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やり直し王女テューラ・ア・ダンマークの生存戦略  作者: シャチ


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革命の足音

 世界各国の食糧事情は最悪の状況となっています。

 ダンマークも例外ではなく、主の輸出品である酪農製品についても輸出量は減少傾向にあり、ダンマーク産のチーズやバターがイギリスやロシアでは宝石や金と交換されるほどの状態になったこともあったと言います。

 戦争による労働力の低下、農作地が戦場となった結果の食糧不足、そして輸送の停滞が主な理由でしょう。

 何せ、ダンマークでは日本から「お米」を輸入するということまでしました。

 さらにはアメリカだけでなく、南米からトウモロコシやジャガイモなどの輸入も行い、それらは海運業のマークスによってバラ積みだけでなくコンテナによる缶詰などの保存食の輸送にも大いに活用されました。

 この間、コンテナ自体しか取れなかった特許は世界各国がないお金を絞って購入することになりました。

 何より大量の物資を効率よく輸送できますからね…軍だって喉から手が出るほど欲しかったでしょう。

 特に、イギリスやフランスはアメリカからの物資の輸入にコンテナ輸送を取り入れ、一時は武器弾薬すら不足していた状況が一気に回復したと言います。

 そして、日本とロシアもコンテナを購入。

 日本で生産された弾薬が船とシベリア鉄道をもって戦地に届けられている状態だそうです。

 それでも、戦争中の各国で優先される輸入品は武器弾薬であり、食料品を輸入しても前線で消費される分に回され、国民が困窮している状態となっているという報告をもらっています。


 そんな中ではありますが、今日も我が家では平穏な朝食の時間が来ました。

「いただきます」

「いただきまーす」

 子供たちが元気にお祈りしてパンを手に取ります。

 今日の朝食は、パンとバター、それにハムと目玉焼きです。

 王家の食事としては貧相かもしれませんが、今の時代十分豪華な食事といえます。

 飲み物はミルクです。紅茶もコーヒーも今は高くて日常的に飲むのは難しくなっています。

 それでも、一般家庭ではバターは無理でも似たような朝食をとることができているのが今のダンマークです。

 前世では金融危機にまで陥り、食糧配給となったダンマークですが、今現在物価は高止まりしつつも政府の制御のおかげで通常の市場原理で食料や日用品を買える状態になっていることを考えると、かなり国が強化されたなと感じますね。

「テューラ、ぼうっとしてどうしたんだい?」

「いえ、ご飯がおいしいなと」

「そうだね…イギリスやドイツではこんなに穏やかな朝食の時間ではないだろうからね」

「お母様、お父様、お食事の時間は楽しく過ごさないといけませんよ?」

「そうね、クリス」

 少々暗い考えになっていたために娘に言われてしまいましたわね。

 私はメイドに頼んでラジオ放送を入れてもらいます。

 チャンネルはクラシックなどの音楽を主に流すチャンネルです。

 ところが、そんな朝食のひと時をラジオが破壊してくれたのです。

「速報です!ロシア皇帝ニコライ2世が退位を表明したということです。詳細は不明ながら、2月末より継続していた国内の反乱による影響と考えられ、ペトログラード・ソヴィエトと呼ばれる犯罪者集団による国家転覆の…」


 ガタンッ


 私は思わず立ち上がった。

 注視はしていました。

 しかし、現実となってしまったロシアで革命がおこったと。

 公的な報道は統制されていましたが、情報局より市民革命のような動きが活発になっているとの情報はもらっていたのです。

 できたのは、国際便の運航停止処置のみ。

 実際3月2日に臨時政府より退位の申し入れがあったニコライ2世は弟のミハイル公爵へ譲ったが、公爵はこれを拒否、そしてこの報道に至ったのだろうとの内容です。

 私は家族に謝罪しながら大慌てで電話に向かった。

「兄につないで!そうクリスチャン10世よ!!」

 交換手をせっついて兄へのホットラインへつないでもらう。

 何をするにも叔母様を救わなくてはならない。

 このままいけば叔母様はすべてを失い失意のままイギリスに行くことになる。

 ニコライ2世を救えなくとも、叔母様だけは母国であるダンマークが救わなくては!

「どうしたテューラ」

「ダウマー叔母様を今すぐにでも我が国に連れ戻すべく外交交渉をしてください」

「すでに動き始めている。イギリスとも話をしている。大丈夫だ安心なさい」

「それとお兄様、国会に対して入国に関する規制の強化と情報の統制をお願いします」

「例の共産主義者の件か」

「そうです、一見まともそうに聞こえ、人に寄り添っているように聞こえますがアレは民主主義を否定し特定の特権階級を優遇する形になる過去の絶対王政時代のやり方と何も変わらないものです。そこに青い血はなく、真っ赤な血が今の大戦よりも流れるだけで国として衰退する未来しかありません」

「わかった。それについてはセーレにも話をする。お前も頼りにしているマリーナとかいう政治家と話してくれ」

「すでにいっぱい話しておりますわ。彼女なら何とかしてくれるでしょう」

「そうか…お前には助けられっぱなしだな…そろそろ切るぞ?まずは叔母を救わねばならない」

「わかりました、それでは」


 *****

 ダイニングに戻り子供たちに再度謝罪し、朝食を再開したがうまくものが喉を通らなかった…

 こればっかりは仕方がないわね。

「あまり無理をしないでくれテューラ」

「そうね、子供たちにも心配をかけたわ」

「まったくだよ、マリーはまだ一歳なんだ、君の慌てた声を聞いて大泣きしていたよ?」

 そう、一昨年35歳で3人目の子供を私は出産した。

 次女のマリーだ。

 前の二人よりも少々年子となったが、まさかこの歳で授かるとは思わなかったのよね…

 クリスも、リックスもマリーのことをかわいがってくれているから、私も安心している。

 ようやくTHI本社にも顔を出せるようになってきたので、次の段階の開発をもっと進めないといけない時期に来ているのよね…

 思ったよりもやることが多い私はもう中年だけれど、まだまだ頑張らないといけないと気を引き締めました。



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