表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

エピソード2

 ――身体がおかしい。

 不快感に苛まれながら森の中を歩き回っていたアシェだったが、どうにも調子がおかしい。

 不調の方ではない。

 むしろ、今まで感じた事がないくらいに調子が良い。

 不快感も、身体というより気持ちの問題の方が大きい。


(なんなんだ? この相反する状態は……僕に何が起こっているんだ?)


【どうした? あぁ、調子が良くて嬉しいのか】


「……そんなわけが……」


【我の力の一つに、所有者となった者の身体を強化する作用があるからな。それだろうよ】


「……は?」


(魔剣の所有者? 僕が?)


【我を目覚めさせ、所有しているのだから所有者であろう? 何を驚いているのだ】


「ちなみに、前の所有者はどうなったんだ……?」


【忘れたなぁ、クククッ】


(ちきしょう! 僕が強く出る事が出来ないからってコイツ!)


 理不尽な状況に、怒りを感じながらもアシェは森の中を進む。どうやら、気づけば森の先に出られそうで、安心と共に不安が襲う。

 それは、魔剣にまた意識を取られ……他人を攻撃しないか?

 その恐怖で、森から出るのを躊躇するアシェに、魔剣が声をかけてきた。


【安心しろ、我は意識がある時の貴様は乗っ取れん】


(本当か……? 信じていいのか?)


 疑念しかないが、ここで反論してもろくな事にならないと判断し、アシェは森の外、街道らしき道へ出る。

 空は青く澄み、日差しが眩しい。

 昨日までの自分であったなら、飛空艇が見えると喜んでいただろう。

 だが……今の自分には、その空が憎らしく思える。


(僕は……これからどうなるんだろうか……?)


 誰もいない事を確認したアシェは、街道を進む事にした。

 どうか、誰とも出会いませんようにと祈っていたアシェだったが、この世界は無情であった。

 背後から人の気配がしたと同時に、声をかけられたのだ。


「おや? 君、どうしたんだい? ここいらじゃ見ない顔だけれど?」


 ――振り返れない。

 ――振り返って、もし……魔剣がまた……。


「君? 体調が優れないのかい?」


(違うんだ……僕を、放っておいてくれ……!)


 だが、アシェに声をかけてきた人物は放っておいてくれないようだ。

 その人物は、アシェの右肩に優しく手をかけてきた。


「君。何かあるなら、俺に言ってみなよ? これでも、元騎士団員なんだ。まぁ、飛空艇乗りの方が今は板についているけどさ?」


(元騎士団の飛空艇乗り……? まさか!?)


 心当たりのあるアシェは、思わず振り返る。

 そこには、空と同じ青色の長髪を一つに束ねた水色の瞳をした青年がいた。


「飛空艇乗り……世界で最速の男……フリヘート……さん?」


「俺を知ってくれていて嬉しいね。そう、飛空艇乗りのフリヘートとは俺の事さ。それで? 君は?」


 アシェの憧れ、飛空艇乗り。その中でも、最速を出し、前線を行くフリヘートに、名乗る事が恥ずかしくて仕方ない。

 だが、それでも。

 名乗らずには、いられなかった。


「僕は……アシェです」


 これがまた、アシェの運命を動かす事になるのであった――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ