跡取りなのかしら?
「リュネシュカさんが
男爵家の跡取りなのかしら?」
「いえいえ、私は、違いますよ?」
「あら、通常は、長子が継ぐはずだけれど…」
「二人姉妹なので、姉の私が次期当主だと思って近付いてくる貴族の殿方も多いのですけれど、私は、男爵位を継ぐ予定はありません!」
「まあ! そうなの?
なら、妹さんが受け継ぐのかしら?」
「いえ、我が男爵家の跡取りは、サーラシュカに婿入りした殿方になります!」
「あら、妹さんのお婿様になるのですか?」
「はい、そうです!」
サーラシュカの婚約者が実家の跡取りです。
実家に婿入りして、跡を継いでくださるのは、お父様の親友のご子息です。
私達姉妹の幼馴染となる彼もまた、商人見習いとして、優秀な学生さんなのです。
「貴女は、それで宜しいのですか?」
「はい、実家は、商会を営んでおります。
サーラシュカとお婿さま予定の婚約者の方が、裁縫が上手く、商才があるので、サーラシュカなら、男爵夫妻としても商会長夫妻としても、うまくいくかと思っているのですよ!」
「ふふふ、本当に、仲良しなのね?
貴女が気にしないのなら、良いのよ。」
「はい! いつも、気にかけて下さって
ありがとうございます!」
実家アステリノ男爵家が経営している商会は、王都にある貴婦人向けの小さな商会です。
妹は、5歳年下の15歳と、まだ若いですが、お針子達に負けないくらい裁縫が上手です。
商人見習いとしても、大活躍しています。
本当に、自慢の妹なのです。
「ふふ、商人見習いとして、実家を手伝っている妹が生き生きとして、楽しそうなので、私は、そんな妹を、陰ながら、応援したいのです。」
「まあ! ふふふ、素敵ね?」
似ていない姉妹なのですが、それぞれの良さ、長所を、生かした方が良いと思うのです。
周りからは、商才のある妹とは比べられ続けているようですけれど…
長所、短所は、人それぞれ、姉妹であっても、似てなくて、構わないと思うのです。
「商人が、妹の天職ならば、私には遠慮せずに、そのまま続けた方が良いかと思いませんか?」
「ふふふふ、貴女は、妹さん想いなのね!
それで、寮生活なのかしら?」
「はい、独り立ちを選んでみました!
試しに、侍女を経験してみようかと思って。」
「ふふふ、貴女、偉いわね。」
サーラシュカは遠慮していて、跡取りの妻は、お姉様の方が…!とおっしゃっていますが。
侍女見習いとして、寮生活を選んで、実家から離れたら、妹も彼女の婚約者も、商会の経営のお手伝いに集中しやすいかと思いまして。
妹は、事業計画、資金、営業スキル、そして、顧客への対応などが得意なのですよ。
姉の私は、清掃のような、淡々とした集中力が必要な単純作業が得意なのです。




