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213話―新たな旅はハプニングだらけ?

 アゼルたちがダンジョン探索に向けての準備を整えていた頃。ラ・グーの城では、とある実験が行われていた。


 城の別棟にある地下室に、ラ・グーとその側近……そして、数名の魔術師が集まっている。大きな部屋の中央に、ベッドが二つ並べられていた。


「よくぞ()()を盗み出した、ロギ。約束通り、大魔公(デュークス)への昇格を認めよう」


「ありがたき幸せに御座います、ラ・グー様。危険を犯し、プリマシウスの城へ盗みに入った甲斐がありました」


 ラ・グーと側近の魔の貴族は、部屋の隅でそんな話をしている。特殊な結界によって守られており、何か物騒なことをしようとしているのが見て取れた。


 二つあるベッドのうち、片方に乗せられているのはグリニオだ。もはや用を為さない右腕は、魔術師たちによって根元から切除されている。


「しかし、此度の実験……成功するのでしょうか? 大地の民に、堕ちた存在とはいえ神の肉体を移植しようなど」


「魔術師どもの出した計算では、八十パーセントの確率で成功するとのことだ。なに、失敗したところで問題は何もない。魔術師(やつ)らが消し飛ぶだけだ」


「ああ、なら問題はありませんね。仮に死んでも、彼らの自業自得ということで」


 二人は実験の準備をしている魔術師たちを眺めながら、無情な会話を行う。少しして、準備が整った魔術師たちは行動に出た。


「そっちのチューブを繋げ! 慎重にやれよ、下手すればこの部屋が吹っ飛ぶ」


「分かってるって。しかしまあ、ひっどい表情で死んでるよなぁ、こいつ。元神とは思えないな」


 魔術師たちはそう話しながら、もう片方のベッドに横たえられた遺体の顔を覗き込む。遺体の正体は……かつて、アゼルたちと戦った堕天神の一人、ガロー。


 主である元審判神、カルーゾに従い堕天した彼は紆余曲折の末に敗北。暗域へ逃げ延びたものの、大魔公プリマシウスに捕らわれたのだ。


「ま、神と言っても所詮俺たちと同じ定命の存在だってことさ。……にしても、何でこんなボロボロになるまで拷問されてたんだろうな?」


「噂だと、プリマシウスさんの息子を無理矢理生き返らせて使役してたらしいぜ? んなことしたら、まあ憎まれるのもしゃあないよなぁ」


「マジかよ……天上の神って、案外バカな」


「貴様ら! いつまでチンタラやっているつもりだ! さっさと始めんか!」


「ひぃっ! 申し訳ありません!」


 だらだら雑談していた魔術師たちを、ラ・グーが叱り飛ばす。慌てて支度を整え、移植の準備を終える。グリニオとガローの身体が、チューブで繋がった。


 まずは、グリニオの身体にガローの右腕が移植される。魔術師たちはガローから切り取った腕を、グリニオの身体に繋ぎ魔力を流し込む。


「よし、ここまでは問題ない。次は左腕だ、慎重にやるぞ」


「了解。これが終わったら、魔獣の内臓の移植か。忙しいもんだな……」


 魔術師たちは忙しなく部屋じゅうを動き回り、実験を進めていく。ラ・グーの目的……それは、神の肉体と魔獣の能力をグリニオに与えること。


 最強の人造戦士を作り出し、アゼルとその仲間たちを抹殺するための計画を立てていたのだ。実験が順調に進み、単眼の蛇竜はニヤリと笑う。


「ククク、素晴らしい。これなら実験は成功するだろう。ククク、フハハハハハハ!!」


 ラ・グーの野望は、とどまるところを知らない。アゼルへの逆襲の布石が、打たれる。



◇―――――――――――――――――――――◇



「さて、準備は万端ですね。皆、行きましょう!」


「ああ。しかし、雪が残る渓谷に行ったと思えば次は砂漠か。とんでもない大旅行だな、ホントに」


 ラ・グーの目論見など露知らず、アゼルたちはエルプトラ首長国へ出発する日を迎えていた。使節団と一緒に、ゾビア大山脈近郊の町へ向かう。


「レンタックの町へは、この転移石(テレポストーン)を使って移動シマス。時間が惜しいデスからね、はい」


 言葉の端々にエルプトラ訛りが混ざっている使節団の男は、そう言いながらアゼルたちに魔法の石を手渡す。


 どうやら、今回は長旅をする必要はないようだ。嬉しいような、寂しいような複雑な気分をアゼルは覚えた。


「スデに、イスタリア王国からの助っ人が現地に到着シテマスです。お望みなら、一緒行けます」


「へえ、イスタリアからも。誰だろうな、あの国の実力者ってーと……あんま浮かばねえな」


「実際、会ってのお楽しみヨ。じゃ、行きますデ!」


 シャスティが呟いた直後、使節団のメンバーは転移石(テレポストーン)を起動させる。アゼルたちの身体が光に包まれ、遠く離れた砂漠の町へ移されていった。


「ハイ、到着ね。冒険者ギルドレンタック支部はコッチよ、ついてきてチョウダイね」


「わ、もう着きましたか。やっぱり転移石(テレポストーン)を使うと早くて楽チンですね」


「だな。……人が多い、はぐれないように気を付けろ、アゼル」


「分かりました、兄さん」


 転移したすぐあと、一行はエルプトラ最南端の町レンタックに到着した。オアシスが近いのか、町の至るところに水路が流れている。


 使節団の後を着いて通りを進み、アゼルたちは冒険者ギルドを目指す。……が。


「ハイハイそこのお兄さんたち! 美味しいお水はいかが? 今ならお安くしておくよ!」


「あらあら、べっぴんさんがいっぱい! どう? このアクセサリー、買ってかない?」


「おにいちゃんたちー、おかねめぐんでおくれー」


 どこからともなく、押し売りや物乞いたちが現れアゼルたちを取り囲む。一気に人口密度が膨れ上がり、もみくちゃにされてしまう。


「わわわ!? すみません、ぼくたち冒険者ギルドに行かなくちゃいけないので通してください~!」


「ん? 財布がないぞ? おいコラ、誰かオレの財布スりやがったな!?」


「んあっ!? 誰だ、どさくさにアタシの尻を撫でやがったのは!」


「ねーちゃん、かねくれー」


 人波に揉まれ、何が何やらもう滅茶苦茶な有り様であった。使節団のメンバーたちはアゼルたちを助けようとするも、押し売りたちに阻まれ近付けない。


「コラ! その人たちはダメ! 他の観光客の相手をしてなさい!」


「うるせえなあ、商売の邪魔をするな!」


「なんだと? 憲兵を呼ばれたいのか!」


「おじちゃん、おかねくれー」


 一触即発の空気が膨れ上がり、もういつ乱闘が始まってもおかしくない状態だ。流石に一般人を蹴散らすわけにもいかず、アゼルが困っていると……。


「ハーッハッハッハッ! 皆の衆、もう安心だ! 売りたいものは全部、この俺が買い取ってやろう! さあ、何でも売るといい! このソルディオが……ん? おお! そこにいるのはもしや……」


「あ、この声……ソルディオさん!? どうしてここにいるんです!?」


 通りの向こうから、クソデカボイスと共に一人の男が歩いてきた。カンカン照りだというのに、見ているだけで暑苦しい全身鎧とバケツヘルムに身を包んでいる。


 やって来たのは、かつてアゼルと交遊を深めたイスタリアの冒険者、自称『太陽の騎士』ことソルディオであった。


「むむ、詳しい話は後だ! さあ皆の衆、どんどん売ってくれ! あの太陽のように全て俺が……ああ待て、路地裏の方に引きずって行くんじゃあない!」


「そーれ、わっしょい! わっしょい!」


 突如やって来たカモに標的を移し、押し売りや物乞いたちはソルディオを担ぎ上げ路地裏へと消えていった。何が何だか分からず、アゼルたちは呆然としている。


「……なんだったんでしょう、今の」


「分からん。まあ……助かったからよしとしよう」


「……そう、ですね?」


 釈然としないモノがあったが、まあいいやと思考を放棄しアゼルたちはギルドへ向かう。町の奥に、こじんまりとした建物があった。


 これが、冒険者ギルドレンタック支部のようだ。中に入ったアゼルたちは、二階にある客間に通される。少し待っていてくれと言った後、使節団は出ていった。


「はー、びっくりしちゃったね。いきなり人がいっぱい出てきて、あたし目がぐるぐるしちゃった」


「フン、タチの悪い押し売りどもだ。ここが余の領地であれば、見つけ次第打ち首にしてやるものを」


「アーシア様、いくらなんでも物騒です……」


 初めての経験にきゃっきゃと喜ぶメレェーナとは対照的に、アーシアはかなりご立腹のようであった。リジールが嗜めるも、あまり効果はない。


「あークソッ、着いて早々財布をスられるとかツイてねえな。アゼル、悪いがしばらく金貸してくれ。後で返すから」


「分かりました。……それにしても、さっきのアレは何だったんで」


「アイルビーバック! 太陽の騎士ソルディオ、今ここに! 帰還! ハッハー!」


 客間に通されてから十数分後、ソルディオ(あほ)が入ってきた。また面倒なことになりそうだと、アゼルは内心ため息をついた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] プリマシウスをさん付けで言ってるが下っ端クラスなら普通、様付けじゃないか(?・・)σ [一言] 廃人×クズ神の骸×魔獣のパーツ=粗大ゴミでも作るのか?(ಠ_ʖಠ)
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