文化祭は何をする?
「おはよー! 久しぶり……でもないか」
「つい一週間前に盛大にパーティーしましたし、なんなら毎日電話なりチャットなりしてましたからねぇ。あっ、おはようございますです、センパイ」
新学期が始まった。……といっても今日は始業式だけで授業は何にもないけれど。終業式と同様に退屈でしかない始業式を乗り越えた俺らは、久々に我らが写真部の部室と足を運んでいた。……流石にひと月以上放置してたので、埃が酷い。ちょっと掃除しないとダメそうだ。
「八橋さん、手伝うよ」
「あ、ありがとうございます、晃センパイ。じゃあ向こうの方お願いしていいですか?」
「了解。じゃあ、ちゃちゃっと片付けますか」
雑巾を手に取りサクッと掃除。いつも屋敷でやってるし、この程度は楽勝だ。
「私も手伝うよ、あっくん」
「いいの?」
「別にここは家じゃないしね。っていうか、私家でも自分の部屋は自分で掃除してるじゃん? それと一緒だよ」
確かに、この部室はもう半分くらい自室みたいなものだけど。でも従者として仕えてるお嬢様に手伝わせるわけにも……。
「変な遠慮なんてしないでいいの。ほら貸してっ」
「おっと。……まあ、そこまで言うならいっか。窓の方をお願いしようかな」
「おっけー! もう、別に遠慮なんてしなくていいのに」
妙に上機嫌な様子で窓の方へ向かうクリス。……頼られて嬉しいのだろうか。まあその結果――
「……あら、ワタクシが手伝う必要はなさそうですわね」
少し遅れてきたイネスさんが来る頃には、部室は完璧に綺麗になっていたわけだし、結果オーライと言えばそうかもしれない。
*
「そういえば、二学期は文化祭がありますわね」
「そういえばそうだっけ。……今年はどうする?」
「せっかく部活としてちゃんと始動した訳ですし、なにかしら出したいですわね」
いつも通り優雅に紅茶を飲みながらトークタイム。文化祭と言えば、高校生活の代表的なイベントの一つ、もちろん憧れのイベントだ。
「この学校はクラスの出し物はやらないし、準備期間はたっぷりとれますしね」
「あ、そうなんだ」
「参加したい人とどうでもいい人がはっきり分かれてるからね、ここ。だからやりたい人だけやれるように、部活と有志の企画しかないんだよね」
私立高校、しかも通うのはお金持ちばかりな訳だし、個々の自由を尊重しているんだろう。……まあ確かに、「くだらない」って言いそうなお嬢様やお坊ちゃまも多そうだしなぁ、この学校。
「でも、写真部で文化祭参加って、何します? 普通に写真展でも開きますか?」
「まあ、正直それくらいしか思いつきませんわね」
「……私もかなー」
女子勢3人の意見があっさり一致した。まあ、あんまり奇をてらってもしかたないし、企画する当人側が楽しめる企画ならなんでもいいとは思う。
「あっくんは何かある?」
「うーん。別に写真展でも全然問題ないとは思うけど……。でも、なにかテーマとか決めたら面白いんじゃないかな」
「テーマ、って?」
「ほら、実際の写真家の人達が開く写真展でもテーマがあること多いからさ。『夢』とか『友情』とかね」
「……詳しいですねセンパイ」
「一応写真部なわけだしね。偶に調べたりしてるよ」
まあ、外に出て実際に見に行く暇はないからスマホで調べてるだけだけど。
「じゃあ、ワタクシたちもテーマを決めて写真展をすることにしましょうか」
「賛成っ! でも、肝心のテーマはなんにしよっか?」
正直なにも考えずに発言したので、そこまでは考えてなかった。……なにがいいんだろうね?
「せっかく時間あるんですし、じっくり考えたいですね」
「私もほたるちゃんの意見に賛成かな。まだ二ヶ月くらい先だし」
今は9月の頭で、文化祭は10月末に開催の予定とのこと。確かに、これくらい準備期間があるなら、しっかりしたものを作りたいかも。
「……では、一週間くらいはテーマを考える期間にいたしましょうか。それまで各自で考えておいて、一週間後にここで発表する。どうです?」
「オッケー。そもそも今週いっぱいはもう部室行けないしね。それが一番いいかも」
「……あれ? なんかあったっけ……?」
家にお客様がくる予定はなかったはずだし……。そんな風に色々考えてると、半ば呆れたような顔した八橋さんが突っ込んでくれた。
「明日から実力テストっすよ。夏休みの宿題でやった範囲の復習ですけど、あんまり低い点数だと居残り追試が待ってますよ」
「……え? それホント?」
「いや、嘘ついてどうするんすかこんなことで。……センパイ、知らなかったんすね」
そういえば、終業式の日に担任の先生がなにか言ってたような……。如何せんそれから色々あったので、ちょっと記憶が飛んでるのかもしれない。
「そういう訳ですので、テスト期間は部活禁止ですの。なので次ここで集まれるのは一週間後ですわ」
「……イネス。あっくん多分聞こえてないよ」
「ホントですね。……そういえば晃センパイ、勉強苦手なんでしたっけ」
「ううん、別に苦手じゃないはずだよ。実際一学期は結構いい点とれてたしね。……まあ、苦手意識はあるみたいだけど」
どうしよう。宿題自体はちゃんと片付けたけど、もう一回同じ問題を解けと言われても出来る気はしない。かといって追試を受ける訳にはいかないし……。
「大丈夫だって! あっくん要領はいいから、今日帰ってからしっかり勉強すれば点数撮れるから! 私も一緒に勉強するからさ、頑張ろ!」
という訳で、この日の夜は地獄のような勉強会が開催されるのであった……。




