フレゼリク8世の即位
1906年1月、ダンマーク国王であったお爺様、クリスチャン9世が亡くなりました。
そのため、即お父様がフレゼリク8世としてダンマーク国王となりました。
即位式は直ちに執り行われ、お父様に王位が移ったのですが…
「お父様はもう64歳なのよね…」
「体力的にも落ちてきており、大変心配です」
「そうよね」
「おかあさま、おとおさま」
即位式が終わった翌日の夕飯、家族そろっての食事中、思わずこぼしてしまった私の言葉にニールスが答えてくれた。
娘のクリスティアーネは私たちの声色から心配事であると認識してくれているようだ。
「お爺様が即位されたけれど、体力的にも気力的にも国王として活躍するのは難しいのではと思っているの」
「実際、いくつか持病がおありです。血圧も高く心肺機能に不安があるよ」
前世でお父様の治世はわずか6年に満たないのよね。
これ以上健康に気を付けてと言っても、高齢であることには変わりないもの…
「早めにお兄様に継いでもらう必要があるかもしれないわ…今度相談してみる」
「王国典範では崩御されないと代替わりできないんだよね?」
まぁそうなのですけどね…そうはいっていられない気もするのですよ。
なにせお父様の死後2年で第一次大戦が勃発するのですから…
「今年生まれる子の為にも安定した治世を求めたいのよね」
「…そうだね」
さらっと言いますが、私第二子を身ごもりましてよ。
今はTHIもお休み…というより名誉役員みたいな立ち位置になって前線には立たなくなりましたの。
クリスも3歳ですからね、そろそろと思っていたんですが…まさかこのタイミングになるとは自分でも思っていませんでした。
最近の私の生活は、少しの運動とたっぷりの食事、後は優雅に過ごすだけという感じ。
ニールスは毎日王宮に出向いてお父様の診察を行っております。
そういえば、そろそろ完成するんだったわねシェランタワー。
電探の研究はじわじわ進んでおり、広域の飛行機を発見できるように研究調整中とのこと。
ちなみに、ラジオ放送も始まっています。
ダンマークにおいて初のラジオ放送はお爺様の崩御の知らせとなりました。
アメリカに続き2番目の速さですかね。
と言ってもダンマーク全域はカバーできておらず、シェラン島をカバーする程度です。
まぁまだタワーも完成しておらず実験放送的な物でしたからね。
おかげで、我が家にはラジオがあります。
大きな木製の箱型の物体から、今はクラシック音楽が流れてきています。
「クリスはラジオがお気に入りね」
「うん!」
夕食後のまったりとした時間、クリスはラジオの真正面の特等席で積み木遊びをしています。
本当にラジオが好きなのよね。
音楽に合わせて踊ったりしているのを見るとほっこりします。
*****
お兄様にご連絡をしたところ、一週間後に我が家に来てくださることになりました。
いよいよお兄様も王太子ですわね。
「ようこそおいで下さいました」
「テューラに呼ばれればなんとか時間を作るよ」
「実際すでに実務をされているのでしょう?お兄様」
「ははは、そうだね」
兄に応接室のソファーを勧め私はテーブルをはさんだ向かいに座ります。
「折り入って相談したいのは王国典範についてですわ」
「それについては、私も見直しが必要だと思っている。とはいえ変更することは容易ではない」
兄の言葉に私は頷く。
こればっかりはその通りだ。
「現在王家の仕事というのはそれほど多くない、政治的采配については議会が決め、それを承認するのが王の役目だが、王に拒否権があるかと言われればよほどのことが無い限りNOと言える。これはお前も言っていたことだろう?」
「そうですね。国民が決めたことを今更王がひっくり返すなど普通は有り得ません。
ありうるとすれば”政府が暴走し国民が不満を持っているとき”だけです」
「そのほかは、公務となるが、各国要人との会食などが主だ。それなら私でほとんど用が足りる」
「つまり、国王はお父様でも実務をするのはお兄様ということで調整を?」
「そのつもりだ、外遊についても私がメインで妻と共に赴くだろう」
ダンマーク王家専用機もあるので外遊も楽になりましたしね。
とはいえ、老体に鞭打って無理して渡航する必要が無いなら、それに越したことはありませんね。
この密談の後、お兄様が王太子として国の顔として活動し始めることになるのでした。




