只今、帰りました
「リュネシュカ様
おかえりなさいませ。」
「クルローおじい様、只今、帰りました。」
リュネシュカは、久しぶりの実家に来ました。
実家は、1階と2階部分がアステリノ商会に、3階から5階が住居エリアになっています。
ビシッとした執事風のお爺様である彼は、この1階の受付担当しているクルローおじい様。
テーレン子爵の異母弟だという彼は、若い頃に自立したいと願って、この商会に来ました。
今でも、生涯現役人生を目標に、勤勉に働いている75歳。尊敬の気持ちを込めて、みんな、彼を、おじい様とお呼びしております。
「お父様、お母様は、いらっしゃるかしら?
お忙しいなら、後でも構わないのだけれど。」
「はい、いらっしゃいますよ。ちょうど休憩していますから、ご案内できますよ。」
「そうなの?そちらに、ご案内して下さる?」
「はい、承知いたしました、お嬢様。」
「リュネちゃーん
おかえりなさーい!!」
「リュネシュカ、おかえり」
「お父様、お母様、只今、帰りました。」
冷静沈着な商人気質の薄紫髪に青目のお父様のリュージンと、いつもテンション高すぎる天然系な薄茶髪に青目の主婦のハンナお母様。
まったく、似ていないはずの夫婦なのですが、とても仲睦まじい両親です。
「うふふ、久しぶりに、帰って来たわね〜!
今夜は、我が家に泊まるのかしら〜?」
「はい、そのつもりですよ。明日からは、また、侍女見習いの寮に戻りますが。」
「あらあら、そうなのね!リュネちゃんの久々の帰宅、嬉しいわ〜、ありがとうね〜!」
「こちらこそ、ありがとうございます。」
「あら? サーラシュカとカトロン様は?」
「サーラちゃん達は、デート中なのよ〜!
まあ、あの子達の事だから、デートという名の他店舗への視察なのでしょうけれど〜!」
「そうなのですね。
相変わらず、仲良しで、なによりです。」
「うふふ。そうね、本当に、仲良しよね〜!」
サーラシュカは、15歳ながら商人見習いだ。
まだ、学生のはずなのだけど、視察と称して、婚約者のカトロン様とデートしている。
政略的な婚約でも、仲良しなら良いのではないだろうかと、周りは見ているらしい。
普通に、サーラシュカが20歳になる前に結婚しそうなくらい、仲が良いわよね。
「リュネシュカ」
「はい、お父様、何でしょうか?」
「珍しく、帰宅して、我々に会いに来るんだから何か用事があるんじゃないか?」
「そうよね〜、いきなり帰ってくるのは、本当に珍しいじゃない〜?リュネちゃん?」
「折り入って、ご相談がありまして………」
「ご相談!?えっ!?何があったの〜?」
「ふむ、相談?何かな?」




