国際航空法の締結
1900年10月、ニールスとの交際も順調で、互いに仲を深めることができていて、定期的にお茶などをしながら過ごしている。
といってもそれができるのは宮殿の中だけで、外向きの時はまだ”婚約者の居ない王族”という扱いになっている。
さて、そんな私だけれど、今はマリーナ、レーナと共にパリに来ている。
第5回のパリ万博に参加するためだ。
この度、4発旅客機であるTHI-101が完成したお披露目と、各国との国際航空法の妥結を目指しての参加である。
パリ郊外に作られた飛行場に降り立った私たちは、船と同じ入国審査を受けてリッツパリへと向かった。
「一度泊まってみたかったんですよね、リッツパリ」
「まぁ有名な高級ホテルですしね」
「あまりはしゃがないでよ?もう私達も20歳という年齢なのだから」
翌日からはパリ万博のパビリオンを兼ねた会議室でイギリスとドイツを相手に協議を行うことになっている。
なんでこの二国とだけになったかと言えば、世界情勢の影響がある。
ダンマーク王国とイギリスは技術協力もありかなり良好な関係を築いているが、ことフランスに関してはそうでもない。
仏露同盟の影響で、イギリスとロシアの関係が冷え込む中、巻き添えでフランスともあまり好い関係ではない。
まぁもともとイギリスとフランスの仲は悪いわけだが、表向き万博の参加など国際協調を取りつつも外交的にはギスギスというやつで、今回の会談への参加が消極的なのだ。
ダンマークは中立国なので、フランス的には別途同条約を二国間で結ぶつもりらしい。
そして、ロシア。
叔母様の嫁ぎ先だしダンマークとしてはそれほど思うところはないのだけれど、ユーラシア大陸における南下政策についてイギリス・アメリカ・ドイツはいい顔をして居ない。
おかげで、今回の条約会議には参加してないという状態。
せっかくできたばかりの”ダンマーク航空㈱”について国際線が飛ぶのはこの条約終結後という状態の為、まずは二国間でということとなった。
イギリスは我が国と同じく飛行機の開発が順調に進み、2発輸送・旅客機が就航、ドイツは飛行船による大規模輸送をすでに行っているため、今回の締結に関する事前協議はかなり友好的に進んだ。
その日の夜、翌日の打ち合わせの為私の部屋にマリーナとレーナが集まった。
「当初の目論見通り、ドイツのベルリン飛行船場が飛行場と改名され滑走路の建設が完了しましたからダンマーク・ベルリン間、ダンマーク・ロンドン間の飛行が可能となりました。
現在のところダンマーク航空とブリティッシュエアライン、ツェッペリン社を母体とするルフトハンザ飛行船が航路の策定をしています」
レーナが現状について説明してくれる。
「各国ともダンマークが基本をまとめた航空法に賛同してくれています。
入国管理などについての規定は各国基準によりますが、おおむね船の渡航と同じようになります。
なので、空港の保安検査を終えた出国手続きをすると”どこの国にも属さない”という扱いになりますが、刑法や民法についての基準は各国基準に任されることになりますね。
この辺りはお父様も国際基準による警察機構が必要になるだろうとの考えですね」
マリーナが法律関係の説明をしてくれる。
俗にいうICPOの設立は今後必要になるでしょうね。
より簡単に他国へ行けるようになる意味でも国際犯罪は増えるはずですから。
「マリーナとレーナのおかげで、少なくとも国際線としてイギリス、ドイツへの航空機運用のめどが立ったことは喜ばしいことです。
今後はヨーロッパのハブ空港となるべく、その他の周辺国との航空法の締結、さらなる飛行機の航続距離の向上に邁進しましょう」
「「はい、テューラ様」」
翌日、私とダンマーク代表としてヨハン・ヘンリック・ドゥンツァー外務大臣、イギリスのチャールズ・リッチ、ドイツのオスヴァルト・フォン・リヒトホーフェン男爵による調印式が行われ、無事に国際航空法が締結された。
これにより、該当国に対して航路の開示、飛行経路の整合などが行われ、航空機事故防止の枠組みが成った。
空の上では目標はない、高度差を明確にしなければ空中衝突だって起こり得るからだ。
現在、天測航行も含めた飛行方法によって、我がダンマーク王国の航空機はその安全性をかなり高めているので、頑張れば夜間飛行も可能だ。
とはいえ、それは天候に作用されるので、レーナは早いところ低性能でもよいからレーダーを開発したいと躍起になっており、イギリス・ドイツの科学者と共に研究している。
本来航空機が専門なため、電気技術には疎いといっているが、何とか勉強しながら頑張っているとのこと。
両国の”防空網の強化”にもつながってしまうが、旅客の安全を考えると必須の設備になるだろうことから、手は抜けないとのこと。
とはいえ10年以内の導入を考えているとのことで、まだまだ先になる。
しばらくは日が出てるうちの運航のみとなるだろう。
これで、また世界は一歩先に進んだことになる。
そろそろ次の段階として日露戦争前に中立国の立場としての海洋法の発表を行いたいところなのよね…




