9話 エンプレス
PKされたというフレンドの要請を受けて、邪神のダンジョンにチャレンジすることになった。
コアルームの床に魔法陣が出現する。青緑色に輝く魔法陣。
これが邪神のダンジョンへと連れて行ってくれるポータルらしい。
そうだ、念のために邪神のダンジョンへ行く前に俺のステータスを鑑定妨害スキルで擬装しておこう。
フーマ
スクナ 男 LV1 DLV1
ダンジョンマスター
STR 200
INT 264
AGI 200
DEX 200
VIT 500
MIN 999
HP 1400/1400
MP 2526/2526
CP 1499/1499
スキル
ダンジョンマスター語LV1、標準小人語LV1、農業LV1、酒造LV1、調合LV1、温泉作製LV1
アイテムボックス(10000キロ増量)、鑑定LV1、前世の記憶、地図、前世のアイテム(100キロ増量)、鑑定妨害LV1
ガラテアLV1、複製LV1、セーフルームLV1
彫刻LV1、彫塑LV1、裁縫LV1、木工LV1、料理LV1
錬金術LV1
投擲LV1、剣LV1、槍LV1、弓LV1
地魔法LV1、水魔法LV1、火魔法LV1、風魔法LV1、光魔法LV1、闇魔法LV1、回復魔法LV1
小人魔法LV1、転移LV1
暗視LV1、解錠LV1、施錠LV1、罠発見LV1、罠解除LV1
感知LV1、再生LV1、壁歩LV1、隠形LV1
怪力LV1、機敏LV1、知識LV1、頑丈LV1、気骨LV1
HP倍増LV1、MP倍増LV1
毒耐性LV1、病気耐性LV1、痛み耐性LV1、麻痺耐性LV1、石化耐性LV1、高温耐性LV1、低温耐性LV1、魅了耐性LV1、肉体異常耐性LV1、精神異常耐性LV1
これが今の俺。スキル数は多いんだけどなあ。
100分の1のお値段で、アキラみたいに武器を買うのも悪くなかったかもしれない。
たとえ壊れ性能の武器でも小人サイズのなら殺してまで奪おうとはしないだろうし。
……サイズ調整する手段があったんだっけ。
カッターとデザインナイフなら取られるとは思わないけど、使わないで魔法で戦う方がいいか。
そんなステータスに擬装しておこう。
フーマ
スクナ 男 LV1 DLV1
ダンジョンマスター
STR 10
INT 26
AGI 20
DEX 20
VIT 10
MIN 20
HP 30/30
MP 46/46
CP 30/30
スキル
ダンジョンマスター語LV1、標準小人語LV1、農業LV1
アイテムボックス、鑑定LV1、前世の記憶、地図
水魔法LV1、回復魔法LV1
暗視LV1、解錠LV1、罠発見LV1、罠解除LV1
どうかな。……ちょっと弱すぎるか?
でも目立ちたくないしいいやね。小人は弱いのが普通なんだしさ。
忘れものはないよな?
それじゃ行きますか。
ポータル魔法陣に俺が乗ると一瞬強く輝いた気がして、次には別の場所にいた。
目の前には銀髪で赤い瞳の美形がいる。
これがアキラかな。すぐさま鑑定する。
『アキラ
ヴァンパイアエンプレス
ダンジョンマスター 』
アキラで合ってた。
俺の鑑定スキルのレベルだと、相手のステータスは見れないのか。擬装する必要もなかったようだ。
で、なに驚いているのさ。
「えっ? 誰もいない? 今光ったのに」
「ここにいるぞ」
「あ……小人?」
「いかにも。俺がフーマだ」
あからさまにがっかりした表情。
まさか小人がくるとは思ってなかったんだろう。
「スクナって小人だったのか?」
「そうだ。ちゃんと弱い種族って書き込んだだろ?」
「そうだけど……オレがアキラ。よろしく」
「近づくな!」
握手でもしようというのか、近寄ってきたアキラに警告する。
「え?」
「俺に近づくと危険だ。お前は聖剣を奪われ、DPがなくて初期装備。そうだな?」
「そう。強い種族になってたから武器なしで戦えているけど、そのせいでレベルアップもしてない。それがなにか?」
まだわからないのか、こいつは。
そんな無用心だからPKされるんだよ。
「見ての通り、俺は小さい。だからそばにこられると見えてしまう」
「なにが?」
「大事なところだ」
「だいじな? ……!」
やっと意味が通じたようで、真っ赤になって貫頭衣の裾をおさえるアキラ。すすっと俺から離れていく。
最初に警告しておけば見えたとしてもむこうの不注意。俺は責められないよね?
「女の子なのに無用心すぎるぞ。もしかして前世は男だったのか?」
それならそれで構わない。
たとえ美少女でも中身が男なら俺も気が楽だ。
前世からの魔法使いの俺が美少女なんかに会ったら、緊張で会話もまともにできなくなるんじゃと心配した。
ヴァンパイアなんて美形に決まってるしさ。
でも実際に会ってみたら、俺から見て相手は巨人。
人外にしか見えないんで、あんまり緊張しないですんでいる。
よかったよかった。
「え、ええええ……えっち! ……じゃ、じゃなくて、オレは男だ!」
「いや、そんな嘘は鑑定しないでもわかるって。お前の種族はヴァンパイアエンプレスじゃないか」
「そうだ。吸血鬼のレア上位種族!」
フレンド登録の申請でも性別を『?』にしていたけど、もしかしてこいつ、種族名の意味わかってないのか?
「あのな、エンプレスって女帝ってことだぞ」
「じょてい?」
「だから必然的に女なの。種族が雪女なのに男だって言ってるようなもんだぞ」
「そ、そうなのか?」
あ、俺がエディットしてた時にこの種族が出なかったのは、先に性別を決めていたからなのか。
女性になるつもりはなかったから別にいいけどさ。
「まったく。よくそんなのでPKに性的な意味で襲われなかったな」
「あいつもオレを男だと思ってた」
アキラはどう見ても15、6歳の美少女。女性なのがまるわかりなのに、なんで騙されるかな。
もしかしてダンジョンマスターには“男の娘”が多い?
それでPKはアキラも男と思った、かな。
「自分のハーレムに美少年は不要だって、オレを殺した時に言ってたよ。もし女だってばれてたらどうなったか」
「ハーレム、ね。そりゃ異世界転生したら男なら夢見るかもしれないだろうけどさ」
「あんたは違うのか?」
「興味がないわけではないが、女性がたくさんいたら緊張するだろ」
1人でさえ緊張するけど、やつらは群れると別のものになる。違った方向で危険だ。
俺だってハーレムは大好きだよ。
ただし2次元に限る。
「そんなもん?」
「うん。アキラにエッチなことをするつもりもない」
だからこそ普通に会話できるんだけどな。
「どーせオレは可愛くねーよ。胸もねーし」
「いや、前世はどうだか知らないが、今のアキラは美少女だと思うぞ。胸だって小さくはない」
「そ、そうか?」
小人から見たら巨乳なんじゃないでしょうかね。
自己紹介が済んだところで“未熟者のダンジョン”の説明を受ける。
1層はそう広くないらしい。部屋数も多くない。
いるのは雑魚モンスターの代表、ゴブリン。
ごくたまに宝箱も出るが、たいてい空で中身が入っていてもゴミのような物ばかりらしい。
「銅貨1枚とか入っていても嬉しくない」
「俺たち、使い道ないもんなあ」
「ダンジョンマスターの館での買い取りや、オークションサイトもあるが、銅貨1枚では1DPにもならない」
オークションサイトか。まだチェックしてないけど、どんなアイテムが売ってるんだろう。
需要が見込まれない小人用のアイテムが安く売ってるといいのだが。
「ボス部屋は1層の一番奥で、ボスを倒さないと先に進めない。ボスはキャプテンゴブリン」
「ゴブリンキャプテンじゃないのか。なんかヒーローっぽいな」
「それにキャプテンが従えている10匹の手下ゴブリン」
全部で11か。1人で11匹を相手にするのはたしかにきつい。救援要請するわけだ。
2人でもきついけど。
「ボス以外は普通のゴブリンなのか?」
「ああ。だが、キャプテンの指示に従って連携してくるのでやっかいだ」
「先にボスを倒さなきゃ駄目なパターンか」
「聖剣ならキャプテンゴブリンでも楽勝。そう思ってボスと戦っていたら、いきなり後ろから斬られた」
ボス戦まで隙ができるのを待ってたか、それともそれまでの戦いで聖剣の強さを実感して羨ましくなってつい魔が差したか。
どちらにせよ危険なやつだな。会いたくない。
アキラが前衛で俺が魔法でサポート。とりあえずそう決め、邪神ダンジョン攻略を開始した。
邪神のダンジョン1層は洞窟のような感じで、岩壁になっている。
「ホントに魔法、ショボイのな」
「うっせ」
1つ目の部屋で出てきたゴブリンは1匹だった。
アキラよりは小さいが俺から見たら巨大モンスター。
巨人と戦うアニメの主題歌が脳内に流れる中、戦闘開始だ。
「アイスニードル!」
俺が魔法で顔を攻撃すると、それが嫌だったのか両手で顔を覆ってしまったので、そこをアキラが撲殺した。
吸血鬼って爪とかないんですか?
「爪もあるけど、こっちのほーが早え」
吸いついていたゴブリンの首筋からぷはっと口を離すアキラ。ゴブリンを倒してすぐに吸血を始めたのだ。よほど空腹だったらしい。
「DPがありゃ、こんなもん吸わずにすむのに」
「いや、もしボスを倒せてDPが入ってもしばらくは吸血に頼って、食費を浮かすべきだ。まずは装備を整えた方がよくないか? もしくはダンジョン強化。DPを稼げる状況を作らないとジリ貧だろう。もちろんそれは俺にも言えることだが」
「……んなこた言われねーでもわかってんだよ!」
それもそうか。
余計なことを言ってしまったようだ。
宿題やりなさい。今やろうと思ってたのに。のコンボを思い出す。
無言で通路を進む俺たち。
血抜きされたゴブリンの死体は俺がもらった。
もらっていいかと聞いたら返事がなかったので、勝手にもらっただけだが。
あれから喋ってくれない。どうやら怒らせてしまったようだ。
「なあ……」
「悪かった。個人の資産計画があるにも関わらず口を出してしまった。すまない」
「いや、あんたの言うことももっともなんだ。オレはDPが稼げるようになりたい。そのためなら、しばらく臭い血でも我慢する。それはわかってる。わかってるけど、どうすりゃ稼げるかがわからない」
怒ってたんじゃなくて考えてたのか。
だけど、考えがまとまらないみたいだ。聖剣が強かった分、他の方法でなんて思いもよらないのだろうか?
「自分のダンジョンはどうしてる?」
「敵もこねーし、ほったらかし。眷属にまかせっぱなしだぜ」
眷属か。いいなあ。
俺なんてその眷属すらいないっつの。
「眷属の種類は?」
「このダンジョンの1層で出てくるゴブリンだ。瀕死になったやつを契約して眷属にした」
「現地調達できるのか。……ゴブリンがもっと小さけりゃ俺も眷属にできるのに」
ゴブリンの大きさは1メートル30センチぐらいだった。あれではうちの狭いダンジョンでは使えない。
契約できてもここから戻る時はお別れの使い捨てになってしまう。
「……待てよ。アキラ、あと何匹まで眷属にできる?」
「ああ? ゴブリンはもういらねーよ。頭わりーし、くせーし」
「いや、そうじゃない。今回契約したのをそのままボス戦に投入する」
自分のダンジョンから眷属を連れてくることはできなくても、現地調達した眷属なら戦闘に参加させられるはずだ。
あと臭いのは風呂に入れてないからじゃないか?
「だから契約すん時に逃げられないように瀕死にする必要があるんだって。契約できたらさ、そいつが死なないように自分のダンジョンに連れ帰って、ダンジョンの機能で治してんだ。瀕死のままボスと戦わせたって役に立たないだろ」
「俺は回復魔法も使える。それでゴブリンを治してからボス戦をすればいい。ボスを倒して、その後飼いきれないようなら契約解除すればいい」
短期採用はちょっと道徳的にどうかと思うけどさ。
歩みを止めてしばし考えるアキラ。
そういや邪神のダンジョンは明るいな。通路も部屋も天井や壁が光ってるみたいだ。
「それでやってみるか。眷属数は……ダンジョンレベル×10までできたはずだから、あと14匹か。ボスに行くまでそんなには出ねーぞ。MPは足りるのか?」
「任せろ。たぶん大丈夫だ」
たとえ14匹でもゴブリンを瀕死からフル回復させるぐらい余裕ですがなにか。
アキラには教えないけどね。




