイロットのチャールズ。

 私とニールスが彼から話を聞いた限りは誠実な男性のようでした。


「本人たちが、結婚したいというのだから認めていいんじゃないか?」

「えぇ、私も自分の恋心を認めてもらって貴方と結婚したんだもの、本人の意思を尊重するわ」


 いつか来る話だと覚悟をしていたことではありますが、いざ現実として目の当たりにするとうろたえてしまうものですね。

 私の肩をニールスが抱いてくれて、ようやく落ち着いたほどです。

 二人はあまり大きな結婚式をやるつもりはないとのことで、王位継承権なども放棄し平民になることを望みました。

 私も王女ではありますが、すでに継承権はあってないようなものですからね。

 兄も否定することなく、この結婚は成立することとなりました。


 結婚式のあと、クリスの部屋の私物のほとんどは引っ越し先に移動され、家具だけが残されたような状態となったのを見て、なんだか心にぽっかりと穴が開いたような感覚になりました。


 前世でニールスと別れさせられた時よりも喪失感がある気がするわ…


 それでも、結婚式の際は笑顔で二人を祝福できたと思います。

 きっと、今は亡き両親も私の結婚の際には同じような感覚だったのでしょう。


 *****

 1926年となり、リックスは製薬会社に勤め始めました。

 次女のマリーは猛勉強を続けています。

 医者になるという夢に向かって一直線という感じです。

 彼女もすでに11歳、徐々に大人の女性の体になってきました。

 そして猛勉強をしている割に、学校では彼氏がいるようでして…うちの子器用ですわよね。

 私なんて恋に落ちたらそのことしか考えられなくなるような人間でしたのに…

 あら?そういえば今世ではそうはならなかったですね?


 そんな家庭事情の傍ら、TH-5の総生産数が累計で3000機まで伸びました。

 各国でもライセンス生産されるようになったことで、THIからわざわざ購入しなくてもよいと考える国も増えてきましたが、そういう国ばかりではないため、生産台数は伸び続けています。

 そして、その傍らで、2機の全金属単座レシプロ戦闘機が完成しました。

 ブリストルから手に入れたハーキュリーズとその原型であるジュピター、それらを購入しテストを重ね、ようやく18気筒のレシプロエンジンを共同開発したのです。

 名前をセントーラス。

 整備性と耐久性を兼ね備えた2000馬力越えのレシプロエンジンです。

 それに合う形で設計された2機の戦闘機は、ダンマーク防衛に特化したつくりとなっています。

 一つは、最高速度は時速約650km、最高高度11,000m、20㎜機関砲2門を搭載した護衛戦闘機、もう一つは最高速度は時速450㎞、ただし低速性能は160kmでも失速せず、急降下の為のダイブブレーキを装備し、最高高度も6,000と抑え気味の近接迎撃機です。

 こちらはなんと外付けで42mm砲を搭載可能、最大積載量も1tと250kg爆弾を5個も詰める化け戦闘機です。


「ようやく形になりました!随時性能向上、改修は行いますが、本命のつなぎにはなるはずです」

「近接迎撃機は防御力も高いんでしたっけ?」

「コクピット周りに燃料系の保護、その他もろもろで20㎜機関砲ならはじきますよ」

「もはや戦車ね…」

 レーナの説明を聞いて思わずそんな言葉を漏らしてしまいました。

「ダンマークに戦車はありませんからね…」

「いまマリーナにお願いしてベルギーとオランダが共同開発している戦車を購入させてもらえないか打診しているわ」

「そういえば、なんだか低地国家がイギリスの真似をしてなんかしてるって聞いてますね」

「うちのTH-5のライセンスと引き換えも考えてるそうよ」

「まさか航空機用エンジンを戦車に押し込むとは思いませんでしたよ!基礎設計だけもらえば、サイズ感にもよりますけどすぐにでも1000馬力のエンジンをぶち込めるかもしれませんね」

「さすがに入らないと思うわよ?サイズ感が違いすぎるもの」

 まぁでもこっちで改良して出力を上げることはできるかもしれないわね。

 主砲は7.5cm、装甲を斜めに配置した独特なフォルム。

 見た目からも強そうに見える戦車ではありますね。

「しかし、なんで戦車を他国から?」

「もし仮に戦争になったときの防衛網は引いてますけど、戦車の機動力を侮ると、どんな穴をついてくるかわかりませんから、それを防ぐために戦車による”機動防御”というのを陸軍はやりたいそうですのよ」

「あぁなるほど」

「それだけでわかるんですのね?レーナ」

「名称は聞いたことがありますからね、その機動防御ってやつ」


 なるほど、前世の知識ですか。

 という事はもしかするとうちの陸軍にも前世の知識を持つ者がいるのかもしれませんわね…

 ぜひ会ってみたいものですが、たぶん世代が違うのでしょう。

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