お約束しているのよ
「そういえば、サーラシュカ」
「なあに、お姉様? 何か、あるの?」
きょとんとした妹の表情は可愛いらしい。
ちなみに、テンション高い妹を微笑ましそうに穏やかにカトロン様は眺めている。
うん、思った以上に、仲睦まじいようで良い。
姉として、年下の幼馴染男子と妹が恋仲として仲睦まじい姿は、嬉しく思いますね。
「お父様と一緒に、ダイヤー商会と取り引きしてみない?あちらと、お約束しているのよ。」
「まああ!?良いの!?ありがとうございます!
ぜひ、お願いしても宜しいかしら!?」
「ええ、サーラシュカ、宜しく頼みますよ。」
「はい、お任せくださいませ、お姉様!」
サーラシュカは、15歳にして、お父様と共に取り引き先に向かうことがあるそう。
私は、長女だけれど、商人に向かなかったが、人脈を増やす手伝いくらいはしたいのだ。
いずれは、アステリノ商会とダイヤー商会が、手を組んで、良縁の取り引き相手になれば良いと、そう思っているわ。
「リュネシュカ義姉上」
「はい、何でしょうか、カトロン様?」
「明日の午後から、クリス様が来る予定なんだ。
婚約者のクイック子爵令嬢様を連れて。」
「まあ! そうなの!?」
母方の従兄、23歳の青年、ステファーニ次期男爵のクリス兄様は、クイック子爵令嬢であるケイト様と婚約を結んでいる。
クイック子爵令嬢のケイト様から気に入られ、正式に婚約者となられた形なのですが、私は、そのケイト様から、会う度に、睨まれることが多くて、困っているのですよ。
クリス兄様は、実従兄妹として、私達を可愛いがって下さいます。シスコン並みに。
そのシスコン気味なクリス兄様に、私を睨んでいることがバレたら、大変ですからね、やめて頂きたいですね。
いろんな意味で、疲れてしまいますから。
「義姉上は会いますか?」
「うーん……… どうしましょう?
今回、会うのは、遠慮しておくわ。」
「………そうですよね。かしこまりました。
なぜ、睨まれているのでしょうか?」
「あー、ケイト様、やきもち焼きさんなのよ!
わたくしに対しても酷いのよ?わたくしには、婚約者のカトロン様がいるのに!」
「あー、なるほど………
なら、秋の夜会で、伯爵様とご一緒の義姉上にばったりと会った時には、クイック子爵令嬢は驚くかもしれないな。」
「確かに!クリスお兄様も、驚くと思うわ!」
「ふふ、そうね、秋の夜会で、ばったり会えたら話してみようかと思うわ。」
「ええ! その方が、きっと、良いわ!」
「ええ、ありがとう、サーラシュカ」
「うふふ、どういたしまして!」




