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224話―最初の邂逅

『聞け、一族よ! お前たちは一度死んだ。だが、皆を生き返らせてくれた者がここにいる。遥か未来より来た旅人、アゼルだ。この者はわらわたち全員の恩人だ!』


 混乱している霊獣たちに、ルスタファはそう叫ぶ。すると、全員がシャキッとお座りしてアゼルの方を見つめる。


 その目には、尊敬と敬愛の感情が込められていた。照れ臭くなったアゼルは、ポリポリ頬を掻きながら視線を泳がせる。


『おお、あなた様が……。やれ嬉しや、今日ほど良き日はない!』


『おにーちゃん、ありがとー! あおーん!』


『うむ。皆、しっかりと礼を……む? この匂いは』


「ルスタファさん、どうしました?」


 嬉しそうに笑っていたルスタファは、何かを嗅ぎ取ったらしく洞窟の外へ顔を向け牙を剥き出しにする。アゼルが尋ねると、答えが返ってきた。


『……またしても、怪物どもが森に足を踏み入れてきたようだ。どうやら、お主の放った炎を察知してきたのだろう。不届きな奴らめ、今度こそ滅してくれる』


「それなら、ぼくたちもお手伝いします。南へ行くための活路を、開かなくてはいけませんから」


『ありがたい、そなたがいれば百人力よ。猛き戦士たちよ、聞け! この森に再び、邪悪なる者らが足を踏み入れた! 我らの手で、骨の一欠片も残さず滅ぼすのだ!』


『おおーーー!!!』


 ルスタファの号令に合わせ、霊獣たちは雄叫びを上げる。洞窟から飛び出した戦士たちを追い、アゼルとリジールも外に出る。


「アゼル、あたしはここに残る。洞窟の中には、戦えない小さな狼たちがいるから……その子たちを、守る」


「分かりました。何かあったら、ぼくを呼んでください。すぐ戻りますから」


「うん。お互い、頑張ろう!」


「はい!」


 そんなやり取りをした後、アゼルはルスタファの背に飛び乗り森を南へ進む。荒れ果てた森林地帯を疾走していると……怪物の群れが見えてきた。


 霊獣の戦士たちは十体ちょっと、怪物は軽く見積もって百体近くはいる。数の差が大きく、このまま戦えば苦戦は免れないだろう。


「あれが怪物……元ファルガシールの民なんですね」


『そうだ。わらわたちとて戦いたくはないが……故郷を、一族を守るためには……滅さねばならぬ』


 暗域から溢れ出た闇の瘴気を浴び、異様に膨れ上がった筋肉の塊がゆっくりと近寄ってくる。目の焦点は合っておらず、呻き声を漏らしている。


 中には、皮膚が剥げて筋繊維が剥き出しになったグロテスクな容姿をした者や、犬やカラスなどの動物と中途半端に融合してしまっている者もいた。


「数が多いですね……。ルスタファさん、ここはぼくに任せてください。ある程度数を減らします」


『そうか、なら任せ……む? 妙だな、怪物どもの中に別の匂いが混ざっている……これはまさか、あの時の騎士か?』


 岩場の起伏に身を隠し、奇襲しようとしていたルスタファにアゼルが先陣を切ることを伝える。了承したルスタファだったが、直後、首を傾げた。


「あの時の騎士さん?」


『ああ。森で異変が起こってから少し経った頃、北の王国から騎士団がやって来てな。三人の騎士が一団を率いていたのだが、そのうちの一人の匂いがしたのだ』


 彼女の言葉に、アゼルは興味を持った。間違いなく、その三人の騎士はジークベルトの同僚――暗滅の四騎士で間違いない。


「ルスタファさん、大まかでいいのでその人がどこら辺にいるか分かりますか?」


『かなり遠い場所にいるな。少なくとも、怪物どもの最前線にはいない。騎士に用があるのか?』


「はい。ぼくは……三人の騎士を救い、歴史を変えるためにここに来ました。だから、助けに行きたいんです」


『そういうことなら、協力は惜しまん。そなたは一族の恩人だからな。さあ、背に乗れ。怪物どもを滅しながら、騎士を探そう!』


「はい! では……出でよ、ヘイルブリンガー!」


 怪物たちが十分近付いたのを見計らい、アゼルを背に乗せたルスタファは岩場から飛び出す。怪物たちは、一斉に視線を一人と一頭へ向ける。


 薄ら笑いを浮かべ、速度を上げて獲物へ向かう。敵を見ながら、アゼルはヘイルブリンガーを頭上に掲げ……魔力を解き放つ。


「闇の瘴気に当てられ、異形となった者たちよ……せめて、痛みを知らず安らかに眠ってください。ジオフリーズ!」


「ア……アアアア……!」


 ヘイルブリンガーから猛吹雪が前方に放たれ、怪物たちを一瞬で氷漬けにする。一気に十数体が倒され、数の差が縮まった。


『よし、数が減ったな! 戦士たちよ、逆襲の時だ! その爪牙で、森を荒らす者どもを切り裂いてやれ!』


『アオオーーーーン!!!』


 ルスタファの合図を受け、岩影から戦士たちが飛び出し強襲を仕掛ける。以前の敗北から学び、ツーマンセルを組み怪物を引き倒し爪で切り裂く。


 その間、アゼルを乗せたルスタファは群れに突っ込み自慢の爪牙を振るう。アゼルもヘイルブリンガーを振り回し、怪物たちを両断する。


『少しずつだが、騎士の匂いも近くなってきている。このまま一気に進むぞ、アゼル!』


「はい! 頭上や背後の敵はぼくに委せてください。全部ヘイルブリンガーで叩き潰します!」


『うむ、助かる。さあ、行くぞ!』


 怪物を蹴散らし、群れの奥へ踏み込むにつれさらに異形度合いが深まる。大きな手のひらのような翼が背中に生えた怪物や、両手に頭がついた怪物が行く手を阻む。


「戦技、ヘイルブーメラン!」


『邪魔な怪物どもよ、退け! さもなくば、全身を引き裂くぞ!』


 順調に先へ進むアゼルたち。すると、微かに風を切る音が聞こえてきた。音のする方へ向かうと、四人の騎士が怪物に囲まれているのが見えた。


 霊獣たちと戦っている一団とはまた別の、小規模な怪物の群れに取り囲まれているようだ。四人ともボロボロになっており、長くは保たなさそうだ。


「見えた! あの騎士たちですね!」


『ああ、間違いない。急ごう、アゼル。グズグズしていると、なぶり殺しにされてしまう』


 ルスタファはスピードを上げ、騎士たちの元へ向かう。騎士たちは三人が前衛となり、残りの一人を守るように戦っている。


「あれ? あの騎士さん、どこかで見たような……! そうだ、あの人は!」


 最後の一人、大弓を持った騎士を見たアゼルはふと既視感を覚えた。直後、確信する。あの弓使いは、絆の試練で戦ったレミアノールだと。


「レミアノール様、これ以上はもう怪物どもを抑え込めません! 我々に構わず、お逃げください!」


「大バカ者、めが……。どこに、自分の部下を捨てて逃げる騎士がいるのだ……。例え、禍毒に犯されようとも……お前たちを見捨てて、逃げるものか……う、ゲホゴホ!」


 騎士たちに近付くにつれ、会話が聞こえてきた。どうやら、レミアノールは体調がかなり悪いようだ。ボロボロになりながらも矢をつがえ、怪物を射抜く。


「騎士さん! ここからはぼくたちも加勢します!」


「む、何者……まあいい、助太刀感謝する! 我々と共に、レミアノール様を守ってくれ!」


「ええ、もちろん! 戦技、アイシクル・ノック・ラッシュ!」


 ルスタファの背中から飛び降り、怪物の群れに突っ込みながらアゼルはヘイルブリンガーを振り回す。騎士たちに加勢し、根こそぎ敵を薙ぎ倒す。



 幸いにも、犠牲者が出る前に群れを壊滅させることが出来た。霊獣の戦士たちも優勢に戦いを進めているため、じきに群れは全滅するだろう。


「ありがとう、助かった。君のおかげで、レミアノール様を守りきることが出来たよ。……しかし、子どもが何故この地に? 我々以外、結界を越えることは出来ないはずだが」


「それについては、ながーい話になっちゃうので……とりあえず、休める場所に移りましょう。レミアノールさんも、かなりつらそうですし」


「……う、そこに誰かいるのか? 済まない、もう……目も、耳も、まともに機能しなくてな。情けない、ことだ……」


 どうやら、レミアノールの身体は酷く衰弱しているようだ。目はほとんど見えていないようで、光が失われている。


 そんな状況でも正確に怪物の心臓を貫いてみせている辺り、暗滅の四騎士がどれだけの実力があるのかアゼルは再び認識を改めた。


『わらわの背中に乗せるがいい。お主らも疲れているだろう、一族の者らに乗せてやる。まずは、わらわたちの隠れ家へ。詳しい話はそこでだ」


「ああ、分かった。……そういえば、まだ坊やの名前を聞いてなかったな。何と言う名だ?」


  騎士に問われたアゼルは、レミアノールをルスタファの背に載せつつ答えた。


「ぼくはアゼル。遥か未来から来た、王の意思を継ぐ者です」

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― 新着の感想 ―
[一言] 第一印象はまずまずな出会いって所か(↼_↼) 後は上手く薬が効いて話を信じてくれれば第一関門突破と言った所か(◡ ω ◡)
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