16話 いのち、さずけよー
感想、評価、ブックマーク登録、ありがとうございます
3日目の朝。
欠伸しながらセーフルームからはい出る。
いろいろ考えててあまり眠れなかった。
主に眷属のことだけどさ。
ダンジョン防衛のための戦力増加として、俺所有の3大高DPスキルの筆頭を使うことにする。
ガラテアスキルだ。
像や人形を本物にすることができるチートスキル。
消費MPは1000~。さらにHPとCPも1000~消費。
合計ではない、それぞれ1000以上消費するという特殊なスキルだ。
まさか魂の注入に俺の命も使うんじゃないだろうな?
1000~ってのは大きい。HP倍増のスキルを取ってなかったら使えなかったところだ。
倍増系のスキルはHP、MP、CPのそれぞれにあり、対象の能力値を名前の通りに倍増するスキル。レベル1で2倍になる。必要DPは2000だった。小人価格で20。安いよね。
CP倍増は予算を考えて見送ったけど、今でも買っておけばよかったかと悩んでいるよ。買ってたらダンジョン作製でさらに困っただろうから、買わなくて正解なんだろうけど……。
あと気になるのはガラテアの解説にあった本物って記述。
大きさはあまり変わらないらしいから、実物大ならともかく縮小サイズの人形に使ったら、どう考えても本物じゃない。
それに像でも、実在の人物をモデルにした像に使ったら、できあがるのは偽者だよね。
あの記述、修正の必要があるだろう。今まで誰も習得しなかったから問題にならなかったんだろうか?
……悩んでいてもしかたない。
怖いけどとにかくやってみるか。
今のDPなら普通に眷属を購入することもできるんだけど、それは後回し。
勢いにのってる今じゃないと、フィギュアを本物になんて面倒になるに決まっている。
フレンドたちとチャットできれば俺、寂しくないってダンジョンに1人で引き篭もれる自信あるしさ。
だけど、このダンジョンにも俺以外の意見はあった方がいい。エージンとこのサッキィのように。
だからガラテアする。
その前に俺の下着と服と靴を買っておこう。さすがにこのままでは恥ずかしい。貫頭衣もボロボロだ。
昨夜は小人さんに靴を作ってもらえばよかったよ。ゴブリンの皮を剥いでさ。
昨日の朝記録しておいたメモを確認。そうだよ、歯ブラシとヘアーブラシ、髭剃りと鏡もいるな。
増える人員分の食器と、ついでにティーセットも買っちゃうか。
朝飯はいいや。緊張で食欲がわかない。
新しくなった風呂場へ移動。
浴槽は少し大きめなのを買って設置してある。
「湧きでよ、温泉!」
湯船につかりながら、どのフィギュアで試すか考える。
本物になっちゃうってことは、そのフィギュアがなくなるわけで。ちょっともったいない。
複製スキルでコピーするにも素材がなあ。
ソフビは石油製品だよな。塩化ビニルだから塩もいるんだっけ?
見つけるまでなんて待てない。ダンジョン掘ってたら原油掘り当てるなんて都合よくはいかないだろう。
原油の現物があれば植物を素材に複製を試すんだけど、前世でも原油なんて持ってなかった。……原油をすっ飛ばして、いきなり植物を素材にソフビフィギュアを試す?
見本にするオリジナルとあんまり近くない物質だと、素材もMPも消費が大きい。
手持ちの名無しイネ科植物じゃ足りなさそう。
仕方ない。今回は複製は諦めるか。
ロボットの可動フィギュアやプラモデルも前世から持ってきてはいる。
動けば戦力になるのだろうけど、人が乗り込んで操縦するやつばっかりだから、本物になったとしてもパイロットが必要だ。
燃料や弾薬もいるだろう。
意味がない。
巨大ロボは男のロマンだからいつかは、って思ってるけどさ。
こんなことなら少年漫画ヒーロー系のアクションフィギュアも買っておくべきだった。関節が玩具っぽくてなんか嫌って敬遠してたんだよね。
……ないものねだりをしてる場合じゃないか。
戦力になりそうなのを選ばなくては。
ガラテアスキルは1度使用するとクールタイムが発生するので、すぐにやり直しができない。慎重に選ばないと。
風呂場から出て身支度を整える。
成功した場合は女の子と会うことになる。第一印象は大事だろう。
DPで買ったばかりの下着と服を着た。
もっと高い服にすればよかったかな?
鏡を見ながら髪のセットに迷う。
自然な感じで……いやそれとも立たせるか? 前世アイテムの整髪剤を使えばできるよな。……オールバックでばっちり固めるというのも……。
迷いながらも無難そうな髪形にまとめて靴を履き、1層の最奥、階段のある部屋に転移する。
あとで水を張って2層への侵入を防ぐ予定の部屋だ。今は階段とその周りを囲んでいる大きな穴があるだけの部屋。
直径10メートル、深さ4メートルぐらいのその穴の底に転移してきた。
中央には柱上に立っている箇所。この天辺が2層への階段の入り口になっている。
いずれ水を張って島にする予定だ。
もし暴れられても、ここならば被害は少ないだろう。
「よし!」
深呼吸してから自分の顔を両手ではたいて気合を入れて、アイテムボックスからフィギュアを出す。
選んだのは小柄な青髪ショートの少女のフィギュア。
左目に眼帯、着ているのは白衣、その下はボディスーツと属性を盛っているキャラだ。
もちろん美少女である!
それを、箱から出す。
ほとんどのフィギュアは買った時の箱に入れて保管していたから、前世からの持ち越し時もそのまま収納した。
自分と同じ6分の1のフィギュアを箱から出すのは妙な気分だ。1分の1サイズのフィギュアには手を出さなかったけど、買ってたらこんな気分になったのかな?
箱から出したフィギュアを立たせる。
思ったよりも小さい。俺と並ぶと中学生か、もしかしたらそれよりも小さく見える身長だ。
スケール変換間違えてない?
小ささを強調しているのかもな。胸もぺったんだし。
別に俺はロリコンってわけじゃないよ。巨乳さんも好きだから。ビキニアーマー巨乳戦士のフィギュアだって持ってる。
たださ、リアルにそんな姿の美少女にうろつかれたらって考えるとちょっと無理でしょ。マイサンが元気になりすぎて前かがみになることは確実だ。
あ!
ガラテアを使う前に眷属契約しておかないと。
開いたウィンドウを見ながら眷属契約の手続きを開始するとフィギュアの足元に輝く魔法陣が発生する。この魔法陣から出なければ契約完了、逃げられたら契約失敗となる。
フィギュアを眷属にできるかはわからない。
死霊魔術使いが死体を眷属にしてからアンデッドにすることで確実に眷属化できるようにする、ってことを掲示板情報で見たので試してみた。
数分後、魔法陣の光が消えた。完了したのかな?
ウィンドウで確認すると、俺の眷属欄に『アキラ(ヴァンパイアエンプレス)』だけでなく、『人形:1』も追加されている。成功したようだ。
ふう。これでガラテアが上手くいけば、俺の眷属が誕生する。
しかも美少女!
……緊張するなあ。
今のうちに自己紹介の内容を考えておかないと。
しばらく悩んでメモをとってからガラテアを試す。
フィギュアの正面に立って、MPを2000、HPとCPは1200ほど使おうと念じながら詠唱する。ここでケチって失敗してもしょうがないからね。
「魂なき人形に命を吹き込まん! 目覚めよ! 魔王軍四天王、ゴーレムマイスターのコルノ!」
名前以外に役職を付け足したのは、そうなってほしいからである。この姿なだけの小人ができたのでは嬉しくない。
詠唱中、俺の身体からなにかがごっそりと抜けていく気がして力が入らない。HPも使うからそのせいだろうか。
直後、フィギュアが一瞬、ドクンっと大きく鼓動したように見えた。
そして瞬く彼女。
「……ここは……?」
その唇からはゲームで聞いたのと同じ声がした。
「こ、ここは俺の、だだ、だん、ダンぢょンです!」
「う、うん?」
しまったぁ!
せっかく名乗りまで考えていたのについ質問に答えてしまった。しかもかんでしまうとは……。
「え、ええと?」
「む、無理矢理眷属にしちゃったけど怒らないで下さい! どうか助けて下さい!」
「眷属?」
「ダンジョンマスターの眷属です! あ、俺、ダンジョンマスターのフーマです。一昨日ダンジョンマスターになったばかりです。ふつつか者ですが、よろしくお願いしますっ!」
うう、なに言ってるか自分でもわからん。頭が働いていない。
心臓がドクドクドクドクいってるけど、脳に血液届いてないんじゃないのか?
顔も熱い。きっと真っ赤になってるはずだ。
アキラにはあんなに普通に会話できたのに。
だからいける、って思い込もうとしてたのに。
等身大だとやはり意識してしまうのか。
「落ち着いて、ね?」
「はいっ! 落ち着くでありますっ!」
美少女様に言われたのだ、落ち着かなくては。
落ち着こう、落ち着こう、落ち着こう……あんなにじっと見ているんだ、早く落ち着かなくては!
落ち着けるか!
余計緊張するわ!
「……見られていると緊張する」
「そう? 恥ずかしがりやさんなんだね」
ぐはっ。なんという可愛い言い方。さん、ってオイ。
この少女は俺を萌え殺しにきている!
視線が外れたので、俺も美少女を見ないように後ろをむいて深呼吸。
ふーーっ、はーーっ、ふーーーっ……。
拗らせているのは自覚してるけど、まさかこれほどだったとは!
前世ではこんな美少女と会話する機会なんてゼロだったから気づかなかったぜ。
クイズの答えは1のフィギュアでした
回答してくださった方々、ありがとうございます




