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クリスからのプレゼント/イネスの憂鬱

「ふーっ。お疲れさま、あっくん。ごめんね、荷物持ちさせちゃって」

「いいっていいって。クリスや八橋さんに持たせっぱなしにさせるわけにもいかないし」


 クリスマスの夜。イネスさんへの誕生日プレゼントを一通り買い終えて屋敷に戻った俺は、手に持ったクリスの購入物をクリスの部屋へと運びこみ一息ついた。にしてもクリス、随分とたくさんプレゼントを買ったんだな……。


「そういえば、これ全部イネスさんへのプレゼントなの?」

「いや、流石に全部じゃないよ。自分のものもあるし、あっくんに買ったのもあるよ」

「……俺に?」


 思ってもない発言に、驚きと嬉しさでちょっと声が裏返ってしまった。


「ははっ、そんなにびっくりすることじゃないでしょ? 一応、今日はクリスマスなんだし」

「……クリスマスプレゼント、ってこと?」

「そーいうことっ。昨日渡せなかったのは、今日取りに行く予定になってたからなんだ。本当は昨日プレゼントを貰ったときに渡したかったんだけどね」


 そう言いつつ、ガサゴソと袋の中に手を伸ばすクリス。


「……よいしょっとっ。はい、どうぞっ。えへへ、ムードとか全然なくってごめんね?」

「別にいいよ、今さら。……そんなのなくっても、十分嬉しいからさ」


 クリスが俺に差し出してきたのは、男の俺でも両手で抱えないと持てない程に大きな紙袋。そして、その袋の中いっぱいに入っていたのは――


「……服?」

「そっ。だってあっくん、自分で服とか全然買わないでしょ? ファッションに無頓着っていうかさ。だから、私が着て欲しい服をいーっぱい買ってみたの」


 そのクリスの発言通り、袋の中には明らかにブランドものと思しき服が詰められている。確かに俺は必要最低限しか服を買ったりしないから滅茶苦茶嬉しいんだけど、でもこれって相当な金額になったんじゃ……?


「えっと、野暮なこと聞くけど……。いくらした?」

「ははっ、気にしない気にしないっ。まあそれなりにはしたけど、今まであっくんにしてもらったことを考えたらこれくらい大したことないって。この一年、散々従者として頑張ってくれた訳だし」

「まあ、クリスがそう言うなら、ありがたく貰っておくよ。――ありがとう、クリス」


 俺の感謝の言葉に、クリスは満面の笑みで応えてくれた。


「どういたしましてっ! ……まあ、私も昨日しっかりプレゼント貰ってるからおあいこなんだけどね」


 そう言うクリスの左手の薬指には、昨日俺がプレゼントした指輪がキラキラと輝いていた。……やっぱり、よく似合っている。


「俺的には、おあいこってレベルじゃないけどね……」


 なにせ、俺からのプレゼントをあんなにも喜んでくれたのだから。あの表情を見れただけで、俺としては十分満足なくらいだ。


 *


「ただいまです、イネスセンパイ」

「あら、おかえりなさいホタル。……ずいぶん遅かったですわね」


 イネスセンパイへのプレゼントを無事に手に入れ、屋敷へと戻ってきた。広間にはまだイネスセンパイもいたので、アタシもイネスセンパイの隣に座る。イネスセンパイへのプレゼントを買っていたことがバレていることもあって、少し気恥ずかしい。


「あはは、ちょっと調達に手間取っちゃいまして。クリスセンパイたちとは別行動だったんですけど、もう帰ってきました?」

「ええ、つい先ほど戻ってきましたわよ。……にしても、一人で大丈夫でしたか?」

「まあ、なんとかなりましたよ。イネスセンパイのおかげで、フランス語もちょっとは喋れるようになってましたしね」


 実際、イネスセンパイのフランス語講座にはかなり助けられた。あれがなかったら、きっと今回のプレゼントを見つけることはできなかっただろうし。


「それならまあ、良かったですわ。……にしても、一体何を買って来たのですか?」

「それはまだ秘密に決まってるじゃないですかー。センパイの誕生日は明日なんですから、今はまだ楽しみにしててくださいっ」

「ふふっ、そこまで言うのなら、大人しく待っていることにしましょうか」


 そう言うイネスセンパイの表情は穏やかで、間違いなくアタシたちからのプレゼントを楽しみにしてくれてはいるようだけど……、どこか暗いような気もする。多分、あの人たち関連の理由なんだろうけど。


「……レオンさんたち、結局今日は帰ってこないんですか?」

「元々は今日中に帰るつもりだったようですけど……。どうやら、両親に捕まってしまったみたいですわね」


 やっぱり、暗い表情の原因はレオンさんのようだ。そりゃ、せっかくの恋人と直接会える珍しい機会が減ってしまった訳なんだから、暗くなっても仕方ないだろう。


「っていうか、ご両親に捕まったってどういう……?」

「我が家の両親は、レオン様のことをそれはもう気に入っているんですの。……きっと今ごろ、ワタクシと普段どうしているかを根掘り葉掘り聞いていることでしょうね」

「あー、なるほど……」


 なんとなく、イネスセンパイのご両親のイメージが掴めた気がする。フランス貴族の当主と当主夫人な訳だから、もっと厳粛な人だったりするんだと思ってたけど……、どうやら世間一般の夫婦のソレと大して変わらないみたいだ。


「まあ、それでも明日の朝には帰ってくるみたいですけどね。はあ、本当にお母様もお父様も、もうっ……」


 呆れたような、それでいてどこか楽しそうなため息。きっと、しばらく会っていないご両親の様子を思い浮かべて懐かしんでいるのだろう。


「さて、ワタクシはもう寝ますわ。明日は皆で遊びに出ようと思ってますから、ホタルも早く寝てくださいね?」

「ははっ、りょーかいですっ。じゃ、アタシももう部屋に戻りますか」


 気付けばクリスマスももうすぐ終わり。なんともクリスマスらしくない一日だったけど、これはこれでとても楽しい一日だった。

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