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高2にタイムリープした俺が、当時好きだった先生に告った結果  作者: ケンノジ


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決戦! 市民プール


「ぶへやぁあっ……」

「うん、いい感じ、いい感じ」

「ふひい、ふいい……」

「どんどんよくなってるよ、春香さん」

「ふううん、ひいん……」


 バシャバシャ、と柊木ちゃんが足を懸命に動かすと水しぶきが上がる。


 俺はプールの中で彼女の手を引きながら、ゆっくりと後ろに下がっていく。


「せい、じ、君、足がもうもたない……」

「顔上げない。ちゃんと水に浸けて。息継ぎのときだけ顔上げて」

「もうやだぁあ……厳しい誠治君はいや……」


 ややスパルタ気味に柊木ちゃんに水泳を教えているのは、理由があった。


 三日前。


『誠治君、今度は海に行こうよ、海!』

『別にいいけど、春香さん泳げないでしょ』

『泳げなくてもいいのっ。浮輪とゴーグルがあればどうにかなるから』

『て言って、この前プールの波に呑まれて溺れてたんですけど』

『あ、あれは事故だから……』

『泳げないと事故に繋がるから、行くにしても泳げるようになってからね?』


 と、家の中で眩しいビキニ姿になり、浮輪をすでに装備している柊木ちゃんに俺は言った。


『ぷかぷか浮いているだけだからいいの!』

『海を舐めるなっ!』


 というわけで、俺が水泳を教えることになり、今日こうして市民プールに二人でやってきたのだった。

 キャップとゴーグルをしているから、誰も俺たちだとはわからないだろう。


 回想を終えたあたりで、バシャバシャの音が聞こえなくなっていることに気づく。

 ぷかぁ、と競泳水着を着ている柊木ちゃんが浮いていた。


「うぉいいいい、大丈夫かああああああああああああ!?」


 慌ててプールサイドに女神を水揚げする。

 ひいこら呼吸しながら、柊木ちゃんがゴーグルを取って言った。


「やっぱり、無理だよぅ……泳げなくってもいいでしょ……?」


 ころん、と横になって胎児のように丸くなった。


「行きたい……夕暮れに染まる砂浜を手を繋いで歩きたい……海水のかけあいっ子したい」


 ロケーションばっちりだな。

 本当にそれだけでいいなら、俺もここまで海に行くことに対して拒否はしない。


 事故を防ぐためにも、泳げるようになっていたほうがいいのは確かだ。

 だから今回は、夏休みで時間もあるからこうして少し厳しめに特訓をしている。


「泳げるようになったらね。でないと、俺行かないから。もし、俺の足がつって溺れたら、春香さんどうするの?」

「決まってるよ!」


 あわあわしながら、周囲に助けを求める様子が目に浮かぶ。


「一緒に死ぬっっっ」

「死ぬな、生きろ」


 はあ、と俺はため息をついた。


「春香さんが泳げたら、俺を助けることができるんだよ?」


 競泳水着もよく似合っている柊木ちゃん。

 けど、出るところが出ている柊木ちゃんにはちょっと窮屈そうで、お尻や胸のあたりがムチっとしている。


「うぅぅぅ……」

「ちょっと休憩しようか……」


 追い詰めすぎてやる気を失くさせるのもよくない、と判断した俺は、自販機でスポーツドリンクを買って戻った。


「おねーさん、泳げないのー?」

「あはは……、うん、そうなの」


 ベンチに座っている柊木ちゃんのまわりに、スイミングスクールに通っているらしいガキんちょ(推定小五)が三人ほどいた。


「一緒にいたヤツの教え方が悪いんだよー」

「あはは……どうだろうね」

「おねーさんには、ぼくが教えてあげる!」

「ありがとうー」


「おい、子供たちよ。俺の彼女に何か用か」

「えー!? この人、オッサンの彼女なの?」


 お、オッサン……!? 外見は高二だぞ……。


「ぜってー嘘だぁー!」

「ホントだったら、おねーさん、こいつに騙されてんだよー!」


 あはは、と柊木ちゃんが笑っている。


「騙されてないよ」

「き、キミたち……俺はまだ高二でオッサンではない。それに、騙してもないからな」


「「「嘘だぁー」」」


「嘘じゃねえって言ってんだろう!」

「子供相手にガチギレすんなよ、オッサン」

「みっともねー」

「おねーさん、こんなオッサンと本気で付き合ってるんなら別れたほうがいいよー」


 言いたい放題言いやがって……!


 だが、落ち着け、真田誠治。

 相手はたかがガキ。

 アラサーの俺が真剣に怒るなんて、大人げない。


「あのオッサンが教えるの下手クソだから、ぼくたちが教えてあげるよー」

「ガキんちょは引っ込んでろ。さっさと帰ってママにパイでも焼いてもらうんだな」


「おねーさんに教えてるのも、下心があるからだろー?」

「ぼくたちよりも泳ぎが上手かったら、別にいいよ?」

「勝負だ、勝負!」


 ――駆逐してやる……!


「望むところだ、やってやらぁあああああああああ!」

「誠治君、頑張ってね!」

「おう」


「「「……」」」


 ガキんちょたちが面白くなさそうな顔をする。


「あれあれ~? ボクちゃんたち、もしかして自分たちが応援されるとでも思ってたんでちゅかー?」


 ここぞとばかりに俺は全力で煽る。

 三人がビート板を持って、俺に襲い掛かってきた。


「おい、武器はセコいだろ――」


「「「うるせー、オッサン!」」」


「誰がオッサンだ、クォラァ! いいだろう……かかってこいやぁああ!」


「じゃあ一〇〇m×三のリレーな」


 いつの間にか勝手にルールを決めやがった。

 てことは、俺は一人で三〇〇m……?


 オーケー、いいだろう。正義は不利を跳ね返すからカッケーんだ。


 俺と一番手のガキんちょが位置につく。


「自称彼女を取られても文句言うなよ、オッサン」

「はー? 取られませんけど? てか自称じゃないし」

「――よーい、どん!」


 ぱちん、と柊木ちゃんが後ろで手を叩いた。


 その瞬間、俺たちは飛び込む。

 横目で見えたけど、スイミング通いだけあって飛び込みもスムーズでフォームも綺麗だった。


 けど、俺の敵じゃねえ! 大人げなかろうがなんだろうが、全力でねじ伏せる。

 一気に差を広げて、一〇〇mのターンをする。


「誠治君、はやーい! ペンギンみたいっ!」


 きゃー、きゃー、と柊木ちゃんが黄色い声援をプールサイドで上げてるのが聞こえた。


 もうちょい他に例え方ないのかよ、と思いながら俺は水中をぐんぐん進んでいく。


 ……あ。やばい。序盤に飛ばし過ぎた。

 乳酸がたまりはじめ、腕と足が重くなってくる。


 二〇〇mのターンをしたとき、「あとちょっと! 追いつけるぞー!」という声が聞こえた。


 ちら、と一瞬だけ後ろを見ると、リードが半分くらいに縮まっていた。


 俺の全存在を懸けてあのガキんちょたちをねじ伏せる……!


 負の感情をエネルギーにして、俺はまた速度を上げた。


 三〇〇mを泳ぎ、顔を上げると一〇mちょっと差をつけてのゴールだった。


「誠治君、本当に速いねー!」

「ま、まあ……ね……」


 ぜえ、はあ、と肩で息しながら、プールサイドに上がる。


「お疲れ様♪」


 柊木ちゃんが、マネージャーみたいにタオルを持ってきてくれた。


「オッサン、まじで速いじゃん」

「だろ? てかオッサンて言うな」


「ちょっとは手加減しろよなー、オッサン」

「だからオッサンって言うな」


「子供相手に本気になんなよなー」

「お前らも速かったぞ?」


 にしし、と笑って、「じゃあね、お兄さんたち」とガキんちょどもはプールから去っていった。


「あー、づがれだぁ……」


 腰を下ろした隣に、微笑を浮かべる柊木ちゃんが座った。


「ふふふ。楽しそうに見えたよ? 誠治君、子供に好かれるタイプかも」

「そんなことないよ」

「たまーに、将来のことを想像するんだけど、あたしたちが子供を授かったら、誠治君はいいお父さんになりそうだなって」

「それは、どうだろう」

「あたしたちも帰ろ?」


 柊木ちゃんが立ち上がり、出口のほうへ歩いていく。


「どこ行くの。まだ特訓終わってないよ?」

「ギクっ」


 何いい感じにまとめて帰ろうとしてんだ。


「や、やだああああああ! 厳しい誠治君は嫌いぃいいいいいいい」

「はいはい、優しく丁寧にするから、ね?」


 ジタバタ暴れる柊木ちゃんを引きずって、それから二時間特訓した。


 俺の指導と柊木ちゃんの努力の甲斐あって、柊木ちゃんは犬かきを覚えた。

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