一方、その頃…
アイラード&アストゥロ視点
一方、その頃…
ヴィンゼン伯爵邸にて
「後妻を迎え入れるつもりですか?」
「おや? いきなり、どうしたのかな?」
アレイシオ辺境伯領のヴィンゼン伯爵邸では、ふたりの美しい海の妖精のような父子が真剣な表情で語らっておりました。
ヴィンゼン伯爵閣下アイラードと、その嫡男にあたるアストゥロの父子である。
一人息子であるアストゥロは、父のあのような姿は、初めて見た。実母への情も、女性達への恋慕もない、淡々とした異性関係の父が、あのような表情をするなんて、と。
「リュネシュカさんのことですよ。」
「どうして、そこで、リュネシュカ嬢の名が?」
「僕は、のらりくらりしないで頂きたいですが…
息子からしましたら、あのリュネシュカさんのような継母なら、構いませんよ?」
「アストゥロ、君は、賢いね。強かさは、父にも生母にも、祖父にも似たのかな。」
「そうなのですか?それは光栄ですね。」
8歳児にしては、大人びた思想をした子どもに育ってしまったけれど…
女性に警戒心が強い息子が、リュネシュカ嬢に対しては、構わないと。
「本当に、良いのかい?」
「ええ、構わないですよ。リュネシュカさんを、義母上と呼べたら、嬉しく思っています。」
「そうか、ありがとう。次に会える機会に、妻になってくれないか、聞いてみるよ。」
「はい!ぜひ!
良い結果をお待ちしています!」
ぱあああっと可愛いらしく、嬉しそうな表情をした息子に苦笑しながら、ラベンダーの妖精のような彼女を想った。
一目惚れであったが、話してみて、さらに気になってしまった。
幸いにして、人を見る目を養ってきた伯爵に、彼女は、良い継母になる上に、良い妻ともなる予感がしていたのだ。
かなり不思議なものだが…
これは、アイラードの実父も、兄である辺境伯閣下もそのような感じであった。
「前妻とは、うまくいかなかったけれど…
今度は、仲良い夫婦になれたら嬉しいかな。」
「僕は、父上を応援していますからね!!」
「ああ、ありがとう、アストゥロ」




