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第48話 アマル・ア・マギカ到着目前

 ギレレーシュ大瀑布にて思わぬ足止めを喰らってしまった俺たち特使団は、予定より少しだけ遅れて、アマル・ア・マギカに到着しつつあった。マギカ国の入国門ゲートが、すでに馬車の小窓から少し遠くに見えている。


 予定外の同行者、【大賢者】ヴィヴィアンヌ・ライヴィエッタさんの話によれば、あの門自体に魔元素の循環装置が組み込まれており、魔力を生成しながら、簡素な入国者のチェックを半ば自動で行ってくれるらしい。その魔力による人物チェックの装置は、ヴィヴィアンヌさん自身のギフト《魔導目視マギカアイズ》を基に設計しているらしい。


 いやはや、さすがは魔法先進国アマル・ア・マギカ。恐れ入る技術力である。


「ふむ。もう少しで到着じゃのう。ふわーぁ……それにしても、自分で基礎設計をしておいてなんじゃが、この魔法馬車は本当に良いものじゃな。馬の引くのと違って揺れも少なく尻も痛くならん。ふわぁ、移動中だと言うのに眠くなるわい」


 俺、ヒロカちゃん、王子と共に魔法馬車に乗り込み、ソファで横になって欠伸を噛み殺すヴィヴィアンヌさん。自ら設計したと言う魔法馬車を自画自賛する。


「こら、ヴィヴィアンヌさん――いえ、ヴィヴィ。はしたないですよ。先生の手前、ちゃんとしないとダメじゃないですか」

「なんじゃ小娘、その馴れ馴れしいというか、わらわを子供扱いしたようなふざけた態度は。もっと敬えぃ!」


 俺の隣に座るヒロカちゃんは、曲がりなりにも大賢者であるヴィヴィアンヌさんに対し、()()()()()()()絡んでいく。対するヴィヴィアンヌさんは、プリプリ怒りの表情。


「だってヴィヴィがユーキ先生の生徒になったら、私は一番最初の教え子なんだから、ヴィヴィの先輩ってことになります。師弟関係で言えば私が一番弟子で、ヴィヴィが二番弟子。私は『姉弟子』の立場になります。ということは、私も微力ながらヴィヴィに色々と教えてあげることになるかもしれない。だから先生や私に対しては、ちゃんと礼儀、礼節、節度を持った態度で接するように!」

「な、なんで大賢者であるわらわが、こんな小娘に……」

「こら、先輩に対して小娘なんて言語道断です。ちゃんと『ヒロカさん』か『姉弟子』とお呼びなさい!」


 取り付く島なく言い切るヒロカちゃん。うぉぉ、ヒロカちゃんってば意外と力関係はっきりさせるタイプなのかも。


「ふむ。立派な態度であるな、ヒロカ殿。立場や権威にとらわれず、先達者に対しては全て等しく尊敬を持って接するべきという……理想の態度と言えるだろう」

「ありがとうございます、エデンダルト王子!」


 シンパシーを感じ合っている様子のヒロカちゃんと王子。いや、エデンダルトさん。あなたは誰よりも立場や権威を意識した振る舞いをしてるししなくちゃならないと思うんだが。だから幼女魔女っ娘大賢者さんに舐めた態度取られたんじゃない? まぁ言わないけども。


「ふん、まあヒロカとやらもわらわにとって興味の対象ではあるからのう。イラつかぬ程度に相手してやるわ」

「まったくもう、ワガママな後輩を持つと大変。ねー、先生」

「お、おう」


 言ってることの割りに、口角が上がっているヒロカちゃん。

 あ、そっか。後輩ができたのが単純に嬉しいんだろうな。


「さて、それじゃ到着したら起こしてくれ。わらわは少し寝る」

「あ、ちょ、ヴィヴィ! せっかくなんだからお喋りしましょー! 私のギフトのこととか、色々説明するから!」

「……おん? ふん、まぁそれなら多少の暇つぶしにはなるかのう」


 ヒロカちゃんの提案に対して、ヴィヴィアンヌさんは横にした身体を起こした。彼女は本当、好奇心旺盛なんだな。


「私のギフトは『空気を読む』って言って、その場の色んな情報から人の気分とかをなんとなく察するっていう能力です。あ、今、ギフトをオンにするから見てて」

「むむ、そういった類のギフトは、本来ならば常駐型であるはずじゃが? どうやってオン/オフの切り替えを習得した?」

「それは勇者のレイアリナさんにコツを教えてもらったんです。えーっと、体内に出来上がる魔力を――」


 ヒロカちゃんとヴィヴィアンヌさんが仲良くしているのを見て、なんだかすごく穏やかな気持ちになった。

 そこで俺は、馬車の心地よい揺れについウトウトとしてきていた。正面に座っている王子も同じく、小窓の縁に肘をついて瞼が重そうにしている。


 馬車は門への山道を、すいすい苦もなく進んでいく。入口までもう一時間もないだろうが、少し甘えて眠らせてもらうか。


「――む。なにかおかしいぞ」

「うんっ、私も感じた」

「ヒロカもか。……ッ?! 馬車から出ろ、今すぐにだッ!!」

「え、ふへ?」


 ちょうど二人の声が意識の中で遠くなってきたタイミングで、ヴィヴィアンヌさんが叫んだ。

 な、なにごと?


 うたた寝寸前で、俺と王子はヒロカちゃんとヴィヴィアンヌさんに引っ張り出されるようにして外に出た。


「賢者殿!? これはいったい!?」

「いいから言う通りに――」


 と。


 ドッゴオオォォォォォォン!!


「ッ!?」


 ――魔法馬車が、大爆発した。



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