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第52話 ディルビリアの宴

※不快なキャラの三人称視点です。苦手な方はご注意ください※

 ダイトラス城内にある、比較的小さな執務室にて。

 女宰相ディルビリア・ビスチェルは豪奢なドレスに身を包み、部屋の中央に椅子を置いて座っていた。それを輪になって取り囲むようにして正座しているのは、城内で政務に携わる者たちである。

 中には宰相並みの要職に就く者もいるが、漏れなく全員、その地位にあるまじき気の抜けた表情で、彼女を見つめていた。


 ディルビリア以外、集まっている者は皆、奇しくも男性であった。


「さ、皆に行き渡ったかしら? グラスを掲げて」


 一身に視線を集め、それに応えるように妖艶な笑みを浮かべるディルビリア。彼女が片手でワイングラスを意気揚々と掲げると、それに合わせて男性陣も手元の飲み物をそれぞれ上げた。


「では――乾杯」


 吐息のように紡がれた言葉に、男たちは皆恍惚とした様子だ。一口でグラスを空にした彼女の酒気を帯びた息が、彼らの興奮を掻き立てるように空気中を漂った。


 男性陣全員、どことなく惚けた顔をしている。

 皆なぜか目元が垂れ下がり、思考力を失くしたかのようだ。しかし口角は吊り上がり、全員歯を剥き出しにして笑顔のようなものを浮かべている。彼らは皆、上と下で矛盾するような歪な表情で、ディルビリアの一挙手一投足に、一喜一憂しているのだ。その様は、理性のない発情期の獣を彷彿とさせた。


「皆、本当に今日までよく働いてくれました。先ほど、エデンダルト王子がマギカ国周辺で死亡したとの情報がもたらされました。ようやくワタクシにとっての一番の邪魔者が、いなくなったというわけです」


 宰相としてのあるまじき発言にも関わらず、彼女を囲む男たちはグラスを鳴らすように拍手した。中の液体が飛び散り、床を汚す。


「これも皆の働きのおかげと考えます。そこで今宵は各々に、ワタクシから褒美を与えます」


 言うとディルビリアは、ドレスのスカートをたくし上げ、自らの足を彼らの眼前に差し出すようにして伸ばした。おぉ、と誰かが感嘆の声を漏らす。


「さ、お舐めなさい」


 その言葉を合図に、我先にと群がる男たち。比喩的ではなく、今度は正真正銘の獣のようにディルビリアの脚へとむしゃぶりつく。目を血走らせ、醜く舌を伸ばし、縋りつくように彼女の足元へ跪く。


「あん……いい、いいですわ。もっと激しく! ……フフフフ。本当に男という生き物は救いようがない獣ですわね。少しは知能というものを持てないのかしら? どんなに外では取り繕って生きていても、こうして魅力的な女が目の前で肌を晒せば、全ての理性が消し飛んでこのザマ。フフ、フフフ。まったくもって救いようのない存在ね、この愚図共ッ!」


 嗜虐的な興奮が湧き上がってきたのか、ドレスを脱ぎ捨て、男たちを足蹴にするディルビリア。そんな目に遭わされても、男たちは再びその脚へと擦り寄っていく。

 彼女は全裸となり、そのまま椅子から立ち上がると、両腕を伸ばして全身を舐め回すよう催促した。


「さぁ、お前たち。今夜は身の丈以上の快楽をくれてあげましょう。その渇きのままに、ワタクシの全身を味わいなさい」


 裸のまま十字架のような姿勢となったディルビリアへと、男たちは一心不乱に絡みついていく。常人では到底理解することはできない、狂乱の宴のはじまりだった。


「フフフ、もっと全てを脱ぎ捨て、欲望に溺れてしまうがいい! その身の内に感じる乾きのまま、蛆虫のようにワタクシに群がればいいッ! あなた方はバカで無能で役立たずの、劣等なオスなのですからッ!!」

「は、ハいぃ……」


 男たちの眼の焦点は合っておらず、全員の口の端から涎がこぼれていた。皆、もはや理性は毛ほども感じられない。


「さぁ、全員でこちらに来なさい。その今にも弾けてしまいそうな欲求を、本能のままに開放するのです!」


 四つん這いにして平伏させたまま、男たちを先導しながらベッドへと寝転ぶディルビリア。挑発的に四肢をくねらせ、男たちの興奮をさらに煽る。

 完全に理性を失い、涙や涎を垂れ流したままの男たちが、ディルビリアの凹凸が激しい身体へと群がる。ディルビリアの顔が愉悦に染まった。


「フフ、フハハ! あぁ、皆の()()()()を全身から感じます。ワタクシがかけた()()をたくさん浴びて、よく育っていますね」

「「あり、ありガとウ……ごご、ゴザ、ゴザイマすぅ……」」


 恍惚としたディルビリアの表情とは違い、男たちの顔色はどんどん悪くなっていく。目は血走り、呼吸は荒く、肌はどす黒く――その異様な姿は、すでに人のものではないように思えた。


「あぁ、愛おしい……本能と混沌の世界。もう少し、もう少しで、大量の邪気があなた様へと流れ込むことでしょう。完全なる復活まで、しばし。もうしばし、お待ちくださいませ……! 我が最愛なる、愛しの魔王様ぁ……あぁぁ!!」


 ディルビリアの淫靡な宴は、夜が明けるまで続いた。



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