エピソード4
そうして、保護されたアシェを待っていたのは――活気に溢れた街中だった。
いつも、うす暗い鉱山か寂れた集落の往復しかしていなかったアシェにとって、こんなにも華やかな場所は初めてで、驚きと興奮を隠せない光景だった。
思わず瞳が輝くほどに。
そんなアシェを、フリヘートが優しい眼差しで見つめつつ……様子を観察していた。
その事に気づいたのは、勿論魔剣だ。
魔剣は笑いを含んだ声色で、アシェに語りかける……彼の純粋な心を踏みにじるように。
【あの男、貴様を監視しているぞ? 良いのか? 気に障るなら……食ってやるが?】
「つっ……!」
思わず言葉にならない声を発したアシェに、フリヘートがすぐさま声をかけ、怯えるアシェをなだめる。
「落ち着いてくれ! ここは安全だから!」
(違うんだ……危険なのは……僕なんだ……)
怯えた様子から一転して、暗い表情で身体を丸めるアシェに、フリヘートは困惑を隠せない。
だが、それと同時に確信に至ったと判断したらしい、フリヘートが再度アシェに声をかけた。
「アシェ。君が抱えている問題には、その背負っている物が関係しているんだね?」
「……あ、その……えっと……」
「無理して口にしなくて大丈夫さ、これでも察しは良い方なんでね?」
「……は、い」
「それじゃ、街案内はすまないが後日にして、まずは俺と協会に向かってもらうが、構わないかい?」
「きょうかい……?」
「あぁ、この街を管理している組織だよ。そこで落ち着いて話そう?」
「あ……う、はい……分かりました……」
「よし、じゃあ行こうか!」
こうして、協会目指してアシェとフリヘートは街の中を歩く。
なんでも、停留場から徒歩圏内らしい――協会は。
(僕は、どうなるんだろうか……)
恐怖が拭えない中、それでも……希望を見出したくて、アシェはフリヘートの後に続く。
背負っているモノの重さが、胸に圧し掛かる。
物理的な重さも少しある。
だが、それだけではない……想いの重さが、恐れが、負荷になっている。
そんなアシェの様子に当然フリヘートは気づいている……それすら、魔剣は愉しんでいるのだろう。
【どうなるのだろうな? 気になるな? 果たしてどうなるのだろうな……? 案ずるな、何かあれば対応してやるからなぁ? 我が下僕よ!】
――後悔を再認識しながら、アシェは足取りすら重くなりつつ、進む。
これから先を、生きるために。
……そんな、この街の名はホープ。
未来に希望を抱く者達が集う、生きた街であり――誰かが誰かの希望を紡いできた救いの都だ。




