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高2にタイムリープした俺が、当時好きだった先生に告った結果  作者: ケンノジ


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今後のこと


 夜。

 俺は柊木ちゃんちに入って、主が帰ってくるのを待った。


 相変わらず部屋は綺麗で、キッチンに洗いものも残っていない完璧ぶりだった。


「ただいまー?」

「あ。おかえり」

「今日は珍しいね。平日に。どうかした?」


 リビングで柊木ちゃんが上着を脱いでソファに座る。


「妹の夏海ちゃんのことなんだけど」

「夏海のこと?」


 以前、タイムリープが解除されたときのことだ。

 俺が柊木ちゃんの実家に挨拶に行ったら、あまりいい反応は示されなかったらしい。


 条件として年収一千万って言われたみたいだけど、それが単なる条件なのか、それとも俺との交際を認めたくないがために掲示したのかはわからない。


「ある程度、俺とも面識があったほうがいいと思うんだ」

「どうして?」


「俺と柊木ちゃんの交際を認めてくれる身内がいれば、色々と今後スムーズに話が進められるんじゃないかと思って」


「夏海には、あたしたちが付き合ってるってことをバラすの?」


「ううん。今付き合っていることがバレていいわけじゃない。まだ同じ学校の先生と生徒だから。要は、俺の人となりを、柊木ちゃんの身内に知ってもらえれば、『俺たち付き合ってます!』『そうなんだ! 真田君なら、お姉ちゃんを任せられるね!』ってなるんじゃないかって思って」


「ふむふむ。なるほど」


 ひとしきりうなずくと、じいっと柊木ちゃんが俺をのぞきこむ。


「え。何?」

「……当たり前のことではあるんだけど、高校生が言うにしては、ずいぶん大人な考えだなって」


 俺はただ、前回現代に戻ったときのフラグを折りたいだけだ。

 妹ちゃんに俺や俺たちの仲を認めさせていれば、多少援護もしてくれるはず。


 現代の俺は柊木ちゃんパパに会ったあとだったらしいけど、この俺はまだ会ったことはない。

 まだ高校生のうちは紹介することはできないから、今俺ができることは、外堀を埋めていくことだけだ。


「大人な考えっていうか……ちゃんと春香さんとの今後を考えているってことだよ」

「ほんとに?」

「うん。本当に。……どうして?」


 だって、と、柊木ちゃんが唇を尖らせながらソファをいじる。


「夏海のことが、気になっているとか、そういうことなんじゃないかって、先生、警戒をしています」


 目が合うと、ぷい、と柊木ちゃんがそっぽをむいた。


「気にならない、気にならない! なんで一回会っただけの女の子を気にならないといけないんだよ」


「だって……夏海のほうが、誠治君と年近いし……仲良くしたいんでしょ……?」


 くるん、と俺に背中をむけてしまった。


 拗ねてる……?


「仲良くするのは、俺のことや俺たちの仲を認めてくれる味方がほしいからで」

「そ、それが口実なんじゃないかと、あたしは思ってしまったんですぅ!」


 ですぅ、って、そんな子供みたいな言い方して。


「夏海は、確かにいい子だよ。運動神経もいいし、おしゃべりで明るいし。年も誠治君よりひとつ上で近いし……」


「年が近いって理由で好きになってたら、俺はクラスの女子は全員好きってことになっちゃうでしょ?」


 結構柊木ちゃんは、年の差を気にしてるらしい。


「誠治君と出会うのなら、あたしだって高校生のときがよかったよぅ。一緒に帰ったり、放課後寄り道したり、テスト勉強をお互いの家でしたり、夏は浴衣でお祭り行ったり……」


 どうやら、本当にコンプレックスを感じているみたいだ。


 俺はそんなことを考えたことはなかったけど、柊木ちゃんは違うらしい。


「これでも、あたし、結構不安なんだよ?」


 背中をむけて、俺のほうは全然見ないまま。


「あっさり気が変わっちゃうんじゃないかって……」


 社会人と高校生っていうのは、それくらい住む世界が違う。

 俺も両方経験済みだから、それがよくわかる。


 社会人の同じ仕事を繰り返す毎日と比べれば、高校生活ははるかに刺激的だ。

 価値観が違うのも、当然だろう。


 大丈夫って言っても、不安は簡単には拭えないだろうし、どうしたもんか。


 後ろから抱きしめてみる。


「……っ」


 ぴくん、と肩が動いて、うずうずしているのがわかる。


「不安なのは、俺もだよ?」

「そ、そうなの……?」


「うん。職員室で、春香さんに変な虫がついてないか、すげー心配。飲み会の様子とかも俺はわからないし」

「大丈夫! 安心して! 男の先生には、あたし、すっごい素っ気ないから!」


「とは言うけど、モテそうなんだよなぁ、春香さん」

「全然そんなことないよ? それは誠治君も一緒だよ」

「いやいや、俺、全然モテないし」


 俺たちは、相当な彼女バカで、彼氏バカだったらしい。


 うんうん、とうなずいて、「心配しないで、誠治君!」と柊木ちゃんは言った。


 思わず俺は笑ってしまった。


「え? 何? 何かおかしい?」

「ううん。俺の気持ち、わかったでしょ? 大丈夫、安心して、心配しないでって、俺だって言いたいんだよ」


「あ……そっか……」

「お互いを信じましょうってことで、ひとつ」

「そうだね」


 はい、と柊木ちゃんが小指を立てるので、俺も小指を絡ませた。


「うーわーき、したーら、包丁で滅多刺しっ♪ 指切ったっ♪」


 こ、こえええええええ!?

 ポップに何歌ってんだ。


「ま、しないからいいけど。……でも、どうして急にこんなこと言い出したの?」

「誠治君が、夏海と仲良くしたいって言うからじゃん……」

「あ。わかった。拗ねてたんじゃなくて、嫉妬してたんだ?」


「ち。違うからっ。妹に嫉妬なんてしないからっ」


 俺の腕をほどこうと必死だった。

 この反応は、絶対にそうですわ。

 なんか恥ずかしそうにしてるし。


「本当は?」

「…………してた」


 急に素直になる柊木ちゃん、可愛い……。


「心配にもなるよ、不安にもなるよ、だから嫉妬しちゃうの! だ、だから――それだけ大切で大好きなの!」


 ぐふっ……。

 耳赤くしながら言わないでほしい……。

 けど、もう一回言ってほしい……。


「誠治君は?」

「同意見」

「ちゃんと、言葉にしてくれないと……」


「心配したり不安になるのは、相手のことをそれだけ大事に想ってるからで……だから、春香さんのこと、大好きなんです……」


 途中から照れくさくなって、敬語になってしまった。

 柊木ちゃんは、胸を押さえて丸くなっている。


「ぐふう……死因、誠治君にキュンとしてしまったこと……」

「まだ生きてるだろ」


 似た者同士のおれたちは、相変わらずのバカップルなのだった。

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