エピソード5
ホープの街中は、どこも煌びやかだった。
白基調の石造りの建物が並び、頭上には色とりどりに輝く飾りがある。
フリヘートによると、この飾りにもスルツニウム鉱石が使われており、夜になると淡く光るのだという。
そんな街の入り口付近、停留場へ向かう道中、近い所に件の協会はあった。
そもそも停留場にアシェとフリヘートがいるのは、緊急用の蒸気車が迎えに来て、それに乗っていたためである。
幸いにも、輸送用蒸気車に乗りなれていたアシェが乗り物酔いする事はなかった。
むしろ、乗り心地が良くて寝てしまいそうなくらい快適だった。
協会に着くと、フリヘートの案内に従うままアシェは中へ通された。
「す、すごい……!」
協会内は綺麗に整備され、かつ、程よく配置された装飾品に彩られ、鮮やかな世界が広がっていた。
それは、鉱山という薄暗く狭い世界で過ごしてきたアシェにとって、衝撃的だった。
(こんなにも……世界は大きいのか……)
「アシェ、空はもっと広くて自由だよ」
突然のフリヘートの言葉に、アシェが驚けば、彼は優しい声色で告げた。
「アシェは顔に出やすいから、すぐわかるんだ」
「そうですか? 初めて言われました……」
「そうなのかい? まぁ……そうだな。うん! 君はまだまだこれから成長するんだから、無理に気遣いしなくていいんだよ?」
「え?」
「もう少し、大人に甘えていいってことさ。さぁて! 手続きも済んだことだし、奥へ行こうか!」
「奥に……」
(なにが? いや、誰が待っているんだろう……)
不安げなアシェとは対照的に足取り軽く先を行くフリヘート。
その先に待つ者は……。
****
同時刻。
アシェがいた鉱山は――襲撃を受け、近隣の村ごと壊滅していた。
その中には、当然アシェの家族も含まれている。
数多の犠牲を出してまで、その襲撃者が手に入れた者……それは――
「あの魔剣……名失せの魔剣……我が同胞を屠った魔剣……ああ! 目覚めし宿敵! 憎き剣! いずこ? いずこ! いずこに!」
狙いし獲物を追い求め、彷徨う襲撃者。
その存在と、魔剣を所有する事になってしまったアシェが邂逅するまで、まだまだ先の事である。
だが。
確定しているのは……出会った時、それが運命の新たな転換であるという事実。
それだけは、いや、それだけが。
確約された宿命だ――
運命に翻弄されるアシェの未来、希望は果たしてどこにあるのか……。
それを知る者は、誰もいない。
もし、いたとしてもそれはきっと――神だけだろう。
この世界の主たる神だけが……。




