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293話―絶ち切られし因縁

「ハッハハハハハ!! さあ、ドンドン行くぜ! 残りのスケルトンもてめぇ自身も! 八つ裂きにしてやるよ!」


「やれるものならやってみなさい! チェンジ、重骸装(フォートレス)モード!」


 次々とスケルトンたちが切り刻まれていくなか、アゼルは覇骸装を再度変化させた。普段よりもさらに骨の装甲を増やし、全身を保護している。


「ハッ、守りを固めたってムダだぜ。このオレに切り裂けねぇものは一つもねえ!」


「それはどうでしょうかね、ゾダン。そう簡単にこの鎧は斬れませんよ!」


「なら試してやるよ! 邪戦技、スラッシャータイフーン!」


 左手に持った大鉈を逆手に持ち替え、ゾダンは踊るような力強いステップを踏み始める。攻撃がさらに激しさを増し、四方八方から斬撃が襲ってくる。


 もはや防御に意味はなく、スケルトンたちは呆気なく倒されてしまう。最後に残ったブラック隊長は、せめて一太刀……とゾダンに向かって走っていく。


「このまま倒れるわけにはいかぬ! ゾダン、覚悟!」


「ハッ、てめぇのような木っ端がオレに指一本でも触れることなんざ出来ねえんだよ! 邪戦技、ブラッディマグナム!」


「ぐはっ、まだ……諦めん!」


「てめ……ぐっ!」


 真正面から向かってきたブラック隊長に、ゾダンは血の砲弾を叩き込む。胴体を消し飛ばされながらも、隊長は最後の力を振り絞り剣を投げる。


 淡い金色に輝く剣は、ゾダンの脇腹を貫いた。一矢報いたことに満足しながら、隊長は仲間の後を追い消滅していく。


「あンの糞スケルトンが……! 危うく致命傷を食らうところだったぜ、あぶね……ん? アゼルがいない。どこに消えやがった!?」


 刺さった剣が消えていくのを見ながら、忌々しそうに呟きを漏らすゾダン。視線を前に向けると、アゼルがいなくなっていることに気付いた。


「奴が逃げるなんてことはまず有り得ねえ。だが、あの短時間で一体どこに」


「ぼくならここだ! ポイズンルーン、アポトーシスルイン!」


「ぐあっ! てめぇ、どうやってオレの後ろに回り込みやがった!?」


 周囲を見渡していたゾダンの背後から、アゼルの声が響く。猛毒の魔力を宿した斧の一撃が炸裂し、ゾダンの背中を切り裂く。


 慌ててその場から飛び退き、ゾダンは振り返る。すると、地面から上半身だけが出ているアゼルの姿が目に映った。


「お前たちと原理は違うとはいえ、ぼくも霊体ですからね。レイスフォームをまだ完全に使いこなせていないので、短時間だけですがこうやってモノをすり抜けられるんですよ」


「ハッ、やってくれやがるな。だが、一度タネが割れた手品なんぞもうオレには通用しねえ! 食らいな、ブラッディ……!? なんだ、血を操れねえ」


「見えない斬撃だけでも厄介ですからね。アポトーシスルインで、機能不全にさせてもらいました。もう、お前が血を操ることは出来ません」


 先ほどアゼルが打ち込んだルーンマジックにより、血を操る能力はもう使えない。これで、相手の戦力が大きく削られた。


 後は不可視の斬撃への対策を用い、ゾダンを討つのみ。アゼルはニヤリと笑いながら、地面から飛び出していく。


「チッ、舐めたことしやがって! なら、てめぇを切り刻んでやるよ! 邪戦技、スラッシャータイフーン!」


「ムダです、これまでの攻撃で斬撃の威力は完全に把握させてもらいました。この重装甲を切り裂くことは、もう不可能です!」


「ハン、そんなハッタリこのオレに通じ……!?」


 再度斬撃の嵐を見舞い、アゼルを八つ裂きにしようとするゾダン。が、アゼルが言った通り斬撃は覇骸装の表面を軽く傷付けただけで、本人まで届かない。


「こんな、バカな! オレの斬撃が全く効かねえなんてこと、あるわけが」


「残念でしたね、ゾダン。今日のぼくは、本気なんですよ。全身全霊、本気の本気で――お前たちを、一人残らず殺す。そのための策を、簡単に攻略法出来るとは思わないでください」


 全身から殺気に満ちたオーラを立ち昇らせ、ゆっくりと歩いてくるアゼルを見ながら、ゾダンは身震いする。


 絶対的な強者に対する、恐怖。そして、その強者と死闘を演じることが出来る高揚感ゆえの武者震い。二つの震えを、同時に味わっていた。


「クッ……ククク。クフ、クハハハハ!! お前ってやつは……どこまでもオレを楽しませてくれるな、ええ? ここまで追い詰められたのは、何十年ぶりだろうなぁ、全く」


「楽しそうですね、ゾダン。ぼくも楽しいですよ、今とっても。ようやく、お前たちとの因縁に決着をつけられますからね!」


「ああ! そうだなァ、アゼル! 正真正銘、これがオレとお前の戦い納めだ! 最後まで、ド派手に殺し合おうぜェェェェェ!!」


 逆手持ちしていた大鉈を元の持ち方に戻し、ゾダンは走り出す。アゼルはその場で身構え、盾が装着された右腕を前に突き出し守りを固める。


「飛び道具じゃ切り裂けねえってンなら、直接切り刻むまでよ! オレの怪力で、自慢の装甲ごと八つ裂きにしてやらぁ!」


「いいでしょう、その挑戦受けて立ちます! 逆にお前の頭をカチ割ってやる!」


 修練場のド真ん中で、アゼルとゾダンは直接得物を交え死闘を繰り広げる。金属同士がぶつかり合う重い音が、風に乗ってこだまする。


 トマホークと大鉈の二刀流が華麗に空を舞い、ヘイルブリンガーの重い一撃が地を砕く。どちらも一切退くことなく、ひたすらに相手を攻める。


「クハハ! ほら見ろ、自慢の装甲も少しずつ亀裂が出来てるじゃねえか。このまま、てめぇの腕を落としてやるよ!」


「その減らず口がもう二度と叩けないよう、頭蓋骨を叩き割ってあげますよ、ゾダン! 戦技、アイシクル・ノック・ラッシュ!」


「おもしれぇ、やれるモンならやってみろ! 邪戦技、スラッシャータイフーン!」


 防御を完全に捨て、手数の多さを活かして怒涛の攻めを見せるゾダン。対するアゼルは、一撃の破壊力と装甲の分厚さを頼みに攻防一体のスタイルで応戦する。


「くっ、亀裂がどんどん広がってく……!」


「クハハハ、もう少しだ。もう少しで、てめぇは丸裸になる。そうなりゃ、オレの攻撃を防ぐ方法はねぇぜ!」


「なら、そうなる前に決着をつけます! ソウルルーン、ベルセルクモード! アンド、パワールーン、シールドブレイカー!」


 最初こそ互角だったが、手数の差で少しずつアゼルが押され始める。覇骸装の限界が近いと判断したアゼルは、一気に畳み掛けることを決めた。


 二種のルーンマジックを発動し、果敢に攻め立てていく。今度は逆に、ゾダンが劣勢に立たされることとなった。


「グッ、このっ! なんつうパワーだ、身体強化魔法込みとはいえ……てめぇ、本当にガキなのか!?」


「言ったでしょう? 今日のぼくは本気だって。お前たち闇霊(ダークレイス)に殺された人たちの無念を、怒りを! その全てを背負って、ぼくはここにいる!」


「バカが、死人に思いもクソもあるかよ! なら、てめぇもその無念の沼に沈め! 最終奥義、ダークエンド・セイバー!」


 ゾダンはトマホークと大鉈を重ね、両手で持つ。闇の魔力が得物を包み込み、巨大な剣となってアゼルに振り下ろされる。


「負けない。リジールさんのためにも、お前をここで倒す! 合体ルーンマジック……レイス・ブレイカー!」


「くたばれガキがぁぁぁぁぁ!!」


 アゼルはヘイルブリンガーに魔力を込め、黄金の輝きをさらに強める。朝日のような目映い光を放つ斧と、黒き常闇の剣がぶつかり合う。


 激しいつばぜり合いの末に、ゾダンの持つ剣に亀裂が走り――あっという間に砕け散った。奥義を破られ驚愕するゾダンの胴体に、必殺の一撃が直撃する。


「そんな、バカな……」


「これで、終わりだぁぁぁぁぁ!!!」


「グッ……ガァァァァ!!」


 ゾダンは断末魔の叫びを口にしながら、黄金の輝きに呑まれていく。光が消えた後、アゼルの眼前には奥義の余波で崩壊した修練場があった。


 少し離れた場所にある岩壁に、上半身だけになったゾダンがめり込んでいた。鎧も兜も砕け、自慢の得物二振りはすでにチリと化している。


「……終わりましたね。さようなら、ゾダン。あの世で、自分の犯した悪事の罰を受けなさい」


 レイスフォームを解除し、アゼルはそう呟く。長かったゾダンとの因縁は、アゼルの勝利で決着を迎えた。もう二度と――闇霊(ダークレイス)の脅威が、人々を脅かすことはない。

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― 新着の感想 ―
[一言] あのバカもくたばったか(-_-;)でもあの手のバカは負けて恨むより負けたー乁 ˘ o ˘ ㄏでアッサリ諦めるタイプだから次は地獄で遊ぶとでも思ってるんじゃないか?(◡ ω ◡)
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