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107話―よみがえる獣王

「貴様、その獣人は何者だ? 見たところ、ただ者ではないな」


「ぐあーっはっはっはぁー! 知りたいか? ん? 知りたいよなぁ、そうだろうなぁ。なら教えてやろう。ただし……」


「ガルルルル……!!」


「コイツと戦いながら、だがなぁーっ!」


 リリンが詰問すると、ガローは心底イラッとさせられるドヤ顔をする。そして、隣に立つ獣人……ダーネシアをリリンとシャスティにけしかけた。


 鋭い眼光を二人に向け、ダーネシアは走る。両手に生えた、刃のような爪で獲物を引き裂くために。最初のターゲットは――シャスティだ。


「グルアアァ!!」


「チッ、狙いはこっちか。なら、受けてやんよ! どいてな、リリン。オラッ!」


 シャスティはハンマーを呼び出し、リリンを退避させた後ダーネシアを迎え撃つ。相手の土手っ腹に、強烈な一撃をお見舞いしてやろうとハンマーを振るうが……。


「グルアァ!!」


「!? なんだ、コイツ背中に翼が生えやがったぞ!?」


「まずい……! サンダラル・アロー!」


 ダーネシアの背に鷹のような翼が生え、ハンマーの一撃を避けたのだ。そのまま頭上から強襲しようとするも、間一髪のところでリリンの妨害が間に合った。


 雷の矢に阻まれ、ダーネシアはガローの元に戻る。未知の能力を持つ相手を前に、二人は守りを固めることを決めた。迂闊に手を出せば、即座に返り討ちにされかねないからだ。


「なんだってんだ、あいつは? だの獣人じゃねえのか?」


「どうやら、そうらしいな。それにしても、『千獣戦鬼』……どこかで聞いたような……」


「グルッフォフォフォ!! どうだ、驚いたか! 驚いたろうなぁ、もちろん。さらに驚け、コイツはな……千年前に起きた『魔王戦役』で活躍した、魔王軍の大幹部の一角なのだぁ~!!」


 特に何もしていないのに、まるで自分のことのようにガローは得意気に叫びをあげる。耳障りなダミ声で、リリンはある事を思い出したようだ。


「魔王戦役だと……?」


「なんだ、知ってるのかよ?」


「ああ。神殺しの力を得るために、魔神たちの大地へ行っただろう? アゼルが目覚めるまで世話をしている間に、向こうの世界の文献を読んだのだが……」


 どうやら、リリンは異界の歴史に興味を持ったようでアゼルの世話をしつつ、空いた時間で様々な文献を読んでいたようだ。


「その時に読んだ文献の一つに、記されていたのだ。『千獣戦鬼』の異名を持つ、魔王の配下についてな。その者の名が、確か……ダーネシアだった」


「その通り!! カルーゾ様と共に天上の世界を逃げ出した日……オレサマはふと閃いた。()()()()()()()()()に、古い友人の魂を持ってってやろう、とな!」


「……それで、連れ去ったというわけか。眠りに着いていた、過去の強者の魂を」


 へらへら笑いながら語るガローを見て、リリンとシャスティは初めてアゼルの気持ちを理解した。死者が弄ばれる光景を見る度に、憤っていた少年。


 何故そこまで怒りをあらわにするのか、二人は少々疑問に思っていたが……その理由を、たった今理解した。ガローの行いはあまりにも、邪悪なのだ。


「胸糞わりぃ話だな。要は、自分らの都合で死んだ奴を叩き起こしたってこったろ? しかも、まともじゃねえ状態でよ」


「グルッフォフォ、考えてもみろ。完全に理性をよみがえらせれば、オレサマたちに従わなくなるだろ? だから、オレサマたちの命令を理解出来る程度に……うおっ!?」


「もういい、黙れ。貴様の話を聞いていると気分が悪くなる。その間抜けヅラに、雷の矢を突き刺してやる。覚悟するがよい、堕ちた神よ!」


 苛立ちが頂点に達したリリンは、ガロー目掛けてサンダラル・アローを放つ。不意を突かれ慌てふためくも、ガローとて元神。ひらりと矢をかわした。


「人が気分よく話しているのを邪魔するな! ダーネシア、あの女を切り裂きはらわたを引きずり出してやれ!」


「グルガアアァ!!」


「へっ、そうはいかねえな。千年前の武将だろうがなんだろうがよ、仲間に手出しはさせねえ!」


 シャスティはリリンを庇うように前に立ち、再び突撃してきたダーネシアを迎撃する。ハンマーの射程に入るギリギリの距離まで走ってきた獣人は、突如飛び立つ。


 今度こそ頭上から強襲しようとしたのだろうが、シャスティからすればそんなのは想定の範囲内に過ぎない。この程度のフェイントなど、対応は余裕で可能だ。


「甘ぇな! 戦技、アッパースイング!」


「ゴガッ……」


 跳ね上げられたハンマーで顎を打たれ、ダーネシアの身体が宙を舞う。が、即座に翼を羽ばたかせて体勢を整え、シャスティを無視してリリンへと急降下していく。


「リリン、行ったぞ!」


「グルオオォ!!」


「ムダだ、私を傷付けることは出来ぬ! バイドチェーン!」


「グルウッ!?」


 爪を振り下ろそうとするも、リリンが唱えた封印魔法によって生じた鎖に絡め取られ、動きを封じられる。ひとまず、厄介な者は捕らえた。


 ダーネシアが鎖を破り、自由を取り戻す前に、全力でガローを叩き潰す。そう決めた二人は、全速力で堕天神目指して走り出した。


「うおらあああああ!!」


「ぬうううおおおお!!」


「なかなかやるな。いいぜ、ならオレサマが相手してやる。二人まとめてなぁ! ビッグアーム・ナーグル!!」


 鬼気迫る表情を浮かべ、ハンマーと雷の矢を構えながら突っ込んでくる二人を見ながらガローは笑う。シャスティが振り下ろしたハンマーを、拳の一撃で弾き返す。


「うおっ!?」


「受けよ! ツイン・サンダラル・アロー!」


「そんなもの、当たらぬわぁーっ!」


 連続で放たれた雷の矢を、ガローは華麗なステップで避けてみせた。相手をおちょくるような、絶妙にイラッとする表情もおまけに添えて。


 目標から外れた矢は地面に着弾し、派手に土煙をあげる。数秒の間、三人の姿が覆い隠され互いの攻撃が止まった。土煙が晴れた直後、シャスティが姿を見せる。


「んの野郎……! いちいちイラつくな!」


「グルッフォフォフォ、遅すぎるんだよ、お前たちの攻げ……ん? お前、ハンマーをどうし……アーッ!?」


「探し物か? それなら、私が持っているぞ。たった今、貴様のケツにブチ込んでやったがな」


 土煙で姿が隠れたのを利用し、シャスティはこっそりとリリンにハンマーを手渡していた。いち早く自分が姿を見せることでガローの気を引き、リリンが背後に回る時間を稼ぐ。


 そして、打面に雷の杭を生やして威力を強化したハンマーを振るい、リリンが一撃をお見舞いしたのだ。尻を狙ったのは、彼女なりの嫌がらせである。


「ぐおお、あお、うおあお……」


「貴様の見た目は一応、男だが……大地の民のように()()があるか分からんからな、尻で済ませてやった。ありがたくおも……」


「グルガアァ!!」


 尻を押さえてのたうち回るガローを見て笑っていたその時、ダーネシアが鎖を引きちぎり攻撃を仕掛けてきた。それも、突進ではない方法で。


「シャスティ、返すぞ!」


「あらよっ! さあ来な、またブン殴って……おおお!? あぶなっ!」


 ダーネシアは両腕に鋭く尖った謎の鱗を生やし、投げナイフのように投てきしてきたのだ。また突進してくると思っていた二人は、慌てて攻撃を防ぐ。


 シャスティはハンマーで、リリンは魔力の鞭で。飛来してくる鱗を受け止め、叩き落としていく。


「チッ、面倒くせえな! このままじゃあ近付けねえぞ!」


「それに、時間をかければあの間抜けヅラが復帰してくるしな。急がねばならぬが……二人では手が足りん!」


 痛みにのたうち回り、ガローは遠くへ行ったものの油断は出来ない。ダーネシアの対処に手こずっている間に復帰し、挟み撃ちにされれば勝機がなくなってしまう。


 最低限、あと一人……ダーネシアを抑え込める者がいれば、ガロー追討に集中出来る。だが、アゼルたちは真逆の方角に行き、近くに人里はない。


 救援が来ることは、まずない。……そう思っていた、その時。


「ゴアっ!?」


「おいおい、どうなってるんだ? なんか叫び声が聞こえるなぁと思って来てみたら……お前ら、何やってんだ?」


「ハハッ、どうやら天にいる神さんたちは、アタシらを応援してくれてるみえてだな。こんな奇跡を起こしてくれんだからよ」


 どこからともなく飛んできた四発の弾丸が、ダーネシアの四肢を貫く。少し遅れて現れたのは……アゼルの兄、カイルだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] このグズヤローは生かしちゃ置けねーな( :゜皿゜)こんな形でダーネルシアを弄ぶとはただで死ねると思うなよ尻の穴増やしたるぞ(ノ`△´)ノ その中偶然?助太刀参上のカイルだけど仮にもネクロマ…
[一言] やはりお前はぶっ潰さなきゃならないようだな! ダーネシアをこんな目にさせやがって!! それとカイル! いいタイミングで来てくれたぞ!
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