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115話―新たなる襲撃者たち

「これで話は終わった。もう帰ってよ……」


 メレェーナへの説教が終わり、アゼルたちが帰ろうとした次の瞬間。城の外から凄まじい爆音が聞こえてきた。窓に駆け寄り外を見ると、南の方から煙が上がっている。


「あれは、一体……」


「陛下、大変です! 帝都の南門に、武装した集団が出現しました! 憲兵たちが応戦していますが、このままでは門を破られてしまいます!」


 少しして、切羽詰まった様子の騎士が駆け込んできた。突然のことに動揺していたエルフリーデだったが、すぐに落ち着きを取り戻す。


「敵襲か。アシュロン、お前は騎士団を連れて出撃せよ。ジークガルム、お前は街へ向かえ。別動隊がすでに入り込んでいるやもしれぬ、憲兵と連携し調査するのだ」


「はっ! 私めにお任せを!」


「かしこまりました。怪しい者が入り込んでいないか、警備隊に探らせます」


 エルフリーデの指示を受け、二人は謁見の間を後にする。残ったアゼルたちは、ジークガルムの後を追おうとする……が、そこに待ったがかけられた。


「待て、アゼル。済まないが、何人か仲間を残していってもらえるか? 敵の正体が分からぬ以上、万が一に備え城の守りは固めておきたい」


「分かりました。じゃあ……」


「私とアンジェリカ、ランタン頭が残ろう。シャスティ、カイル、お前たちはアゼルと共に行け。あとは……」


 自ら名乗りを挙げたリリンは、チラッとメレェーナへ視線を投げ掛ける。果たして、自分たちと一緒に残した方がいいのか。それとも、アゼルに同行させるべきか。


 はっきり言って、リリンからすればどちらの選択肢も取りたくはなかった。が、そこら辺を適当にほっつき歩かれていても邪魔になる……と、悩ましい状況である。


「あたし、一緒にいくよー? 攻めてきてる相手、心当たりあるし」


「え? 本当ですか?」


「うん。カルーゾにね、二人で大地を攻めてこいって命令されたんだけど……その時の相方が、しびれを切らして攻撃してきたんだと思う」


「そういう大事なことはもっと早く言ってくれ……」


 さらっと重要なことを口にするメレェーナに、エルフリーデやリリンはため息をつく。とは言え、彼女のおかげで敵の正体がおぼろげながらも把握出来た。


 メレェーナと共に帝国への攻撃を命じられた堕天神が、何の連絡もないことを不審に思い攻め込んできたのだろう。


「ま、とりあえずオレたちも行こうぜ、南門によ。急がないと、騎士団がやられちまう」


「そうですね、兄さん。今回は……スケルトンたちにも大暴れしてもらうとしましょうか」


「だな。オレも……久々にやるかな」


「アタシもやるぜ。へへ、血がたぎるねえ!」


 南門を死守している憲兵や、アシュロン率いる騎士団に加勢するためアゼルたちは城を出る。すでに市街では、ジークガルムや警備隊が市民の避難誘導を行っていた。


 アゼルに気付いたジークガルムは、近くに走り寄ってくる。何か知らせたいことがあるらしい。


「おお、アゼル殿! ちょうどよかった、一つ報告しておきたいことがあるのです」


「どうしたのですか? ジークガルムさん」


「市民から話を聞いたところ、人気の少ない場所に種のようなものを撒いて回っている怪しい男を見た、という証言を複数得られました。すでに、敵が入り込んでいるやもしれませぬ。注意なさった方がよいかと」


「分かりました、心に留めておきます。ジークガルムさんも、お気を付けて!」


「勿論、気を付けますとも。市民の避難が終わり次第、種蒔き男の行方を捜索するつもりです」


 ジークガルムの言葉を胸に刻み、アゼルたちは帝都の南門へ向けて移動を再開する。門にたどり着くと、アシュロン率いる騎士団と、魔物の群れが戦いを繰り広げていた。


 コボルトやオーク、アーマードエイプの群れの中に、かつて魔神たちの世界で戦ったガーゴイルも混ざっていた。帝都を陥落させるため、堕天神が送り込んだのだろう。


「おーおー、こりゃまた大量にお出ましだな。アゼル、どうするよ? 先にスケルトンを送り込むか?」


「そうですね……露払いをしてもらった方が良さそうです。騎士団の被害を増やさないためにも。サモン……スケルトン・ジオ!」


 魔物たちを撃滅し、奥で指揮をしているであろう堕天神を引きずり出すべくアゼルはスケルトンを呼び出す。魔神の血を取り込んだことで、超強化された者たちを。


「……我らをお呼びでしょうか、マスター。何なりとご命令を」


「騎士団と戦ってる魔物たちを倒して、敵の戦力を削ってください。頼めますか?」


「承知しました。貴方様のご命令ならば、我らはどのような者であっても始末してご覧にいれましょう」


 呼び出された五体のスケルトンのうち、黒いスカーフを巻いている個体が応答を行う。全員やる気に満ちており、眼窩の奥で炎が揺れていた。


「ありがとうございます、期待してますね! ブラック隊長!」


「……た、隊長ですか?」


「はい。他の四体はあなたに従っているみたいですし、愛称があった方が親しめると思いまして。あ、他の子たちも後で愛称を考えるので楽しみにしててくださいね」


「ご配慮、感謝します。部下たちも……あのように大層喜んでいます」


 スケルトン・ジオ改め、ブラック隊長は部下たちを指差す。みな、心なしか嬉しそうにしている……ようにアゼルには見えた。


「アゼル、左翼の連中が押されてる。まずはそっちの方にスケルトンどもを送った方がいいと思うぜ」


「そうですね……分かりました。念のため、ぼくも一緒に行きます。みんな、任務開始ですよ!」


「お任せあれ。お前たち、出撃するぞ」


 ブラック隊長は部下を率い、アゼルと共に崩壊寸前まで追い詰められた左翼部隊の救援に向かう。残ったシャスティたちは、他の部隊の救援に向かおうとするが……。


「あたしもあっちにいくー!」


「あ、こら! 勝手なこと……だーもう、行っちまったよ」


 メレェーナはアゼルたちを追い、飛んでいってしまった。しかし、彼女を連れ戻す余裕はない。左翼部隊よりマシとはいえ、他の部隊も劣勢に陥っているのだ。


「……ま、アゼルなら上手いこと手綱握るだろ。任せとこっと」


「大丈夫なのかよ、それで……」


 アゼルに丸投げすることを決め込み、シャスティは右翼部隊の方へ向かう。ため息をつきながらも、カイルはその後についていった。



◇―――――――――――――――――――――◇



「隊長、敵の攻撃が激しすぎます! このままでは、最終防衛ラインを突破されてしまいます!」


「何とかして持ちこたえろ! 我らの命を捨ててでも、ここを守りきるのだ!」


 南門の東側を守る左翼部隊は、魔物の群れによって崩壊寸前の状態にあった。四つ設定された防衛ラインはすでに三つが突破され、後がない状況に追い込まれている。


 八十人いた騎士たちはもう、半分以下にまで減ってしまっており、最後の防衛ラインを越えられてしまうのも時間の問題……そう思われていた。……が。


「グルルル……ゴアアァ!!」


「ひぃぃっ、来るな、来るなぁぁぁ!! ……あれ?」


「騎士さん、大丈夫ですか? もう安心してください、加勢に来ましたよ」


 アーマードエイプの手により、一人の騎士が命を落とそうとしていたその時。騎士の頭上を飛び越え、魔凍斧ヘイルブリンガーを振り下ろしながらアゼルが現れた。


「あ、あなたは! よかった、援軍が間に合ったんですね……」


「ええ。さあ、下がって傷の手当てを。ここから先には……魔物たちを、一体たりとも進ませませんから」


 ヘイルブリンガーで頭をカチ割られ、アーマードエイプは息絶える。その屍の上に立ち、アゼルは得物を振るい刃に付着した血を飛ばす。


 並々ならぬ殺気を放つアゼルを見て、魔物たちは思わず後ずさる。本能で感じ取っているのだ。目の前にいる者は――自分たちを越える絶対強者なのだと。


「さあ、おいたはここまでです。今度は……ぼく()()の番ですよ! スケルトン・ジオ、突撃!」


「お任せを……全ては、貴方様の意のままに!」


 漆黒の骨騎士たちを率い、アゼルは魔物の群れへ突撃する。それに対し、何体かのコボルトたちが迎撃のために近寄ってきた……が、ヘイルブリンガーの横薙ぎで纏めて葬られた。


「ギャイィン……」


「ムダですよ、たった数体来たくらいでぼくは止まりません。止めたいなら……全員纏めて、かかってきなさい!」


「ギィィ……!! ガァァァ!!」


 挑発するアゼルへ牙を剥き、魔物たちが突撃する。数だけならば、魔物たちが勝っている。だが、個々の練度では……アゼルたちの方が圧倒的に上だ。


「たっぷり教えて差し上げます。骸の騎士の恐ろしさを!」


 逆襲が、始まる。

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― 新着の感想 ―
[一言] ブラック隊長ね〰️隊長ならセーフかな?( -д-)間違っても将軍なんて付けるなよ(-_-;) もし付けたらゲルショ○カーのブラック将軍になってしまう(ー_ー;) ただでさえスケルトン軍団で見…
[一言] 漸くヘイルブリンガーの活躍が見られるようだな!
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