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229話―突入! 邪竜の住まう城へ!

「ほーん、なるほどねぇ。オレたちの運命を変えるために未来から来た、と」


「……疑わないの?」


 アゼルから事情を聞いたガルガラッドは、納得したように頷く。カケラも疑っていない彼に、思わずリジールはそう問いかける。


「いや、疑うって言われてもなぁ。実際に蘇生されてんだぜ? それにこのジークからの手紙だ。信じるなってのが無理あるだろよ」


「そう。ジークはこんなタチの悪い冗談はやらない。だから、この手紙に書いてあることは全部本当。この字だって、そうそう真似出来るものじゃないしね」


「まあ、確かに。この字はやろうとしても書けたものじゃないですからね……」


 ガルガラッドとしては、アゼルの話を疑うつもりはさらさらないようだ。アゼルたちからしても、その方が助かる。


 自分たちを信じてもらうまで話を続けるなど、時間のムダこの上ないことなのだから。


「さて、話をすンのはこれくらいにしてよ。さっさと入ろうぜ、城に」


「ええ、行きましょう。レミアノールさんは……ちょっと無理そうですね」


「済まんな、これ以上同行しても足手まといにしかならないだろう。私はここで脱落だ。ガル、私の代わりに彼らを助けてやってくれ」


 ソウリュウを倒すのに力を使い果たしたレミアノールを無理に連れていっても、いたずらに疲労を積み重ねるだけだろう。


 本人もアゼルもそれを分かっているため、ここでバトンタッチすることとなった。彼女の代わりに、今度はガルガラッドが同行する。


「任せとけ、レミー。どっか安全そうなとこに隠れてな。怪物もまだ少数残ってるからよ」


「ああ、分かっている。武運を祈るぞ」


 そう言うと、レミアノールは撤退していった。後ろ姿をある程度見送った後、ガルガラッドは瓦礫の下に埋もれていた己の得物を掘り出す。


「っつーわけで、だ。こっからはオレがお前らを守ってやるよ。よろしくな、アゼル」


「こちらこそよろしくお願いします、ガルガラッドさん」


「おう! じゃ、早速城ン中に入る……と言いたいとこだが、まずはこれをやるよ、ほれ」


「これは……炎? もしかして、暗滅の炎片?」


 ガルガラッドは手のひらの上に小さな白色の炎を呼び出す。それを見たリジールは、すぐにその正体に気が付いたようだ。


「の、さらに小さな破片のコピーだ。暗滅の炎片は、オレとレミー、もう一人の暗滅の騎士で分割管理してるからな」


「なるほど。それで、何故そのコピーを?」


「これまでにオレたちが戦ったズィヴノの部下どもは全員、強力な暗域の加護を持ってた。この先で待ち構える奴らも、きっとそうだろう」


 暗域の加護。ソウリュウとの戦いで、その脅威をまざまざと見せつけられたばかりだ。レミアノールがいなければ、アゼルたちは勝てなかっただろう。


 ヘイルブリンガーの力をもってしても打ち破れなかった鉄壁の守りは、今後の戦いでも猛威を振るうことは想像に難くない。


「ああ、だからあたしたちも加護を破れるように……つてこと?」


「そういうことだ。さすがに本物はやれねーが、コピーくらいなら問題ねえ。少なくとも、数時間は効果が保つだろうよ。これでお前らも、暗域の加護を突破出来るってわけだ」


「ありがとうございます、ガルガラッドさん」


「よし、これでもう問題はねえ。さ、行くぞ!」


 邪竜たちへの対抗手段をアゼルとリジールに与えたガルガラッドは、瓦礫の下から引っ張り出した大きな斧と盾を装備する。


 そして、先頭に立って城の方へ近付く。自身の巨体が通れるように、壁の穴を広げながら内部へと侵入していった。



◇―――――――――――――――――――――◇



「……時の嵐が止んだ、か。カガとアカギ、ヒリュウに続きソウリュウも敗れたようだな。暗滅の騎士ども、なかなかにやりおる」


 城の奥深く、かつて公国を纏める議員たちが用いていた会議堂に一体の竜が鎮座していた。桃色のグラデーションがかった黒い鱗を持つ、邪竜。


 ファルシールを襲い、暗域と繋がる門を開いた全ての元凶……『愛獄の竜』ズィヴノだ。新な侵入者の気配に気付き、ズィヴノは身体を僅かに動かす。


「とはいえ、騎士どもも多くが死んだ。我が配下も、まだ複数残っている。我が動くまでもなく、死」


「よお、てめえがズィヴノか? へえ、ラ・グーとは全く似てねえんだな」


「!? 貴様、何者だ? いつの間にここに入り込んだ?」


 まどろみの中に沈もうとしたその時、ズィヴノの前に一人の男が現れた。男――グリニオは、ニヤリと笑いながら一歩踏み出す。


「オレか? オレはグリニオ。てめえのゴセンゾサマの部下さ。驚いたか?」


「戯れ言を。我が祖先ラ・グーの部下? フン、寝言は寝てから言え、不埒な侵入者め!」


「……あーあ、気が変わったぜ。てめぇに協力してやろうかと思ったがやめた。てめぇの力を奪って、オレの手でアゼルを殺すとするか」


 そう呟くと、グリニオは闇の魔力を集め巨大な棍棒を作り出す。それを、見たズィヴノは、嘲りの笑みを浮かべながら立ち上がる。


 身の程をわきまえぬ愚かな侵入者に、灸を据えてやろうと考えたのだ。目玉の模様が刻まれた翼を広げ、唸り声をあげた。


「全く、今日は騒がしい日だ。小うるさいハエは排除せねばなるまい」


「やってみな。今のオレは無敵なんだぜ? てめぇごときに負けねえよ!」


「フン、吠えるなよ愚物め! その驕り、死をもって後悔するがいい!」


 アゼルたちの知らない間に、悪と悪の戦いが始まろうとしていた。



◇―――――――――――――――――――――◇



「侵入者を発見! 殲滅しろォォォ!!」


「おっと、早速お出ましのようだな。んじゃ、暴れるとするかねぇ!」


「ええ、やりましょう!」


 その頃、城内に侵入したアゼルたちはズィヴノの部下である下級の竜の群れに襲われていた。下級とはいえ、もちろん暗域の加護はある。


 ソウリュウ戦での鬱憤を晴らすべく、先制攻撃を仕掛けるアゼルたち。白い炎がヘイルブリンガーを包み込み、暗黒を払う力が宿る。


「オラッ、まずは挨拶代わりだ! こいつでも食らって吹っ飛びやがれ!」


「ギャゴアッ!?」


「わ、凄い。一撃で四体同時に……っと、あたしも見てるだけじゃダメだね。ダークメタモルフォーゼ、ブレードマンティス!」


 得物である大斧を振り下ろし、ガルガラッドは一撃で四体の竜を叩き潰してみせた。凄まじいバカ力に感心しつつ、リジールも魔物に変身し攻撃を仕掛ける。


「それっ、マンティスラッシャー!」


「ぐおあっ!」


「バカめ、後ろががら空きだぞ! フレアブレ……うがっ! な、なんだこりゃ!?」


「これ? ハリガネムシもどき鞭。この姿の時だけ使える武器だよ。えい」


「げえっ……」


 リジールは背後から襲ってきた竜の首を、尻から生えた鞭で締め上げ首の骨をへし折って倒した。それを見た竜たちは、嫌そうに距離を取る。


 尻から生えた鞭でくびり殺されるのは、流石に嫌なようだ。まあ、代わりにアゼルやガルガラッドに斬り殺されるだけだが。


「オラオラオラァッ! 道を空けやがれ雑魚ども! 天下無双の騎士、ガルガラッドサマのお通りだぁっ!」


 斧で敵を吹き飛ばし、大盾で殴り飛ばしつつガルガラッドは先へ進む。討ち漏らしを始末しながら、アゼルとリジールも追従する。


「……リジールさん。その鞭、なんかうねうねしてません?」


「うん。一応これ、寄生虫でもあるから。あ、大丈夫だよ? 襲ったりとかはしないから」


「でも、あんまり近付けないでくださいね?」


「……はぁい」


 若干アゼルに距離を取られ、リジールはしゅんと落ち込む。そんな彼らを、どこからか見つめる視線が二つあった。


「ショウカク、あれが例の騎士どもの仲間だな。どうする? いつものようにヤるか?」


「そうしよう、ズイカク。例の場所におびき寄せて、じわじわなぶってやろうじゃないか」


「決まりだな。よし、早速行動に移ろうじゃないかショウカク」


「ああ、そうだなズイカク。ソウリュウたちの敵討ちといこうか」


 目的を果たすため先へ進むアゼルたちの前に、新たなる敵が姿を見せようとしていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] ボグリスのバカも喧嘩売るなら双方相打ちになって勝手にくたばってくれれば姿晒さず名乗らず悪竜を道連れにした無名の英雄として歴史に残ったであろうに(◡ ω ◡) あとリジール君幾ら蟷螂でもお腹…
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