特許の公開と非公開
特許について詳しく説明していなかったので、ちょっと解説を入れました。
レーナによる同軸機銃の研究は極秘プロジェクトとして進められている。
そのため特許を取得しないという方針をとっているのだが、それは特許は"公開"が必須条件であるからなのです。
私も、特許によるダンマーク王国の中立を目指したことから勉強して初めてわかったことではありますが、機械装置も化学プラントも特許を取れば、それは白日の元に晒され"誰でも閲覧可能"となります。
そして、特許で守られる1番のものは、その発明をしたということに対する優位性としての権利。
その特許を使いたければ発明者にお金という対価で権利を使わせてもらい商売にしたりするわけです。
ここで問題となるのは、研究開発を止めることはできないし、特許権が満期を迎えて更新しなければ自由に使えるようになります。
さらに、見つからなければパクられても文句が言えないわけです。
これは難しい問題で、自分の出願した特許がどこまでを範囲に納めているかという件で裁判をする必要があります。
こちらの主張が全て認められるわけではないのです。
つまり、秘匿したい技術については特許申請しないが原則となります。
これは何も科学・工学だけの話ではなく、食品なんかでも起こります。
例えばコーラの成分表であったり、フライドチキンの衣に使う香辛料だったりが有名です。
*****
「というわけで、各国への目眩しとして、現在3カ国で研究が進んでいるレーダーに関する研究成果の一部公開に踏み切りましょう」
「まぁ目先の内容として人目をそらせそうではありますが…」
レーナが言い淀むのもわかる。
後にレーダーがついていない乗り物なんて存在しなくなるレベルの研究成果だものね。
「でも、その有用性に各国が気がつくのは第二次大戦前でしょう?さらに言えば、いまのうちから各国が航空機による攻撃について防備すれば"お互いに攻めにくく"なるでしょう」
そう、それが狙い。
陸には目に見えない国境がありますけれど、空にはありません。
今あるのは"空港"という国の出入り口のみなのです。
と言うのも、まだ各国に軍用機が少なく、領空と言う考えが浸透していないためで、実はダンマークも"領海"についてはしきりに気にしていますが"領空"については一言も発していなかったりします。
それは、領空を監視できないからです。
ですが、正式に防空レーダーができあがれば"領空"を問えるようになります。
そのための基礎研究の公開は逆に必要というものです。
「イギリス、ドイツが認めますか?」
「認めさせるだけよ。空を最も牛耳っているのは我が国よ?特にドイツにも必要でしょう。あそこはすでに20機以上の飛行船がベルリン上空を行き交っている間を飛行機まで飛ぶのよ」
実際ドイツ上空では飛行船と飛行機のニアミスが発生しており、あわや世界初の航空機事故になるところだったのです。
もう時間をずらすだけでは防ぎ切れないだけ空の旅が一般化してきたとも言えます。
「そうですね、その方向でいきましょう…と言っても、まだ実験段階で正確に把握もできなければ遠くまで見えるわけではないですから、本当にサイエンスなんかに載せるレベルでしかないですけどね」
そう、レーダーと言っていますが、1m先の物体のを電波でわかるようになったレベルだったりします。
応用すれば間違いなく空にいる飛行機を発見できるでしょうが、今はまだその力はありません。
「そういえばレーナ、ダンマーク技術委員会にコペンハーゲンに鉄塔を建てる申請をしたわよ」
「本当ですか!テューラ様!!」
待ち望んでいたものね。
「仮に着工できて早くて1905年…できれば完成させて欲しいわね」
「何かあるんです?」
「…いいえ、こちらの話よ」
こればっかりは詳しく言えませんわね。
じつはお祖父様の体調がよく無くなってきています。
国内での仕事はいいですが、外交となると難しくなってきていると言われています。
すでに杖をついていますし…それに、2年後には兄のカールが独立するノルウェーの国王になりますし…翌年1月には前世でお父様が国王になりました。
「あ、そいえばテューラ様、頼まれてたオモチャです」
「あら!ありがとう」
レーナが手渡してくれたのはTHI−103の木製のおもちゃです。
クリスティーナがとても欲しがってしまって、レーナにお願いしたんです。
ちなみに、レーナが作り上げた"おもちゃ"はこれにとどまりません。
彼女の開発したベッドメリーというベビーベッドの上でくるくる回るおもちゃで、
飛行機やトラック、またはお星様や綺麗な丸い玉がくるくる回ります。
あれのおかげで乳母からクリスティーナがぐずった時かなり助かったと聞いています。
小型のモーターを使ってゆっくりと回るこのベッドメリーはかなり人気でして、国内にとどまらず売れています。
特に、飛行機や飛行船がついた物が空港ではバカ売れでして、地味にT H Iの財政を支えていたりします。
「これにはクリスティーナも喜ぶわね」
「まだ2歳ですよね?なるべく尖ったところはないようにしましたし、投げ飛ばしても壊れないとは思いますが、逆にぶつかると痛いですから気をつけてくださいよ?」
「わかったわ。乳母にも伝えておく」
レーナとの会議が終わり私はT H Iを後にして自宅に向かう。
私の周りには黒服に身を包んだ護衛がついて周囲を警戒している。
これは最近進化した要人護衛課のもの達だ。
今年からダンマーク情報局(DIA)と言う名で発足した諜報、防諜を行う組織である。
これに付随して、ドイツで採用された警察機構も取り入れた国内治安維持のための組織となった。
まぁ空港での入国管理もここが管轄となっているので必要な組織ではあったのですが…
これらはマリーナが整えてくれました。
私ではこれほど深く政治に介入ででいませんからね。
王族で一介の役員と言う立場以上を求めるわけにはいかない状態ですから。
マリーナさまさまです




