やりたいことの為には、先立つものが必要(お金ではなく
1889年6月、まだパリ万博は開催されているけれど、私は一足先にダンマーク王国に帰ってきた。
理由は簡単、今まで私の趣味の延長として行っていた飛行機に関する開発をちゃんと会社にするため。
どうしても私が旗頭になるので国営企業の風格がつよいけれど、お父様を含めお爺様も賛同してくれて国会での審議も通り、国防のために無駄につぎ込もうとしていた予算を産業分野へ転換することでその一部の予算を使い、テューラ・ヘビー・インダストリーが設立する。
今までダンマークは軽工業の工場しかなく、重工業については他国に2歩も3歩も後れを取っていた。
そこに、私が機械化された動力飛行機で空を飛んだものだから国民の重工業に対する意識が強化され、必要性を訴えられたわけだ。
量は少ないながらシェラン島の北、フレデリクスバークでは製鉄所や銅の圧延工場があるので、そちらの規模も大きくしてもらわねばならないが、自国でも製鉄はしている。
マリーナは父親と祖父を焚きつけて、イギリスから最新式の製鉄設備と圧延設備などの設備の輸入と国内における鉄道敷設の強化として、フレデリクスバークからコペンハーゲンまでの鉄道の早期敷設を懇願している。
テューラ・ヘビー・インダストリー、通称THIの設立は2年後、それまでに量産可能な実用飛行機の生産開始が直近の課題。
レーナ率いる設計部隊が悲鳴を上げていた。嬉しくないほうの。
そして、ブリストルから改良型のエンジン1号が届いた。
50馬力の空冷エンジンで、今載せているエンジンよりも圧倒的にパワーがある。
レーナ曰く、これでドーバー海峡を越えられるとのこと。
それは是非とも私が乗って達成したい。
グライダーの飛行からここまで1年ちょっとしかかかっていないので、他がまだ追いついてきていないのもある。
なにより特許として技術は公開されているけれど、仮にも各国で特許権を持っているのが我が国という扱いなので、表立って作成できないからだ。
イギリスはすぐに追いついてきそうだけれど…すでにブリストル飛行機では試作機が完成したと聞いている。
そして、外交官たちの活躍でイギリスとロシアから独立保証を勝ち得た。
どちらも叔母様たちがいたおかげの成立だ。
飛行機関連技術の提供というのは大きな意味を持ったと言える。
今はドイツとフランスと交渉中。
フランスは近日中にまとまるだろうと言われている。
万博開催中、毎日のようにエッフェル塔周りを飛び回れば嫌でもフランス人の目に着くので交渉はかなり有利に進んでいるという。
輸出入に関する取り決めまで進んでいるそうだ。
「こうなってくるとますますコンテナによる輸送手段が欲しいです」
「コンテナ?前にパリでも聞いたわね」
今日はマリーナとお茶会中。
「簡単に言うと鉄の箱です。20~40フィート、幅は8フィートほど、高さは8.6フィートぐらいの箱です」
「…なんでフィートなんてつかうの?」
「アメリカなんですよ作られたの」
「なるほど…じゃあメートルに直しましょうよ。イギリスだって今はメートル法よ?」
「そうですねぇ12m×2.4m×2.6mにしますか…」
「まぁ具体的な数値はいいから、その鉄の箱が何になるの?」
「姫は今の船舶輸送ってどうやっているかご存じです?」
それぐらい私も知っている。
こないだイギリスに行くときの港でも見たけれど、大小さまざまな木箱や樽が網をつるしたクレーンで吊り上げられていた。
「つまり、形が一定じゃないので船からの積み下ろしが非効率的なのです。そこでコンテナですよ。
形が決まっているので吊り具を固定してスピーディーに荷物を下ろします。
コンテナをそのまま荷台に積んで移動すればよいので、その場での荷解きは不要となるのです」
「でも重たい鉄の箱なんて馬で引けるの?」
「…あ」
鉄の塊よね?そんなものを馬車が引けるとは思えない。
何頭立ての馬車が必要になることか…。
「しまった、まだトラックもないのか…」
「マリーナ、どうやら技術的な課題があるみたいですわね」
「目先のことだけにとらわれていました。構想だけにとどめておきます」
「必要となりそうなものを書き出して議論してみましょう」
私は紙とペンを持ってこさせてマリーナの考える構想を絵にしてもらいながら話を聞きました。
その必要な物の多いこと。
コンテナを専用に扱う船、下ろしたコンテナを運ぶ自動車や列車、積み替えをするクレーンに、フォークリフトという重機…
「THIで全部作るわけにいかないですかねぇ?」
「そうね、そっちの方向で研究しましょう。飛行機だけ作っていても仕方が無いのだし、まだ他国が作っていない物を先に手掛けるのは良いと思うわ」
「コンテナについても鉄道規格と合うようにしましょう…まだ誰もやっていないんですからダンマークが世界のスタンダードになればいいんです」
そうか、特許だけじゃなく”国際規格”を先に作ってしまえば世界を牛耳れるのか。
マリーナの言葉は目からうろこだった。
これは国として協力しないわけにはいかないですわね。
知識無双するためにはその知識無双をするための基礎技術が必要という話
世の転生者が知識無双するためにはそのベースがすでに開発されていないと実現できないと言う話です




