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やり直し王女テューラ・ア・ダンマークの生存戦略  作者: シャチ


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ドーバー海峡横断飛行

 1890年7月25日、ついにドーバー海峡横断実演の日を迎えた。

「シャーロット、無理しちゃダメよ何かあったら脱出しなさい」

「お任せくださいテューラ王女殿下、何があっても必ずや成し遂げて見せます!」

「そうじゃないのよシャーロット…」

 私はシャーロットの中で新しい世界を見せてくれた神みたいな扱いになっている…王族だから敬われることはあれど、なんだか崇拝に近いのよね。

 本当に無理しないでほしい。


 ここはドーバー城、アリックスおばさまにお願いをしたらなぜかヴィクトリア女王からお手紙が返ってきて外務省がビビり倒したりしましたが、ここからフランスのカレーに向けてのフライトになります。

 飛行機の性能的には1時間以内で飛び切る予定。

 時速で最大50km程度しか出ないからその程度なのだけれど、この歴史的瞬間を見るためにホワイト準男爵他、イギリスの貴族たちがかなり見学に来ている。

 成功すればいい宣伝になるだろう。

 初飛行が私だったこともあり、貴族女性も興味を示しており購入についての問い合わせもちらほらある。

 が、まだちらほらなのだ。

 なにせガソリン自動車以上に素性のわからない物体。

 しかも空を飛ぶわけだ。

 実際の歴史よりも20年は早く空を飛んでいるのでその目はより懐疑的だ。

 何せパリ万博で連日飛行していたとはいえ、会場上空をぐるっと回る程度の飛行でしかない上に、市民は見ていても貴族は見たことがないものが多いわけだ。

 新聞報道はされているので写真や絵を見たことがある人は多いと思うけれど。


 そして、さすがイギリス。

 このドーバー海峡横断については女王陛下が許可したのもあり新聞報道され、すでに賭けが成立している。

 といっても成否は半々ぐらいでやや失敗が優勢というところ。

 ちなみに私も少し個人資産で成功を買いました。

「いいですねシャーロットさん、いつも通り飛べば問題なくカレーに着きますから。

 向こうでマリーナさんたちが旗を振っていますから、そこに向かって降りてください。

 あと風が強いのでコンパスで必ず方角を見てくださいね」

「はい、大丈夫です」

 レーナさんの話は素直に聞くのね…彼女。

 なおシャーロットさんは、真っ白なツナギを来て茶色の髪をきっちりゆいあげて耳当てつきの革の帽子を被っている。

 サングラスの代わりとなるゴーグルを装着して出国手続きを受ける。

「いよいよですねテューラ様」

「今までの訓練も見ていたから大丈夫だと思うけれどやっぱり緊張するわね」

 私たちは地上待機だ。

 向こうにつけば電報がこちらに届く予定。

 今日のためにダンマークの商船の何隻かも借りている。

 海上に不時着した場合の救助のためだ。

 何もないことを祈るがもしものためだ。

 人命優先。これ大事。


「出国手続きが終わりました」

 イギリスの外交官の一人が私に伝えてくれる。

 私が頷くとレーナが滑走路予定の芝生のはじっこへ走って行った。

 じつは一番心配なのはここ。

 昨日はTHI社員総出でゴミ拾いをしたぐらいだ。

 そしてロープをはってここが滑走路だと目印をつけた。

 離陸後はすぐに崖になるのでフランスまで陸地はない。

 風は微風、穏やかな天気だ。

 海上は少し風があるらしいのが双眼鏡でのぞいた船が掲げるダンマーク国旗でわかる。

 レーナが青い旗を大きくふる。

 社員の男たちがプロペラを勢いよく回してエンジンをかければ、ババババという音が響く。

 これだけでも会場がざわざわするものだ。

 輪止めを外されたTP-03は徐々に加速を始め、小さくエレベーターが動くとふわりと浮き上がった。

 離陸は成功。

 あとはフランス対岸まで無事に飛んでくれることを祈るだけだ。

 私は冷静に見ていたいが、イギリスの貴族たちは冷静ではなかったようでかなり歓声があがる。

「本当に飛ぶとは」なんて声も聞こえる。

 飛ぶんだよちゃんと。

 コペンハーゲンでは最近普通の光景だったのだから。


「無事、飛び立ちましたわね」

「姫様、今のところどうです?」

「順調に飛んでいるように見えるわ」

 私が双眼鏡を覗いているのでレーナが声をかけてくる。

 私が彼女に双眼鏡を渡せばすぐに発見したようだ。

「順調そうですね」

「あれだけテスト飛行したのだからエンジンだってこなれたものでしょう?」

「最初はひどい有様でしたけどね」

 ブリストルから届いた50馬力エンジンは、今の時代としては破格の馬力だったのだが、大問題があった。

 トチる、バタつく、突然止まる。

 エンジンだけで回していてもこれで、プロペラをつけて回し続ければオイルは漏れるし火はつくしでえらいことになったのだ。

 流石のレーナもエンジンのことはさっぱりわからんと匙をなげ、ダンマーク工業大学などの技術者とブリストル社の人間まで呼んでなんとかしたのが今飛んでいる飛行機に積んでいるエンジンだ。

 確かに50馬力はでる。

 常にとは言っていないというやつで、実はちょっとデチューンして積んである。

 じゃないとすぐ壊れるのだ。

 なので実際には30馬力そこそこで動いている。

「思ったより綺麗に飛んでますよ流されてもいないようです」

「とにかくシャーロットが無事にフランスに着くことを祈りましょう」


 *****

「テューラ王女殿下、電報が届きました」

「結果は?」

「ご覧になってテューラ王女殿下から皆様へご報告をしていただければと」

 従者の一人が持ってきた紙を見れば"シャーロットフランスに空から無事入国"と書かれていた。

「みなさま!この度の実験は成功いたしました!私のメイドであるシャーロット・リンデンバーグが無事フランスはカレーに到着いたしました!!」

 わぁ!!と歓声が上がる。

 そのあとはイギリス貴族たちから挨拶の嵐と新聞記者たちから質問攻めにあった。


 フランスではマリーナが質問攻めに合っているだろう。

 私の成功宣言から挨拶に来る貴族たちはぜひ購入したいとお声がけももらった。

 これでようやくTHIが会社として成立し始めるわね。


 そして翌日のイギリスとフランス、ダンマークの新聞にはドーバー海峡横断成功の報が掲載された。

 1ヶ月後には世界各国からT-03の購入希望が山と舞い込むことになったのだった。


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