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236話―復讐と償い

「ハハハハハ!! 返り討ちだぁ? ナメたクチ利いてんじゃねえぞクソガキが! 死ぬのはてめぇだ!」


「負けない……絶対に! ソウルルーン、ベルセルクモード! 戦技、アイシクル・ノック・ラッシュ!」


「あたしもいくよ! ダークメタモルフォーゼ、ブレードマンティス!」


 両足に力を込めて跳躍し、アゼルはグリニオに先制攻撃を仕掛ける。ルーンマジックで身体能力を強化し、ヘイルブリンガーを振るう。


 そこにリジールも追従し、目にも止まらぬ斬撃の嵐が叩き込まれる。グリニオは無造作に右腕を振るい、アゼルたちを振り払った。


「うわっ!」


「ううっ……!」


「効かねえよ、そんなのは。すげえだろ? この身体はよ。なんつったか……てめぇらに倒された神の身体を移植されてんだ、そう簡単に傷は付けられねえぜ」


「神の身体……? まさか!」


 グリニオの言葉に、アゼルは思い当たる節が一つあった。以前、堕天神騒動の折にプリマシウスの城へ立ち寄る機会があった。


 その時、プリマシウスは言っていた。引き取ってもらいたいモノがある、と。結局、その後のごたごたで有耶無耶になってしまったが。


「あの時引き取れなかったモノがガローの遺体だとすれば……プリマシウスさんの城の宝物庫を荒らした賊は、ラ・グーの……」


「その通りさ! ラ・グーのヤツはずっと欲しがってたんだよ。強大な力を持つ神の亡骸を! この右腕も、ヤツの遺体から移植されたものだ!」


 愉快そうに笑いながら、グリニオは丸太のように太く頑強な腕を見せつける。そんなグリニオに、リジールは小バカにするような笑みを向けた。


「ああ、そうだよね。アンタの腕はディアナに使い物にならなくされちゃったから。あの時のアンタの絶望っぷり、今思い出しても笑えてくるよ」


「なんだと……?」


「り、リジールさん? 何だか昔の性格に戻りかけてません?」


 グリニオと再会したことで、どん底に転落する前の高飛車な性格が少しずつ戻ってきたようだ。元の姿に戻ったリジールは、全力で相手を煽る。


 その間、リジールはこっそりと片手を背中に回しアゼルへハンドサインを送る。意図に気付いたアゼルは、こっそりとグリニオの後ろに回り込む。


「だいたい何さ。強くなった気でいるようだけど、アンタのその身体はただの借り物なんだろ? よくまあそんな自慢出来るもんだね、笑えてくるよ」


「このアマ……調子に乗るんじゃねえぞアバズレが! てめぇも自慢の顔をボロ雑巾にされてただろがよ! 事と次第によっちゃ、もう一度にオレの仲間……いや、奴隷にしてやろうと思ったがもういい。殺してやる!」


「奴隷? アンタが? あたしを? プッ、寝言は寝てから言えよゴミ。ラ・グーにちょっとイイコトしてもらったからって」


「死ねぇぇぇぇぇ!! 邪戦技、インパクトノックナーグル!」


 リジールの言葉を遮り、怒り心頭なグリニオは勢いよく飛びかかる。僅かに身体を反らして攻撃を避けたリジールは、アゼルに向かって叫ぶ。


「今だよ、アゼル! ダークメタモルフォーゼ、イーヴィルミラー!」


「はい! ジオフリーズ!」


「なっ……!? てめぇ、いつの間に!」


 リジールを挟んで、アゼルとグリニオが一直線に並んだ。大きな鏡の魔物へ変身したリジールに、アゼルは猛吹雪を打ち込む。


 鏡を通して威力が増幅した吹雪が、グリニオに襲いかかる。このまま全身を凍結させ、砕いてしまえば……そう思っていたアゼルは、次の瞬間目を見開く。


「んな小細工、効かねえんだよボケどもがぁ! バーニングメイル!」


「あの姿は……! グリニオが、魔獣に!」


「まさか……あいつも、あたしみたいな力を?」


 吹雪が当たる直前、グリニオは猿のような毛むくじゃらの魔獣へ姿を変えた。口から吐き出した炎を身体に纏い、吹雪を打ち消してしまう。


「ククク、驚いたか? オレに移植されたのは神の身体だけじゃねえ。内臓のほとんどを、魔獣のソレに取り替えてあるのよ。だから、こんな風に……力を使えるのさァァァ!!」


「うわっ!?」


「アゼル!」


 グリニオが指を鳴らすと、アゼルの影の中からタコのソレに似た触手が現れる。対応する間もなく、アゼルは触手にビンタされズィヴノの方へ吹き飛ばされた。


 邪竜の身体に激突するのと同時に、触手が巻き付き身動きが取れないようにされてしまう。どうやら、グリニオは先にリジールを倒すつもりのようだ。


「まずはてめぇだ、リジール。気に食わねえ……お前もオレやダルタスのように、どん底に落ちたクセによ……何でてめぇだけ、這い上がってやがる。許せねえ……許せねえよなァァァ!!」


「知ったことじゃないよ、そんなつまらない嫉妬なんてさ。ダークメタモルフォーゼ、アシュラ・クルセイダー!」


 リジールは六本の腕を持つ人型の魔物へ姿を変え、アゼルを守るべくグリニオの前に立ちはだかる。対するグリニオは、巨大な棍棒を呼び出し構えた。


「なぁ、リジール。何でだ? あの日、オレたち三人は皆等しく屈辱を受けた。腐れガイコツとその仲間のアバズレに捕まって、ありとあらゆる苦痛を味わった」


「そうだね。知ってるよ、そんなことは!」


 剣、斧、槍、鎚。六本の腕それぞれに、種類の違う武器を持ちリジールはグリニオを迎え撃つ。憎しみに任せて棍棒を振るい、グリニオは彼女を叩き潰そうとする。


「それだけじゃねぇ。ボロ雑巾にされて解放されたオレたちは、犯罪奴隷に落とされた。そうだろ? てめぇだって、アゼルのせいで苦労したはずだ。なのに」


「何でアゼルの味方をするのか、って言いたいんでしょ? そんなの決まってるさ。あたしは、自分のしでかした罪を悔いた。その償いをするために、ここにいる!」


「償いだぁ? ハッ、お前も落ちたもんだな。自分がどん底に落ちた元凶に、ペコペコ頭を下げるなんて……よ! 邪戦技、デモリッションクラッシュ!」


 リジールを嘲笑いながら、グリニオは右腕に力を込めて棍棒を振り下ろす。直撃こそ避けられたが、風圧で動きを封じられたところに衝撃波が襲いかかる。


 受け身を取ることも出来ず、リジールは吹き飛ばされ壁に叩き付けられる。反撃などさせないとばかりに、追撃が放たれた。


「う、ぐ……」


「逃がすかよ! 邪戦技、デモリッションストーム!」


「くっ、戦技……プロテクション・オーラ!」


 闇の力が込められた波動が、リジールをバラバラにせんと放出される。リジールは六本の腕を重ね、バリアを作り出すことで辛うじて耐えきった。


「チッ、防ぎやがったか。今の一撃で仕留めてやるつもりだったのに」


「そうはいかないよ。あたしにはまだやることが残ってる。こんなところで死んでちゃ、償いは出来ないからね」


「償い、償い、償い! てめぇはそればかりだな!

何故そこまでこだわる? なんでアゼルを怨まねえ! オレたちは」


「怨む? アゼルを? 何でさ、あれはあたしたちの自業自得。当然の報いだよ。奴隷として売られた娼館からも捨てられて、物乞いに落ちて……あたしは、ようやく気付いたんだ!」


 槍を投げつけてグリニオを牽制しつつ、リジールは壁から離れ部屋の中央に陣取る。完全に攻撃を防げてはおらず、身体のあちこちに傷を負っていた。


 それでも、彼女は退かない。今自分が退いてしまえば、無防備なアゼルがグリニオの餌食になってしまうからだ。それだけは、させられない。


「てめぇ、まだ言うか!」


「言うさ。アンタをぶっ殺すまで何度でも言ってやるよ。今のあたしを、昔の高飛車なだけの女だと思ってると痛い目に合うよ、グリニオ。アゼルが復帰するまで、アンタをボコボコにしてやる!」


 そう叫び、リジールは不敵な笑みを浮かべた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 一歩間違えば二人揃ってアゼルに復讐するんだで此処に居たかもしれない二人だけど(-_-;) どん底だけに自覚するか、自覚しないかでここまで運命の光と闇に別れるとは(-_-メ) 色々グチャグチ…
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