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149話―騎士と巨獣

「フン、何かと思えば。千年も前にくたばった愚物のガラクタではないか。そんなものを持ち出してきた程度で、我に勝てるとでも?」


「……そういう言い方、気に入らないな。なら、確かめてごらん。僕たちの切り札が、ガラクタなのかを! アゼルくん、僕の左手を掴んで!」


「はい!」


 アゼルと手を繋いだリオは、右腕を掲げ指を鳴らす。すると、レオ・パラディオンの胸部から光が二人の元に照射され、転送が始まった。


 胴体内部にある二人乗りのコックピットへと転送され、リオが前、アゼルが後ろの座席に座る。初めての出来事に、アゼルはまたしても興奮していた。


「ふわあああ……! オメガレジエートも凄かったですけど、こっちも凄いです! あちこちピカピカで……」


「どうどう、後で好きなだけいじらせてあげるから、今はちょっと我慢してね。さ、カルーゾをやっつけるよ!」


「……っと、そうですね。分かりました、やりましょう!」


「よし、ブレイン・コントロール・デバイス装着! レオ・パラディオン……起動!」


 コックピットの天井に繋がれたヘルメット状の操縦装置を被り、リオはレオ・パラディオンに命を吹き込む。獅子の双眼に光が宿り、鋼鉄の騎士が動き出す。


「フン、ムダな足掻きを。レオ・パラディオンだか何だか知らぬが、我がトライデントで串刺しにしてくれるわ!」


『やれるものならやってみなさい、カルーゾ! ぼくたちは、絶対に負けない!』


『そうさ、アゼルくんの言う通りだよ。それに、私たちもいるってこと、忘れてもらっちゃ……困るよね。ギア・ド・トリアスタ:ネオ、全砲塔解放!』


 レオ・パラディオンの起動に合わせ、ダンスレイルたちも行動を開始する。空の彼方まで線路が伸びていき、停泊していたギア・ド・トリアスタ:ネオの車輪が回る。


 カルーゾに対して列車の側面が向くように線路が敷かれ、全ての砲台が悪しき魔勝へ狙いを定める。レオ・パラディオンが走り出すのと同時に、火が吹いた。


『そりゃああああああ!!』


「舐めるなよ、ガキどもが!」


『カレン、ダンテ、クイナ。一斉砲撃開始!』


 青と金で彩られた剣と盾を装着したレオ・パラディオンが地を駆け、その背後からギア・ド・トリアスタ:ネオの援護砲撃がカルーゾを狙い打つ。


「猪口才な。この程度の砲弾、叩き落としてくれるわ!」


『おっと、そっちばっかり気を取られてていいのかな? ほら、これでも食らえ! ジャッジメント・セイバー!』


「チッ、虫ケラめ……ぐうっ!」


 左腕を引き、断罪の剣による突きが放たれる。巨体を感じさせない軽やかなステップで避けようとするカルーゾだったが、砲弾を食らってよろめく。


 そこに突きが叩き込まれ、脇腹が切り裂かれた。直撃こそしなかったものの、それなりの痛手を与えることに成功しアゼルとリオは喜ぶ。


「やった、まずは一撃食らわせましたよ!」


「うん、上々の成果だね。このまま一気に仕留められばいいけど……」


「虫ケラめがああぁぁぁ!!」


「……そうはいかないね!」


 怒り狂うカルーゾは、トライデントを振り回しレオ・パラディオンに襲いかかる。怒りで痛覚が遮断されているのか、砲弾の直撃を何発食らってもお構い無しだ。


「リオさん、来ます!」


「大丈夫、こっちには盾があるからね。これくらいの攻撃……これまでに戦ってきた連中に比べたら、弱い!」


 リオは巧みな盾捌きを披露し、トライデントによる猛攻を全て防いでみせる。相手の様子を窺い、隙を見て足払いを仕掛けて体勢を崩す。


「ぐっ……」


『取った! そりゃっ!』


「舐めるな! ホーリー・ミラージュ・チェンジ!」


 一気にトドメを刺さんと、ジャッジメント・セイバーを振り下ろすリオ。が、カルーゾは離れた場所に光の魔力で作り出した幻影を作り出し、瞬時に本体と位置を入れ換えた。


『くっ、あとちょっとだったのに!』


「貴様らは幻影(そいつ)の相手でもしていろ。まずは……あの列車を破壊させてもらう!」


 リオたちを幻影で足止めしている間に、カルーゾはギア・ド・トリアスタ:ネオを破壊し援護砲撃を封じる作戦に出た。トライデントを構え、じっくり狙いを定める。


「おねーちゃん、まずいよ! あいつこっち狙ってるよ!」


「心配無用さ、レケレス。先頭車両以外は、壊されたって問題ないからね。むしろ、壊してくれた方が大打撃を与えられるってものだ」


 攻撃の矛先が自分たちの方へ向き、レケレスは慌てる。そんな妹を宥めつつ、ダンスレイルはニヤリと笑う。次の瞬間、トライデントが最後尾の車両を貫いた。


「最後尾大破、損害率40パーセント! ダンスレイル、やるか?」


「もちろん。ダンテ、パージレバーを下げて。車両を切り離しておやり」


「任せな!」


 ダンテがレバーを下ろすと、連結器が解除され最後尾の車両が切り離される。カルーゾはニヤリと笑ったまま、トライデントを引き抜こうとするが……。


「さて、次は……ぐうっ!?」


『よし、大当たりじゃな。奴め、ざまぁないわい』


 次の瞬間、大破した車両が大爆発を起こし、カルーゾに大ダメージを与える。後ろの車両二つの中はからっぽであり、爆発の力を帯びた大量の魔力を充満させてあった。


 戦局が不利に傾いた際、カルーゾに大打撃を与えるための捨て身の攻撃を行うために。


「ぐう、ぬぅ……よくも、こんな小細工を……! こうなれば、纏めて葬ってくれる! ライトニング・レイン!」


『まずい! みんな、逃げて!』


 カルーゾはトライデントを頭上に掲げ、巨大な光の雲を作り出す。そして、ギア・ド・トリアスタ:ネオに向かって、大量の光の槍を雨のように降らせた。


「まずいね……アイージャ、もっと速度を!」


「無茶を言うでないわ、姉上! これ以上速度は出せん!」


 猛攻から逃れようと最大速力でひた走るも、槍の数が凄まじく逃げ切れない。砲撃を浴びせて対処するも完全に防げず、損害が広がっていく。


「フハハハハ! そのまま中の連中もろともスクラップになってしまうがよいわ!」


『そうはいかないよ! ギガノマジカ・キャノン!』


「フン、もう幻影を片付けたか!」


 幻影を倒したリオは、アイージャたちを助けるべく光の雲へ攻撃を加える。レオ・パラディオンの右腕に装着されている盾が格納され、腕が大砲へ変形する。


 魔力の砲弾が放たれ、光の雲を霧散させる。砲門の大半を潰されたものの、ギア・ド・トリアスタ:ネオは全壊を免れることが出来た。


『よし、これで……』


「バカめ、隙だらけだ! ダークネス・フェノメノン!」


『しま……』


 仲間の救出が間に合い安堵していた、その時。カルーゾがトライデントを大地に突き刺し、闇の奔流を呼び寄せた。暗域の闇が解放され、洪水となって襲いかかる。


「これはまずい……仕方ない、一旦攻撃の射程圏内から離脱する。今の損耗具合じゃ、これには耐えられない!」


 耐久力が落ちた状態では耐えるのは不可能と判断し、ダンスレイルは結界の外へ車両を走らせる。一方、レオ・パラディオンは剣を地面に突き刺し、闇の奔流に耐えていた。


「むむむ……まずいな、このままだと機体が闇に呑まれちゃう。そうなったら、流石に厳しいな」


「一体どうすれ……リオさん、カルーゾが来ます!」


「グハハハハ! 動けぬようだなァ、ええ? なら、その剣……破壊してくれるわ!」


 身動きが取れないレオ・パラディオンに接近し、カルーゾはトライデントを横薙ぎに振るう。ジャッジメント・セイバーを真っ二つにへし折り、支えを失わせる。


 レオ・パラディオンの巨体が宙を舞い、めちゃくちゃに振り回される。もはや、リオでもコントロールすることは不可能だ。


『しま……うわあっ!』


「さあ、闇に呑まれよ! 身も心も、暗黒に蝕まれ滅びるがいい! 我に歯向かった、愚かなドゥノンのようにな!」


『……なんですって? お前、まさか……』


「そうさ。貴様らが来るよりも前、奴は愚かにも一人で我に挑んできた。だから、殺してやったのよ。死よりも惨き苦痛を与えた後でなぁ!」


 そう叫ぶと、カルーゾは狂ったように笑う。ドゥノンを殺した時のことを思い出し、愉悦に浸っているのだ。それを見たアゼルの心に、怒りが沸き上がる。


 罪を償うために、たった一人でかつての主に挑み散ったドゥノン。その意思を、覚悟を嘲笑うカルーゾを許せない。アゼルの中に、闘志が燃え上がる。


「……リオさん。そのヘルメット、ぼくに貸してもらえますか?」


「いいよ、分かった。悔しいけど、今の僕じゃ……これ以上は動かせない。でも、君なら……きっと、奇跡を起こせるはず。さあ、デバイスを!」


 リオは頷いた後、ヘルメットを外しアゼルに操縦を託す。コントロール・デバイスを装着し、今度はアゼルがレオ・パラディオンを動かす。


「ぼくは……カルーゾを許せない! 剣が折れても、まだ武器はある。来い! 魔凍斧ヘイルブリンガー!」


 アゼルそう叫び、レオ・パラディオンの左手に魔力を集中させる。すると、冷気が吹き荒れ、巨大化したヘイルブリンガーが現れた。


「フン、まだ足掻くか! 木の葉のように空を舞うことしか出来ぬというの、に……? ぐ、う……があああ!!」


『なんだ? 突然、苦しみだして……』


 突如、カルーゾが顔を歪め苦しみ始めた。胸を押さえ、たまらず片膝を突く。何が起きたのか理解出来ない、という顔をしていると、脳裏に声が響いた。


――言ったはずだ、カルーゾ。私は、後に続く者たちのために……お前に、楔を打ち込んだと――


「ドゥ、ノン……? まさか、これは……!」


 命を捧げ打ち込まれた楔が今……邪悪なる獣へ、裁きを下す。

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― 新着の感想 ―
[一言] >――言ったはずだ、カルーゾ。私は、後に続く者たちのために……お前に、楔を打ち込んだと―― …………ああ、ならば。今がその時だな。
[一言] あくまで列車砲で走り回るだけか(ΘдΘ)変形して二号ロボを期待してたが残念だ(。-ω-) 右手、指パッチンは古風だが勉強してきた用だな ( ´,_ゝ`) そして今、1人の男の最後の意地が…
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