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やり直し王女テューラ・ア・ダンマークの生存戦略  作者: シャチ


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膠着する戦線と変動相場制への移行

 巷で大戦と呼ばれるようになったオーストリア=ハンガリー帝国のセルビア王国に対する宣戦布告に端を発した戦争は、我が国が当初予想していた通りの様相になっていた。

 これは私の前世の知識とは違い、日露戦争へ観戦武官を派遣した陸海軍の分析により考えられていたことで、もともと第二次ジシュレースヴィヒ=ホルシュタイン戦争の敗北から自国防衛について考え続けてきた軍の想定によるところでした。


 ドイツから見て西側、フランス戦線である西部戦線は膠着した。

 ドイツフランス両国が構築したそれぞれの塹壕に阻まれ進軍は停止し後、散発的な戦闘はあったようだが互いに損害を出すだけとなり、それすらなくなった。

 なにより12月のクリスマス時期には両国トップの意向など無視し、ナポレオン戦争や普仏戦争のような”休暇”を楽しんだりしていたそうだが、それは許されないこととなった。

「牧歌的な戦争は終わった」などと呼ばれるこの事象によって、両国は無尽蔵に人、弾薬を消費する戦争へと変わっていった。

 なにより世界を恐怖させたのは、航空機を使った毒ガスの使用だった。

 敵塹壕への砲撃とともに、ドイツは持ちうる航空戦力の中で最大搭載量を誇る鈍重な飛行機による毒ガス攻撃を行った。

 これによる死傷者数は1000人を超えており、ダンマークとして急遽国民に配るためのガスマスクの増産が決定されたほどでした。

 この毒ガス爆撃にたいして、イギリス・フランスも手をこまねいていただけではなく”戦闘機”を使っての迎撃が行われ、ドイツ自陣に墜落した毒ガス爆撃機による被害が発生したようです。

 その後も西部戦線において数回の毒ガス爆撃が行われたが、これは明確なハーグ陸戦条約の”毒”の使用禁止に抵触している行為でしたから、我が国だけでなく、イギリス、フランス、ロシア、さらには味方のはずのオーストリア=ハンガリー帝国からも非難されたドイツはさすがにこれ以降、毒ガスの使用を控えるようになります。


「毒ガス攻撃による兵たち被害は想像を絶するよ…こんなこと許されるべきことじゃない」

「ドイツは勝っても負けても戦後責任を取らされるでしょう」

「そうでなくては、この攻撃で亡くなった方々が浮かばれないよ!」

 ニールス語気が強くなっているわね。

 そうよね、彼は医者だもの。毒がどれほど恐ろしいかだって彼のレポートがダンマークにおいても役に立ったもの。

 別にニールスは人体実験をしたわけではなく、国の産業界、特に化学製品の工場で働く人たちの症状などを見て回ってのレポートを作ったのよ。

 私の助言も少しはあるのだけれど、化学薬品についての危険性について国内での理解が進んでいないと考えてのことだったのだけれど、これによって塩素など化学薬品が人体に及ぼす影響なんかについて動物実験も交えたレポートが作られたのよね。

 これもあって気休めだけれどガスマスクが配られる形になったというわけなのよね。

 初めてガスマスクをつけたときフィリクスは大泣きしたもの。

 今、そんな彼の手には、AH-1のおもちゃが握られている。

 ダンマーク防空のための戦闘機のおもちゃは今かなり人気を博している。

 一部スウェーデンにも配備されていることから、わざわざダンマークまで来て購入する親もいるというぐらいだ。

 現在、各国の航空便は運航を停止している。

 ただし、ダンマーク航空の国内線と国際線だけはまだ運行ができていたりする。

 ダンマークを経由した国外脱出が起こりつつあり、入国審査はかなり厳しくしなくてはならなくなった。

 何せ、ユラン半島の国境は通行可能とはいえ軍の検問があり、まさに一番細くなる国境には国内側に塹壕が張り巡らされている物々しい雰囲気があるから金がある人間は空路でダンマークにやってくるのだ。


 *****

 実はダンマーク、現在金本位制ではなく変動相場制をとっている。

 残念ながら私は金融について詳しくなく、マリーナから説明を受けたけれどよくわからなかった。

 ともかく、スウェーデン・ノルウェー・ダンマークの3か国で金本位制を主体とした通貨同盟は歴史通り終わりを告げたという事らしい。

 現在も、貿易は続けており、メインとなるイギリスとは今も酪農品の輸出が多い。

 ただ、エンジン本体だとかを購入することが難しくなっています。

 まぁ本国で使う分に回されているせいで、こちらに回ってこないという問題ですね。

 ダンマーク本国でもライセンスはもらっていますが、必要数に足らないわけです。

 ここにきて国内産業に影響が出始めましたね。

 その代わり直接的な外貨が大量に国内に入ってきている状態ですわね。

 レーナ曰くそれでイギリスだとかの国債購入だとか、逆にロシアから製品やライセンスやら買いあさるらしいですが、そのあたりはあの二人に任せておきましょう。


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