伝えたいこと、ですか?
「久しぶりだね、リュネシュカ嬢」
「はい、お久しぶりです、アイラード様」
あれから、2ヶ月の月日が経ちまして、遂に、秋の夜会の時期がやって参りました。
その当日の昼頃、アステリノ男爵家の玄関に、それはそれは美しい海の妖精が現れました。
私の両親も、サーラシュカも、カトロン様も、興味津々の眼差しで、こちらを見ています。
「やはり、ラベンダーが、貴女にとても似合う。
本当に、妖精が現れたかと思ったよ。」
「あ、ありがとうございます…!」
アイラード様は、その美しい手をラベンダーの髪飾りに添えられて、誉めて下さいました。
家族の前で、かなり恥ずかしいですよ…!
どうしましょうかしら?
ほら、ご覧下さいませ!サーラシュカの目が、キラキラと光って、輝いておりますよ?
あの子は、後で、私を揶揄うつもりね?
「アイラード様も、その大海原のような色彩の、そのネクタイが大変似合っておりますよ。」
「ふふ、ありがとう。貴女が、私は海の妖精だと言ってくれたから、青いものを選んでみたよ。」
「まあ! そうなのですか!?」
「ああ、これは、息子とお揃いのものなんだ。」
「ふふふ、アストゥロ様と仲良しですね。」
「うん、仲良しだよ、ありがとう。」
アイラード様とアストゥロ様が、お揃いの青いネクタイをしている姿を想像してみました。
アストゥロ様は、アイラード様に瓜二つな程にそっくりで、お父様の真似できて、嬉しそうにニコニコと微笑む姿が想像出来ますよ。
とても可愛いらしくて、仲良しな父子ですね。想像するだけで、癒されます。
「会場に行く前に
貴女に伝えたいことがあるんだ。」
「………伝えたいこと、ですか?」
あら?何かしらの連絡が欠けていたのかしら?
アイラード様は、かなり真面目な方ですから、それが気になるのでしょうか。
真剣な何か考えがありそうなアイラード様は、ゆっくりと、こちら、目の前に来られまして、私の手を取りました。
こ、この手は、なんでしょうか!?
エスコートにしては違う気がしますが…
アイラード様流のエスコートの仕方ですか?
「何か、ありましたか………?」
「リュネシュカ嬢、まだ知り合って間もないのに何を言い始めるのかと驚くかもしれないが…」
「ア、アイラード様………??」
「私の妻になってはくれないか?」
「………えっ!?」
私の妻………
アイラード様の妻に…!?
これは、いったい、何事でしょうか!?
戸惑いすぎて、周りを見渡してみたら、両親やカトロン様は、ぽかんとしていまして…
サーラシュカは、目をキラッキラッとさせて、こちらを興味津々に見ています。
予想外のプロポーズに、私も、固まってしまいました。人って、驚きすぎると、思考が、よく分からなくなるのですね………!




