292話―激突! アゼルVSゾダン!
カイルとゾアの戦いが始まった頃、アゼルはラバド霊山の山頂にある屋外修練場にいた。寒風吹き荒ぶなか、アゼルはキョロキョロと周囲を見渡す。
「誰もいない。皆、リリンお姉ちゃんたちを襲いに行ってるのでしょうか……いや、一人いましたね。ゾダン、そろそろ出てきたらどうです?」
「ケケケ、バレてたか。にしてもまあ、なんだその姿は。ここにきてオレたちの真似か?」
不穏な気配を感じたアゼルは、振り返ることなく背後に現れたゾダンに告げる。血で錆び付いた鎧を纏ったゾダンが、いつの間にか立っていた。
淡い黄金の輝きを放つ霊体になっているアゼルを見て、茶化すように声をかける。もっとも、ふざけはしても油断は一切していないが。
「真似? とんでもない、こっちがあなたたちの進化形ですよ。わざわざ闇霊の本体を探し出して始末……なんてまどろっこしいことをしなくても、お前を殺せますからね」
「おお、こわいこわい。それが本当だとしたら、厄介極まりねぇーなぁ。ま、こういう時のお前がウソを言うことはないし……本当なんだな、その言葉は」
「ええ。ぼくだけじゃなく、皆使えますよ。だからもう……お前たちが明日の朝日を見ることはありません。ここで全員、死になさい」
ヘイルブリンガーを構え、アゼルはそう冷たく言い放つ。ゾダンを滅ぼし、これまでの長い因縁に決着をつける。
強い意思を感じたゾダンは、ニヤリと笑みを浮かべる。兜を被っているためアゼルには見えなかったが、感情は伝わったようだ。
「クッ……フッ、ハッハハハハハ!! 随分とまあイキってくれやがるぜ、え? 違うな、死ぬのは――てめぇだ、アゼル! 邪戦技、インビジブル・スラッシャー!」
「ガードルーン、イジスガーディアン! リジールさんの無念を晴らすためにも、ここで死ぬつもりはありません。ゾダン! ここでお前を倒す!」
ゾダンは両手に持ったトマホークと大鉈を振るい、不可視の斬撃を雨あられと見舞う。対するアゼルはバリアを張り、攻撃を防ぐ。
「次はこちらの番です! ジオフリーズ!」
「クハハ、お馴染みの吹雪なんざオレには効かねえ! 邪戦技、ボイリング・ブラッド・アーマー!」
「!? 鎧が、波打って……」
ヘイルブリンガーを掲げ、吹雪を放つアゼル。それを見たゾダンは、身に纏う鎧に魔力を宿し守りを固める。
鎧の表面が液体になったかのように不気味に波打ち、少しずつ熱を持ち始める。あっという間に湯気が立ち、鎧が沸騰した。
熱く煮えたぎる血の鎧が吹雪の威力を弱め、無効化してしまう。再度不可視の斬撃を放ちながら、ゾダンは得意げに叫ぶ。
「クハハハハ! オレの鎧兜には、これまで殺した奴らの血が染み込んでんだよ。ソレを操れば、こんな芸当も可能なのさ!」
「相変わらず、滅茶苦茶なことをしますね。まあ、こっちももう慣れっこですけど! サモン・ボーンビーの群れ!」
飛んでくる斬撃を勘で避けながら、アゼルは大量の骨のハチを呼び出す。アゼルの姿が隠れてしまうほどの、物凄い大群だ。
レイスフォームを発動している最中だからか、ボーンビーたちもまた半透明な金色の霊体と化している。
「ハッ、こっちの注意を逸らそうってか? 今さらハチ如きで視線逸らすもんかよ!」
「いいえ、違いますよ。さっきぼくが言ったことが嘘じゃないって、身をもって教えてあげようと思いましてね! ボーンビー、ゴー!」
「ハッ、くだらねぇ。いいぜ、来な。どれだけ攻撃されようが、痛くも痒くもねえんだよ!」
アゼルの言葉を受け、ゾダンはあえてノーガードでボーンビーの群れが襲ってくるのを待つ。どうせハッタリに過ぎない。
本人ならともかく、使役されるスケルトン如きに致命傷を食らうはずもないとタカをくくるゾダン。が、針で刺された瞬間、それが過ちだと悟る。
(!? この魂が焼けつくような痛み……これまでとは明らかに違う! まさか、本当に直接魂を滅ぼせるってのか? このチッポケなハチが?)
「どうしました? 急に黙っちゃって。今さらになって怖くなりましたか?」
「うるせぇ奴だ、この程度どうってことはねぇ! 邪戦技、ブラッディシュトローム!」
鎧の隙間から的確に針を刺してくるボーンビーを無言で叩き落としているゾダンに、アゼルが挑発の言葉をかける。
鎧の表面から煮えたぎる血の渦を発射してボーンビーを全滅させながら、ゾダンは叫ぶ。直後、狙いを定め右手に持ったトマホークを投げた。
「食らいな! 邪戦技、ブーメラントマホーク!」
「そんなもの、叩き落としてあげますよ! 戦技、アックス……」
「バカめ、かかったな! 邪戦技、ブラッディサーバント!」
「分裂!? くっ、まずい!」
真正面から飛んでくるトマホークを両断しようとするアゼル。次の瞬間、トマホークが二つに分裂し軌道が変わった。
左右から挟み込むように襲ってくるトマホークを、アゼルは前転で避ける。が、その隙をゾダンが見逃すわけもなく、勢いよく飛び掛かる。
「チャンス! 邪戦技、スカルクラッシュ!」
「まず……うああっ!」
真上から振り下ろされた大鉈を、アゼルは横っ飛びで避けようとする。が、完全に避けられず右の足首を両断されてしまう。
「獲ったぜ、てめぇの足を。これでもう、まともに動けねえなぁ!」
「普通なら、ね。でもぼくにはコレがある! エンチャント・ターンライフ! ハッ!」
機動力を大きく削ぎ落とされたことで、圧倒的に不利な状況に追い込まれた……かと思われたが、抜かりはない。
アゼルは自身に蘇生の炎を宿した後、即座にヘイルブリンガーで己の首を落とした。直後、死者蘇生の力が発動しアゼルは五体満足な姿で復活する。
「おーおー、すっかり忘れてたわ。厄介極まりねーその力をよ。相変わらずタチが悪いぜ、死者蘇生ってやつは」
「炎を生み出す魔力がある限り、ぼくは何度死んでもよみがえる。手足をもがれようともね!」
「そうかい。なら、手足全部もぎ取って、自害出来ねえようにしてから封印してやるよ! 邪戦技、インビジブル・スラッシャー!」
「やれるものならやってみなさい! サモン・スケルトンナイツ!」
床に落ちたトマホークを手元に呼び戻し、ゾダンは不可視の斬撃の嵐を見舞う。アゼルはスケルトンの騎士たちとブラック隊長を呼び出し、応戦する。
「皆、突撃です!」
「お任せを、マスター。お前たち、マスターを守りながら進むぞ!」
スケルトンたちが壁になってくれるおかげで、アゼルは斬撃を防ぎつつ距離を詰めていく。対するゾダンは、少しずつ後退しながら一体ずつスケルトンを確実に仕留める。
「何体でも呼びやがれ、アゼル。全員八つ裂きにしてやるからよぉ!」
「いいですよ? ぼくも攻撃させてもらいますけどね! チェンジ、射骸装モード! 戦技、ボーンネイトアロー!」
アゼルは一旦ヘイルブリンガーを消し、覇骸装を変化させて両腕のボウガンによる狙撃を行う。スケルトンを補充しつつ、同時に攻撃も仕掛けていく。
「フン、ムダだっつうのによくやるぜ。その鎧やスケルトンごと、てめぇを切り刻んでやるよ! 邪戦技、ブラッディドリルランチャー!」
「マスター、来ます! 我らの後ろに!」
「分かりました、隊長!」
全員を一網打尽にすべく、ゾダンは切り札を解放する。鎧の胸部分に血が集まり、無数のドリルが発射された。
ブラック隊長を中心にスケルトンたちはスクラムを組み、アゼルを守る。ほとんどのスケルトンが倒れるも、アゼルは無傷でやり過ごせた。
「ありがとうございます、隊長!」
「お気になさらず。マスターを守るのが我らの使命ゆえ」
「皆に守ってもらったおかげで、ゾダンの攻撃を防ぐための用意は整いました。さあ、反撃開始です!」
アゼルとゾダン、二人の戦いはまだ終わらない。




