287話―決戦! 暗黒の島へ!
戦いが終わってから、五日が経過した。ガルデールの襲撃によって亡くなった者たちは、リジールを除きアゼルの手で蘇生された。
半壊した城の復興が進むなか、タリスマンの修復を終えたアゼルはカイルとある相談を行う。闇霊たちの本拠地へ乗り込み、撃滅するための計画を立てているのだ。
「……つまり、奴らの拠点はこの大陸にはない、と」
「ああ。奴らは、西の海の果てにある島に居を構えてる。そこから転移ポータルを使って、大陸のあちこちにネクロマンサーを派遣してるんだ」
「なるほど、そういうことでしたか。なら、すぐに乗り込みましょう。もう、リジールさんのような犠牲を出したくはありません。この機会に、霊体派の奴らを……一人残らず、滅ぼしてやる」
リジールの死にショックを受けたアゼルは、これまでにないほど闇霊へ強い憎しみを向けていた。その思いを、カイルも理解している。
「お前一人だけに任せるつもりはないぜ。兄として、元霊体派の一員として……オレも同行する」
「ありがとうございます、兄さん。時間も惜しいですし、すぐに」
「待て、アゼル。水臭いな、私たちには声をかけないのか?」
手早く荷物を纏め、宿を出ようとするアゼルたちの元にリリンが現れる。彼女の後ろには、仲間が勢揃いしていた。
皆、リジールの弔い合戦に参加する気満々なのだ。
「これから召集しようと思ってたんですが……皆、力を貸してくれますか?」
「当たり前だ。そうでなければ、ここまで共に旅した意味がない」
「ド派手に暴れてやろうぜ、アゼル。闇霊どもにゃあ、これまで散々手ぇ焼かされてきたんだ。ここいらでお返ししてやろうじゃねえの」
アゼルの言葉に、真っ先にリリンとシャスティが答える。最古参たる二人だからこそ、誰よりもアゼルの力になりたいと願っているのだ。
「わたくしもお供しますわ。これ以上、悲劇を生んではなりません。今ここで、血塗られた歴史に幕を下ろさなければ!」
「うん、あたしも手伝う! あいつらのやり方、許せないもん!」
アンジェリカとメレェーナも、ガルデールたちの所業に怒りをあらわにしていた。二人とも、とうとう堪忍袋の緒が切れたらしい。
「余も同行する。短い間だったとはいえ、主従の絆で結ばれていたのだ。仇を討たずしてなんとする。アゼル、すぐにでも出立しよう」
「ええ、もちろん! 兄さん、道案内お願いします」
「任せな。最短経路で突入出来るよう、バッチリ案内してやるよ。さあ、出発だ!」
宿を出たアゼルたちは、三体のボーンバードに乗り込み王都を発つ。長きに渡って続いてきた、闇霊との戦いの歴史に終止符を打つために。
愛する者たちを守るため、自ら命を捧げた戦士の魂を慰めるために。心に怒りの炎を宿し、アゼルたちは遥か西へ向かう。
「覚悟しなさい。一人残らず、殲滅してやる……!」
アゼルたちの復讐が、始まる。
◇―――――――――――――――――――――◇
「報告致します、総帥殿。ガルデールとレーゼルマンが敗れ、死亡しました」
「……そうか。して、例の者たちは?」
「魔力反応がこちらに近付いています。恐らく、乗り込んでくるつもりかと」
「くくく、だろうな。総出で迎えてやらねばなるまい。残る最高幹部と屍肉派の者らを集めよ。歓迎の準備だ」
同時刻、霊体派ネクロマンサーたちの拠点があるラバド霊山ではアゼルたちを迎撃する準備が着々と整えられていた。
全戦力を集結させ、拠点の各地に設置されたトラップを起動させる。総帥であるゾアは、玉座に座ったまま一人笑う。
「くくく、カイルの手引きか。ちょうどよい、ここで不肖の弟子には儂の残機になってもらうとしよう」
「そう上手く行くかねぇ? ヤツも手練れだ、簡単に命獲らせるようなヤツじゃねえぜ?」
「……ゾダンか。我が孫よ、例の末裔の始末は任せる。思う存分、斬り刻んでやるがいい」
「元からそのつもりよ。今から楽しみだぜ、あのガキを八つ裂きにするのがな……」
背後から現れたゾダンに、ゾアはそう声をかける。ゾアにとって、標的はカイルただ一人。一方のゾダンも、アゼル以外は眼中にない。
「奴らは転移を繰り返し、この島を目指している。もうすぐ到着するだろう、抜かるなよ」
「ジジイの方こそ、ヘマやらかすなよ? ま、あんたは死んだところで問題ないけどな」
「そうだ。我が内には一億の命が宿っている。全て尽きぬ限り、儂が滅びることはない……くくく、クハハハハハハハ!!」
閑散とした玉座の間に、ゾアの笑い声が響いた。
◇―――――――――――――――――――――◇
「この海域を越えればもうすぐ着くぞ! 全員、準備しておけよ!」
「ええ、了解です!」
王都を出たアゼルたちは、一時間ほどで西の海上に出ることが出来た。カイルのバレットスキンによって短距離ワープを繰り返し、目的地を目指す。
「カイルよぉ、こんな便利なこと出来るんだったら何で今までやんなかったんだよ?」
「しょうがねえだろ、ワープバレットは目的の場所がハッキリ分かってる時じゃないと使えないんだ。でも安心しな、今回は何も問題ねえからよ!」
シャスティの問いに答えつつ、カイルは弾丸を発射しボーンバードたちに着弾させる。すると、数十キロ前方の海上に転移した。
しばらく普通に進んで魔力をチャージし、必要量が溜まったらまたワープ……を繰り返す。そうして、アゼルたちは一時間半ほとで目的地に到着する。
「見えたぜ。あれが霊体派ネクロマンサーたちの拠点……ラディマ・ディモーレ島だ。中央に聳えるラバド霊山に、奴らは潜んでる」
「随分と大きな山だな。アゼル、望みとあれば余が山ごと吹き飛ばすがどうする?」
「いえ、その必要はありませんよアーシアさん。せっかく切り札を授かったんですから、このまま乗り込んで――一人残らず、殺します」
前方数十メートル前に聳える断崖絶壁の島を前に、アゼルはそう口にする。アーシアは頷きを返し、得物である槍を呼び出す。
リリンたちもそれぞれの得物を呼び出し、ディアナから貰ったマジックシールを身体に貼っていつでも戦えるよう準備を整える。
「その答えを期待していた。奴らに慈悲は与えん、苦しみに満ちた死を与えてやろう。大魔公の名にかけてな……!」
「皆やる気は十分だな。よし、行くぞ。アゼル、山のふもとに広場が見えるだろ? そこから山形の内部に入れる。一気に突撃しちまおう!」
「ええ! ボーンバード、ゴー!」
アゼルの掛け声を合図に、三体のボーンバードは島へ突撃する。崖を越え、広場を目指していると山の中から数十人のネクロマンサーたちが現れた。
全員が弓や杖を装備し、中には移動式の大砲を引っ張り出してきた者もいる。皆霊体だが、黒ドクロの水晶は反応を示さない。
「敵の本拠地だけあって、黒ドクロの水晶は効果を発揮出来てませんね。ま、問題はないのでいいですが」
「アゼル、攻撃が来るぜ。こっちはどう出る?」
「ここはぼくに任せてください。奥義、レイスフォーム!」
アゼルはレイスフォームを発動し、黄金に輝く霊体と化す。その状態でヘイルブリンガーを呼び出し、前方に向ける。
「奴らが来る、総員攻撃開始! 撃てー!」
「一人残らず、凍らせてやる! ジオフリーズ!」
広場に陣取った霊体派ネクロマンサーたちの攻撃が始まり、矢や魔法、砲弾が飛んでくるなかアゼルはヘイルブリンガーから吹雪を放つ。
激しい吹雪は敵の攻撃を跳ね返し、叩き落としていく。それだけでなく、霊体と化したネクロマンサーたちをも凍らせてしまった。
「ば、バカな! 本体を攻撃されたわけじゃないのに、凍って……」
「た、助けてく……れ……」
逃げる間もなく、迎撃に現れたネクロマンサーたちは物言わぬ氷像と化した。ボーンバードが着陸した衝撃で、いくつかが砕け散る。
「呆気ないものだな。レイスフォーム……侮れぬ力だ」
「ぼくも驚きましたよ。でも、これがあれば闇霊たちを倒せますね。さあ、行きますよ皆!」
「おおー!」
無事広場に到着出来たアゼルたちは、霊山内部に突入していく。闇霊との最後の戦いの幕が今、上がった。




