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252話―ボーン・オールスターズ!

「はあ、はあ……。やっぱり、強い……!」


「よく耐えるものだ。だが、汝の用いる魔術の大半はすでに施錠(ロック)された。もう、打てる手もないのではないかな?」


 数十分が経過し、アゼルはいよいよ進退窮まる状態に追い詰められていた。未だ解放していない七つ目のルーンマジック以外、全て封印されてしまったのだ。


 ベルセルクモードの効果も徐々に薄まっていき、身体能力も元に戻りはじめている。このままでは、敗北は免れられない。


「打てる手が、ない? それは違いますよ。ルーンマジックを封印させたのは、ワザとです」


「……ほう、それはどういうことだ?」


「あなたの鎧に浮かぶ鍵穴の模様と、封印出来る能力の数は連動している。そうでしょう? だから、封印出来るのはあと一つだけ」


「そうだ。だが、それがどうしたというのだ。ストックを使いきったとして、汝が優位に立つことはない」


 アゼルの言葉の意図が読めず、ジゼラは訝しげに答える。対して、アゼルはニヤリと笑いながらヘイルブリンガーを頭上に掲げた。


「なら! 奥義、ジオフリーズ!」


「むっ……吹雪か!」


 凄まじい吹雪が放たれ、宝物庫の入り口周辺を覆い尽くす。氷雪に紛れ、アゼルはこっそりと相手の背後に回り込む。


 このまま不意打ちを決められれば、それでよし。例え避けられ、ジオフリーズをも封じられたとしても……アゼルには、次の策がある。


(……今だ!)


「ぬ……そこか! フンッ!」


「わっ、ダメか!」


 ジゼラは気配でアゼルの居場所を察知し、振り返りつつ剣を振り下ろす。アゼルは凍結した床を滑り、攻撃を避けつつ距離を取る。


「なかなか考えるな。だがムダだ。錠魔法、施錠(ロック)


「まずいですよ、これは。これでは、アゼルさんの反撃の手段がもう……」


 ジオフリーズすらも封印され、吹雪の勢いが衰え弱まっていく。もうダメだと、フラフィが諦めかけたその時。ジゼラともども、目を見開き驚く。


施錠(ロック)を使いきりましたね? これでもう、心配はありません。全力でいかせてもらいます。サモン・スケルトンオールスターズ!」


「なっ! なんだ、この大量のスケルトンは!?」


 アゼルはヘイルブリンガーを床に叩き付け、魔力を解放する。すると、これまでの戦いで呼び出してきた多種多様なスケルトンが一斉に現れた。


 ルーンマジックを封じられた時点で、少年は考えていた。攻守の要である各種魔法を封じられ、覇骸装も装備していない。


 そんな状況の中、一人で戦うなど無謀にも程があると言える。――そう、()()()()()()()


「あなたの魔法を見て、ルーンマジックを封じられた時……閃いたんですよ。ここはもう、ネクロマンサーの基本に立ち返り……数の暴力で押すしかないって! スケルトンズ、ゴー!」


「フッ、面白い。かかってくるといい。全て返り討ちにしてやろう!」


 総勢三百はいるだろうスケルトンの群れを前に、ジゼラは闘志を燃やす。剣を横凪ぎに振るい、最前列にいたスケルトン数体を吹き飛ばした。


 が、それで終わるわけもなく今度は上空からボーンバードの群れが襲撃してくる。それに加えて、ブラック隊長率いるスケルトンナイトも攻撃を行う。


「久方ぶりの戦闘だ。お前たち、マスターの期待に応えよ! あのデカブツを仕留めるのだ!」


「ケケケケケケケ……」


 スケルトンたちは顎をカタカタ鳴らしながら、不気味な笑い声を漏らす。物陰から見守っていたフラフィは、異様な光景に青ざめていた。


「な、なんですかあの骨の群れは……。ネクロマンサーって、みんなあんなこと出来るんです……? ん? アゼルさんはどこに……」


 大量のスケルトンにたかられ、身動きが取れなくなっているジゼラを眺めていたフラフィは、いつの間にかアゼルの姿が見えなくなっていることに気付く。


 自身が呼び出したスケルトンたちに混じり、こっそりと進軍していたのだ。ジゼラがボーンバードの対処に追われている間に、ブラック隊長の元へ向かう。


「隊長、隊長。あの鎧の人の胸元、見えますか?」


「おお、マスター。見えますとも。何やら、亀裂が走っていますが」


「みんなを呼ぶ前に、ぼくがつけておきました。あの亀裂を集中攻撃して、鎧を砕いてください。彼……ジゼラさんを倒すには、それしかありません」


「かしこまりました。お前たち、ゆくぞ!」


 アゼルに残された魔力の残量は多いが、油断は出来ない。ジゼラの得意とする長期戦に持ち込ませず、一気に叩く必要がある。


 唯一の勝機が、先ほどの前哨戦でつけた鎧の傷だ。全員で協力して亀裂をさらに広げ、砕く。そして、露出したジゼラの本体にトドメを放つのだ。


「ボーンアーチ、一斉発射です!」


「骨の矢か……。ならば撃ち落とす! クリスタル・ブレス!」


 フラフィのいる物陰の近くに、骨で出来た矢の発射装置が四機出現する。鎧の傷目掛けて、一斉に矢が放たれた。


 ジゼラは再びブレスを吐き、矢を結晶化させて勢いを殺し墜落させる。が、その間に他のスケルトンたちの攻撃を許してしまう。


「今だお前たち、脚を崩せ!」


「ぬっ……まずいな、今回ばかりは悠長に戦っていられぬか! なれば、切り札を使わせてもらおう」


 鎧の傷という弱点を抱えた状態での持久戦は不利と考えたジゼラは、アゼル同様短期決戦で決着をつける戦法に切り替えた。


「奥義……守護者ニーズヘッグの鋼殻!」


「! マスター、奴の鎧が変形していきます! このままでは……」


「大丈夫。隊長、二人で……変形が完了する前に倒しますよ!」


 ジゼラが纏う鎧が、巨大な四足歩行の竜へと少しずつ変化していく。完全に変化しまえば、これまでの苦労が水の泡になる。


 その前に決着をつけるべく、アゼルはブラック隊長と合流しながら指示を飛ばす。


「スカルタイタン、ぼくたちを掴んでブン投げて! おもいっきり! 他のみんなは、全力で変形を妨害して!」


「カカカ……カーカカカ!」


 近くにいた骨の巨人の力を借り、アゼルたちは猛スピードでかっ飛んでいく。狙うは、鎧の亀裂。変形しつつある他の部位に覆い隠されてしまう前に、一気にブチ抜くつもりだ。


「いっけぇぇぇ!!」


「させぬ! クリスタル・ブレ……くっ、邪魔な骨たちめ、離れろ!」


 アゼルたちを迎撃しようとするジゼラだったが、スケルトンたちに群がられて攻撃するチャンスを潰される。ロクに動けない敵に、アゼルたちが突っ込む。


「食らえ! 戦技、ダブルボーンストライク!」


「ぐ……ぬおあっ! くっ、まだだ……!」


「ならば、このブラックめが最後の一押しをしましょう。フンッ!」


「なっ……」


 全力を込めて振り抜かれたヘイルブリンガーが、鎧の亀裂に食い込む。そのまま亀裂を広げながら突き進むも、わずかに勢いが足りない。


 そこへ、アゼルと共に飛んできたブラック隊長がダメ押しとばかりに剣を叩き込む。鎧の一部が完全に砕け、破片が散らばる。


「このままトドメです! 戦技、アックスドライブ!」


「ぐっ……がはっ!」


 鉄壁の守りを崩されたジゼラは、呻き声を漏らし崩れ落ちる。変形の途中だった鎧が機能不全に陥り、地に落ちた衝撃で砕け散った。


「か、勝った……ふう、よかった。結構ギリギリでしたね……」


「……見事だ。我を倒してみせるとはな。よかろう、汝の力を認め……宝物庫への立ち入りを許可しよう」


 力を使い果たしたアゼルも座り込み、スケルトンたちが消えていく。上半身が剥き出しになったジゼラは、残りの魔力で鎧を修繕しつつアゼルを讃える。


「行くがいい。汝の望むものがあるのだろう? 施錠(ロック)はこちらで解除しておく。心配はするな」


「ありがとうございます、ジゼラさん。フラフィさん、行きましょう!」


「は、はい!」


 ジゼラを下したアゼルは、宝物庫の中へ足を踏み入れる。覇骸装を取り戻すために。


 ――雷霆の四肢、ジゼラVSアゼル。アゼルの勝利により、終局。

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― 新着の感想 ―
[一言] 封印能力は基本後出しで回数制限が原則だが(↼_↼) 長期戦ではカナリ厄介なスキルになるぞ(ʘᗩʘ’) 決闘なら相手の勝ちだった此方はネクロマンサーとして勝ってみせたか(゜o゜;
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