自分に自信を持ちなさい
アイラード様のお姿を思い浮かべる。
彼の、あの優しくて、独特な雰囲気は、とても心地良くて、落ち着くものでございました。
彼は、辺境伯様を支える伯爵様として、一児の父親として、頑張っておられます。
20歳の、仕事に慣れていない見習いの私は、彼から見て、まだまだ、子どもでしょう?
そう考えて、想いを閉じ込めるしか、出来ないと、私は、思うのですが…
「次期伯爵様は、どんなお方なの?」
「アストゥロ様は、いま、8歳児で、父親に似て優しい少年という印象が強いですね。」
「まあ!そうなのね!」
アストゥロ様は、アイラード様に似て賢くて、真面目な少年です。
きっと、尊敬するお父上の真似をされて努力を重ねているのでしょう。
「もしも、アイラード様に嫁入りをしたら、継子と継母で、義姉弟のような関係になると思うのだけど、相性は良さそうなのね?」
「………確かに、そうかもしれませんね?」
このように、お母様は、娘が、アイラード様と結ばれる未来を思い描いているらしい。
まだ、お母様は、アイラード様に会ったことがないはずなのに。
そこまで、リュネシュカを信頼してくれているのかもしれないが、良いのだろうか?
「リュネシュカ」
「はい、お父様?」
「リュネシュカは、人を見る目がある優しい子に育ったと思っている。」
「お父様……」
「自分に自信を持ちなさい。
焦らなくて良い。」
「はい!
ありがとうございます…!」
どうやら、リュネシュカは、お父様にも信頼をされているらしい。
人を見る目があるのは、商家の娘らしい特技といったところでしょうか。
これから先、どうなるか分かりませんけれど、まずは、夜会についての相談ですね。
「メアリー様のご紹介で、ご親族の方が経営するダイヤー商会に行きましたの。」
「ああ、辺境伯家御用達の老舗かな?」
「はい、そのダイヤー商会で、こちらのドレスを購入したのですが、これに似合うアクセサリーって、ありますか?」
「リュネシュカ、もしかして、こちらを、夜会に着て行く気かい?新しいのを買っても…」
「アイラード様が似合うから、こちらのドレスを着て来るように、と。ラベンダーの妖精みたいだと、おっしゃっておりました。」
「まああ! まあああ!
リュネちゃんが、ラベンダーの妖精さん!?
なんて、素敵なお方なのかしら!?」
「なるほど、分かった。思った以上に、伯爵様はメルヘンなお方のようだ。似合うアクセサリーなら、たくさんあるから、用意しよう。」
「うふふ、ぴったりなのを持って来ますわね!」
「ああ、ハンナ、頼めるかい?」
「もちろんよー!」




